背中は預けた

文字数 991文字

「この世界に来てから、私と宿敵、あんたとは協力して戦っていたはずなのに……」

「さっきは全く別々に戦っていたな」

 マルクエンも噛み締めて言った。

 そして、続ける。

「ラミッタ、私の背中はお前に預ける」

「宿敵……」

 ラミッタも真剣な顔つきになり、言い返す。

「宿敵、私の背中もあなたに預けるわ」

 二人は見つめ合っていた。

「それでね……。宿敵、もし今度、私が戦いで死にそうになっても……。いや、死んでも、構わず戦って」

「縁起でも無いことを言わないでくれ」

「約束して」

 マルクエンは考えて、答えを言う。

「約束は出来ない。私は絶対にお前を死なせやしない」

 ブワッとラミッタの顔が赤くなった。

「は、恥ずかしいこと言わないでよ!!!」

「私は、ラミッタを失うことが怖いんだ」

 更に追い打ちをかけて恥ずかしがらせるマルクエン。

「私は、元の世界でお前を討ち取った時、物凄い消失感を感じたんだ」

 マルクエンは続けて言う。

「お前とは、別の形で会っていれば良き友になれただろうと。それで、この世界に来て、その願いは叶った」

「私の中で、ラミッタはとても大事な存在になった。失うのが……。怖いんだ……」

 ラミッタはベッドのシーツを目の下まで引っ張って悶えている。

「あら、私と友達になったつもりでいたのかしら?」

 だが、口から出てくるのは強がりだ。

「ち、違うのか!?」

 今度はマルクエンが赤面する。

「さぁ、どうでしょうね?」

 ラミッタがマルクエンを(からか)っていると、部屋をノックされた。

「あっ、あぁ、どうぞ」

「失礼します」

 マスカル達が部屋に戻る。

「お話は終わったかしらー?」

 アレラは全てお見通しらしい。

「お二人にお伝えすることがあります。これからお二人は城で過ごしてもらい、ヴィシソワに挑んで頂きます」

 それを聞いて、マルクエンは拳をギュッと握った。

「えぇ、勝つまで私は諦めません」

「私も、一発やり返さないと」

「頼もしい限りです」

 先程までとは違う様子の二人を見て、マスカルは笑いながら安堵する。




「こちらがマルクエン様のお部屋、こちらがラミッタ様のお部屋です」

 部屋まではメイドが案内をしてくれた。

 マルクエンは礼を言ってチップを渡す。

「それじゃ、作戦会議でもしましょうか」

「あぁ、そうだな!」

 マルクエンの部屋で二人は話すことにした。

 城の客間なだけあり、立派な装飾が施されている。

「まず、敗因を考えてみましょうか」
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