竜の肉

文字数 906文字

「鑑定の魔法でちゃんと食用可って出たので大丈夫ですよー」

 ウェイトレスは笑顔でそう返してくる。

「食わず嫌いはダメなんじゃなかったのか? ラミッタ」

 マルクエンがいつぞやの仕返しとばかりに言うと、ラミッタはプンプン怒った。

「わかってるわよ!! 食べないとは言ってないでしょ!!」

 みんなはハハハと笑い、シヘンは大皿に乗った肉塊を切り分けてくれる。

「それじゃ、イタダキマス!」

 マルクエンは豪快に肉へとかぶりついた。熱々のそれからは肉汁が溢れ出て、旨味を感じる。

「むっ、美味いぞ!!」

 ラミッタも一口大に切った肉を食べた。

「あら、結構美味しいじゃない」

「外側はあんなにカッチカチなのに中身は柔らかいんスね。カニみたいなもんすかねー」

 マルクエン達は夢中で肉を食べる。肉体労働の後なので身に沁みて美味い。


 翌日、マルクエン達は早速サツマの工房へと足を運ぶ。

「よう!! 今、竜の素材を溶かしている所だ!!」

 大きな溶鉱炉からは熱気と赤い光が放たれている。

「昨日、試作品として急遽造ったナイフがあるんだが、持ってみるか?」

「えぇ、それでは」

 マルクエンは黄金色(こがねいろ)に光るナイフを持つ。

「あの竜のだからこの色なのは仕方ないけど、金ピカの剣なんて悪趣味ね」

「そうか? 格好良くて良いじゃないか!」

「この木でも切ってみるかい?」

 サツマは薪木(まきぎ)を一本手渡す。マルクエンは試しにと木を削ってみた。

 刃は、まるで茹でたじゃがいもを切るように、抵抗なくすんなりと通る。

「おぉ、これは凄い」

 ラミッタもナイフを手に持ち、試すと驚いていた。

「なるほど、なかなか良いじゃない。それに魔力の伝導率も高そうだわ」

「俺の人生最高傑作が出来るかもしれねぇ。ホント感謝だよ」

 そう言って感極まるサツマにマルクエンは尋ねる。

「剣はどのぐらいで完成しそうですか」 

「まぁ、急いで五日は欲しい所だな」

「あのキザ勇者を待たなきゃいけないし、気長に待ちましょうか」

「そうだな」

 ラミッタは後ろに待つシヘンとケイの方を振り返った。

「それまであなた達の訓練といきましょうか?」

 ニッコリと微笑むラミッタが逆に怖い。

「お、オッス! お願いします!」

「わ、私も頑張ります!」
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