濡れるシヘン

文字数 1,017文字

 一気に出るシャワーのお湯がシヘンを襲う。

「きゃっ!!」

「あ、あぁ!! すまないシヘンさん!!」

 慌ててマルクエンはレバーを戻す。

 シヘンは魔術師の白い服を着ていたので、濡れて透けてしまった。

「いえ、大丈夫です」

 そう言ってこちらを振り向くシヘン。次の瞬間、マルクエンは驚愕する。

 透けた服の向こう側に、シヘンの下着が見えてしまっていた。

「あっ」

 それに気付いたシヘンは顔を赤くしてしばらく硬直していたが。

「キャー!!」

 叫んで胸元を隠し、うずくまるシヘン。騒ぎを聞きつけてラミッタとケイがやって来た。

「どうしたの!?」

「大変だ!! シヘンさんが濡れてしまった!!」

「濡れてしまった!? 何やってんのよド変態卑猥野郎!!」

 浴室に飛び込むラミッタ。全身ずぶ濡れで服が透け、しゃがみ込んでいるシヘンが目に入る。

「アンタ!! 本当に何してるのよド変態卑猥野郎!!」

「す、すまない!!」

「良いから出ていけ!!」

 ラミッタはマルクエンを浴室から追い出した。

 そのままの流れでシヘンはシャワーを浴びて出てくる。

「シヘンさん! 申し訳なかった!!」

「い、いえ、大丈夫ですから……」

 何となく会話がぎこちない。最後にマルクエンが浴室へと消えていった。

 天井からお湯が降ってくるのは初めての体験だったが、中々心地よいものだった。

 石鹸を使い、体の隅々まで洗い、タオルでよく拭いてから浴室を後にする。



「初めてのシャワーはどうだったッスか?」

「えぇ、不思議な感覚でしたが、スッキリしますね」

 ケイの質問にマルクエンはそう答えた。

 その後、四人はソファーや椅子に座り、くつろぐ。ケイとラミッタは酒を飲んでいた。

 魔石を照明に使っているので、夜なのに部屋の中は昼のような明るさだ。

「この家、必要最低限の家具は確かにあるけど、もっとお皿とかコップが欲しいわね」

「そうですねー」

 ラミッタの言葉にシヘンも相槌を打つ。

「明日、あのふざけた箱を調べて、その後に買い物でもしようかしら」

 この家は、元々冒険者ギルドで使われていた物らしく、家自体は立派だが、街外れに建っていた。

 だが、魔人の残した箱に近いので、いつでも異変があれば駆けつけられる。

「そうだな、私はそろそろ休もうと思う」

「おやすみなさい、マルクエンさん」

「おやすみッスー!」

「おこちゃまは夜更かししないで寝てなさい」

 それぞれの返事を受けると、マルクエンは「おやすみなさい」と返して二階へ上がっていった。
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