水の神様

文字数 842文字

「宿敵!! 何かわかったかしら!?」

 外で叫ぶラミッタの元に駆け寄り、男が口にしていたことを話す。

「神の怒りだとか、川の上流に神の祠があるだとか言っていたが……」

「何がどうなっているのか分からないけど、もっと情報が欲しいわ、他の家にも行ってみるわよ」

 次は茶屋に入り込む、床に倒れ込む女性が居た。

「しっかりして下さい!!」

 シヘンが手を握り、魔法を使う。

「あ、あぅ……」

 ギリギリの所で命はあるが、受け答えが出来る状態じゃない。

 他の家も同じ様な有様だった。外に出たマルクエン達を待っていたのは泣いていた小さな町娘だ。

「みんな、水の神様が怒ったんだって、だから、だから!!」

「水の……神様?」

「マルクエンさん。この世界では、神は人々の身近に存在しています」

 一神教のマルクエンには理解しがたかったが、シヘンの言葉を聞いて、無理にでも納得した。

「それで、どうすればいいのかしら? 水の神様はどこ?」

 町娘は遠くを指さして言う。

「川のずっと上の(ほこら)にいるんだって」

「わかったわ」

 そう言って走り出すラミッタをマルクエン達は追いかける。

「ま、待てラミッタ!! わかったって言ったって、どうするんだ!?」

「神様に助けて貰うようにでも言うわ。神頼みね」

 一足先に川に出るラミッタ。続いてマルクエンも着く。

「見て、宿敵。魚が浮いているわ」

 岩の近く、流れの緩やかな場所で魚が浮かんで死んでいる。

「まさか……。毒、か?」

「そう考えるのが妥当でしょうね」

 遅れてたどり着いたシヘンとケイも二人が眺める先を見つめた。

「上流で何かあったみたいね。それで、川の水を飲んだ住民に異変が起きた。って所かしら?」

「なるほどッス」

 息を切らしながら言うケイ。シヘンも杖を強く握って話をする。

「それじゃ、その上流に行けば何かわかるって事ですね!」

「えぇ、それしか無いわね」

 今度は足並みを揃えて駆け出す四人。しばらくすると、何やら大きな洞窟が見えてきた。

「アレかしらね」

 入り口まで近付くと、ラミッタは異変を感じ取る。
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