お肉にくにく

文字数 1,148文字

 すっとナイフが通る肉を皆で味わう。脂と赤みのバランスが良く。食べるほどにお腹が空いてきそうだ。

「美味しい、流石はのどかな良い村で育った牛だ」

「うーん、やっぱトーラ牛は最高っスね!!!」

「うん、懐かしい気がするよ。でも私、食べ切れるかな?」

 目の前にはかなり分厚く大きいステーキがある。シヘンは若干不安だった。

「うー、お腹いっぱいッスー」

「うん……。私もいっぱいになっちゃったかも」

 ラミッタはぺろりと、ケイは何とか完食したが、シヘンは少しばかり肉を残してしまう。

「作ってくれた人と牛に申し訳ないなー……」

 悲しそうな表情をするシヘンを見てマルクエンが言った。

「シヘンさん。私はまだ食べられるので、頂いても良いですか?」

 マルクエンが言うと、シヘンは手を前に出して顔を横に振る。

「い、いえいえ!! わ、私の食べ残しなんて汚いですよ!!」

「汚くなどありませんよ。私の食い意地が張っているだけですので」

「そうよ、残飯処理させちゃいなさい」

 結局シヘンの残した肉はマルクエンが食べてしまった。

 しばらくすると、デザートに黒蜜ソースを掛けたバニラアイスがコースの最後を飾る。

「シヘン。これなら食べられるでしょ?」

 ラミッタに言われ、シヘンは下を向いてもじもじとしながら「はい」と返事をする。

「おぉ、それは良かった」

「デザートは別腹ッスからねー」

 4人はそれぞれバニラアイスを口へ運ぶ。

「うん、美味しい!」

 甘い物も好きなマルクエンは味に唸る。

「結構良いわね」

 顔に出さないようにしているが、ラミッタもかなり喜んでいた。

 満腹だったはずのシヘンも、バニラアイスは食べきれたようだ。

「お料理はいかがでしたでしょうか? 竜殺しのパーティの皆様」

 厨房からシェフがやってきて、マルクエン達に挨拶をする。

「こんにちは、お料理ゴチソウサマでした。とても美味しく、楽しませて頂きました」

 マルクエンはにこやかにそう返す。

「いえいえ、お客様達は街の英雄! そして、これからも更にご活躍なさる事でしょう。そんな方々にお食事をおもてなし出来た事を誇りに思います」

「そんな大層な者ではありませんよ」

 しばらく会話をし、マルクエンはウェイターとシェフにチップを渡して、食堂を後にする。


 女子部屋に辿り着いたケイはベッドへとダイブした。

「わ、私もう限界ッスー……」

 疲れと満腹感からか、ケイはもう眠気に負けそうになっている。

「私も、ちょっと休みたいかも……」

「それじゃ、2人は先に休んでいなさい。明日に備えてね?」

 笑顔を作るラミッタを見て2人は恐怖心を覚えたが、今はとにかく寝る事が先決だ。

「私はバーにでも行って飲んでいるわ」

 そう言い残し、部屋の明かりを消してドアを閉めるラミッタ。シヘンとケイはあっという間に眠ってしまった。
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