おやつタイム

文字数 1,059文字

 中央通り付近には、店や露天商がずらりと並び、食品から武器に至るまで売り買いされている。

「中々発展した街ね」

「そうだな、こんな街。イーヌでも中々見ることは無かったぞ」

 二人は周りを見歩きながら話をしていた。

「武器や防具はジャガの街から届くから良いとして、必要なもの……。何かあるかしら?」

「特に思いつかないんだよな」

「生活雑貨も、薬もあるしね」

 通りの端まで歩くと、ふと甘い匂いにラミッタの視線が動く。

「あら、何かしらあれ……」

 見えるのは黄金色(こがねいろ)のガラス。ではなく、ベッコウ飴を使った飴細工のパフォーマンスだった。

「え、何あれ!?」

「見たこと無いのか? ベッコウ飴だぞ」

「飴なの!?」

 そう言えばラミッタは甘いものが好きだったなと思い出したマルクエンは提案してみる。

「どうする? 買っていくか?」

「いや、この年で飴なんて……」

 強がるラミッタだったが、欲しそうにしているのは見え見えだ。

「私も食べたくなってな。良かったら一緒にどうだ?」

「そ、そう。それなら仕方ないわね。おこちゃまの騎士様に付き合ってあげるわよ」

 段々とラミッタの扱いが上手くなっていくマルクエン。

「すみません。飴を二つ欲しいのですが」

 露天の若い女店主がそれを聞いてニコリと笑う。

「あいよっ!! 毎度あり!! 形はどうしますかね?」

「選べるのかしら?」

「あまり凝ったのは作れませんが、ある程度なら」

「それじゃ、お手並み拝見のお任せで」

 ラミッタがニヤリと笑うと、女店主は任せろとばかりにウィンクをした。

 鍋から甘い匂いの飴が持ち手の棒にドロリと垂れる。ラミッタは興味深そうに見ていた。

 そして、何の形が出来るだろうと思っていたら、段々と出来上がるそれに赤面する。

「なっ、その形って……」

「ベタですけどハートでーす。お二人さんカップルですよね?」

「なっ、ち、ちが、違うから!!!」

 それを聞いて女店主は額に手を当てた。

「あちゃー!! てっきりカップル冒険者だとばかり!!」

「違ーう!!!」

 ラミッタは赤面しながら大声を出す。

「まぁまぁ、嫌でしたら別のをお作りしますので」

「味は同じなわけだし、これで良いんじゃないかラミッタ?」

「なっ、二人並んでハート型の飴舐めて帰れっての!? こ、このド変態卑猥野郎!!」

 ラミッタは自分で何を言っているのか分からない状態だった。

「まぁまぁ、ラミッタは別の形にしてもらえば良いじゃないか」

「いや、その!! 待つのもアレだし、お任せって言ったの私だし、責任は取るわ!!」

 マルクエンとラミッタはハート型の飴を受け取った。
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