痛み

文字数 962文字

 楽しい宴会から一変して村は悲惨な状況になった。

 セロラはコラーの横に座って泣いている。

「ごめん、コラー……」

 意識を失ったままのコラーから返事は無い。





 月明かりが差し込む中。コラーは目が覚めた。

 全身がビリビリと痛み、うっと声を上げる。

 足元に重みを感じて見てみると、セロラがもたれ掛かって眠っていた。

「セロラ……」

 一言そう呟き、セロラが無事だった事に安堵する。

 その時、セロラの猫耳がピクリと動き、顔を上げてコラーを見た。

「コラー! 起きたか!?」

「あぁ……」

 セロラは思わずコラーに抱きつこうとするが、ぐるぐる巻かれた赤く血の滲んだ包帯を見て自重する。

「コラー。何で私を助けた?」

「何でって……。気付いたらな、体が勝手にだよ」

「そう……」

 セロラは何と言えば良いのか、ずっと考えた。

 そして、出した答えは。

「コラー。ごめんね。助けてくれてありがとう」

「良いんだ。でも、もう無茶はしてくれるなよ?」

「うん……」

 いつになく聞き分けの良いセロラを見てコラーはフッと笑う。



 朝になり、集会所で目覚めるマルクエンとラミッタ。

 ラミッタは徹夜で手当をしていたので、まだ眠気が抜けきらないでいた。

「おはよう。お疲れラミッタ」

「えぇ、大丈夫よ」

 ふわーっとあくびを一つして集会場を見渡す。

 犠牲者こそ居なかったが、怪我人は多数いる。

 その中でも、一番重症のコラーの様子を見に行く。

「あら、仲良さそうに寝ているわね」

 コラーと寄り添って寝るセロラを見て二人は安堵した。

 他の怪我人を看ている間に、目覚めるコラーとセロラ。

「おはよう、気分はどうかしら?」

「あっ、おはようございます!! 申し訳ありません。自分が不甲斐ないばかりに……」

「いえ、誰かを守る姿勢は兵士として立派でした」

 マルクエンに言われると、思わずコラーは照れた。

「とりあえず、痛み止めを飲んで。そして薬塗って包帯の交換よ」

 言われた通りにするコラー。傷口に包帯が張り付いていて、剥がす時が物凄く痛い。

「コラー、大丈夫か?」

 セロラが手を握っていてくれているので、恥ずかしい所を見せるまいと耐える。




「さてと、どうしたものかしらね」

 集会所の外、村の中心に置かれた箱を見てラミッタは言う。

「箱を壊しても、これじゃいたちごっこだな」

 マルクエンも思わずはぁっとため息をつく。
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