聖域での出来事

文字数 1,020文字

 階段を登った先にあるのは、正方形の石が敷かれ、大きく開けた場所だ。

 その中心には大きな墓石と剣を掲げる男の像があった。その周りに例の箱が設置されている。

「アレが勇者様のお墓と銅像だ!」

 マッサがそう解説を入れてくれたが、大体は見れば分かってしまった。

「ほう、それでアレが魔物が出てくる箱とやらか」

「そうそう、ご明察スフィンさん」

 四人は箱まで歩み寄り、見上げる。

「この箱がどうやっても破壊できないのです」

 ラミッタは剣で斬りつけるが、カァンと弾かれた。

「なるほどな」

 そう言ってスフィンが箱に手を触れる。

 その瞬間だった。

 スフィンが触れた部分を中心に、ガラス細工を壊すかのようにヒビが入り、箱が割れ、音を立てて崩れだす。

「なっ!?」

 驚くマルクエン。ラミッタも信じられないと口をポカーンと開けていた。

「なっ、ちょっ、えぇ!? 何したんだスフィンさん!? 何かの魔法か!?」

 マッサも目を丸くして驚く。

「い、いや、私は何もしていないぞ!?」

 スフィン自身も何をしたのか分からないでいた。

 周りに居た箱の監視をしている衛兵もざわつき始める。

 うーんと悩んだ後に、マッサは思いつき、スフィンに伝えた。

「スフィンさん。他の箱も触ってみてくれないか?」

「あ、あぁ」

 何が起きているのか分からないスフィンであったが、他の箱に移動してまた手を触れてみる。

 すると、先ほどと同じ現象が起きた。ヒビが入り、ガラガラと箱が崩れていく。

「何だこりゃ!? 一体何が起きているんだ!?」

 崩れた破片は氷が溶けるように、ゆっくりと消えていった。

 残った六つある箱、全てに触れてみたが、例外なく砕ける。

「アレだけ何をしても壊れなかった箱が、スフィン将軍が触れただけで壊れるなんて……」

 ラミッタも信じられなかったが、目の前で起こってしまった事だ。信じるほかあるまい。

「まさか、異世界から来た勇者だからってか!?」

 マッサは興奮して言うが、スフィンは戸惑っている。

「だが、ラミッタやイーヌの騎士は破壊できないのだろう?」

「えぇ、私が身体強化を使い押してもビクともしませんでした」

「スフィン将軍だけが持つ能力って事も考えられますが」

 そう言った後。ラミッタは腕を組み、片目を閉じて考えた。

「まっ、ともかくだ。これでこの街の脅威は去ったな!!」

 マッサが笑顔で言う。確かにその通りだ。

「街に帰って祝杯でも上げましょうやー。冒険者ギルドでこの事も報告しないといけませんしね」
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