サバト、そして空を行く その2
文字数 1,256文字
座敷席のテーブルは、幾つもの料理の皿とビールのピッチャーやらで、既に隙間も無く一杯だ。テーブル席であったならば、もう乗り切れなかっただろう。
今回は、当初四人だけの予定だったので、テーブルに椅子の四人席で良かったのだが、座敷が空いていたので、僕たちは小上りの様な座敷席に上がり、座布団に座って酒を飲むことにした。
まぁ、だから彼女の席をつくる余裕があったのだけど、こんなことなら、テーブル席を強硬に主張すべきだったのかも知れない……。
僕が電話してから三十分も経たないうちに、彼女は歓迎会の席に現れた。
「マサシ、遅くなってごめ~ん。国道一号の原宿交差点の近くって聞いたんだけど、迷っちゃって……。すみませ~ん、初めまして、月宮盈です。図々しくお呼ばれしちゃいました~」
僕も驚いたことなのだが、「国道一号の原宿交差点」ってのは、決して青山通りの青山一丁目交差点でも、東海道の宿場のことでもない。それは関東近辺の人しか知らないだろうが、横浜市戸塚にある、結構交通量のある交差点のことなのだ。
千葉には新東京が多くあり、埼玉には新都市がある。そして神奈川には原宿と渋谷と云う地名がある……という訳だ。
「いよー、待ってました!」
佐藤先輩の大声と湧き上がる拍手。
僕は心の中で、「何かとてつもなく悪い予感がする」と呟かずにはいられない。しかし、これはもう予感のレベルではなかった……。
宴は必要以上に盛り上がった。
彼女は以前、馬乳酒が好きだと僕に言っていた。だが、ビールから始まり、日本酒、ワイン、何でも飲みまくっている。そう言えば、確か「ジェイジェイ」では、バーボンやらアイラ島産のスコッチやらも飲んでいたなぁ。
(酒なら何でも好きなのね……)
僕は彼女にそう突っ込みたくなる。
「盈ちゃん。こいつ、盈ちゃんのことを『キス上戸』だとか言ってたけど、それ本当?」
佐藤先輩が禁句を口にした。
(って、先輩……)
(その話題だけは、振っちゃ駄目だ!)
「え~、そんな~。どうして?」(CHU)
「うわっ、何か足先から痺れる様な……」
「おっ、いいな~、佐藤~」
「課長さんも」(CHU)
「何やってるのよ~、二人とも。鼻の下を伸ばして~」
「小松さんも……」(CHU)
「えっ、あっ。あたし……、レズに目覚めそう……」
僕が恐れていたことが、遂に始まってしまった……。
(サバトだ、サバトだー!!)
「マサシも……」(CHU)
このターンが数回繰り返され、流石に我慢しきれなくなった僕は、テーブルを激しく手で叩いていた。
グラスや皿は大きく揺れ、テーブルの上が危うく滅茶苦茶になるほどの物凄い衝撃だ。そして僕は、店中に響くほどの大声を出していた。
「公主! ダイエットはどうしたんですか!」
僕がテーブルを叩いた後、店内に拡がるサバトの怪しげな雰囲気は、一瞬で静寂の世界へと変わっていた。
「じゃ、じゃー。大分飲んだし、ここら辺でお開きにしようか……」
胡麻化し笑いをしながらの課長の一言で、こうして、このサバトは華麗に終わりを告げたのである。
今回は、当初四人だけの予定だったので、テーブルに椅子の四人席で良かったのだが、座敷が空いていたので、僕たちは小上りの様な座敷席に上がり、座布団に座って酒を飲むことにした。
まぁ、だから彼女の席をつくる余裕があったのだけど、こんなことなら、テーブル席を強硬に主張すべきだったのかも知れない……。
僕が電話してから三十分も経たないうちに、彼女は歓迎会の席に現れた。
「マサシ、遅くなってごめ~ん。国道一号の原宿交差点の近くって聞いたんだけど、迷っちゃって……。すみませ~ん、初めまして、月宮盈です。図々しくお呼ばれしちゃいました~」
僕も驚いたことなのだが、「国道一号の原宿交差点」ってのは、決して青山通りの青山一丁目交差点でも、東海道の宿場のことでもない。それは関東近辺の人しか知らないだろうが、横浜市戸塚にある、結構交通量のある交差点のことなのだ。
千葉には新東京が多くあり、埼玉には新都市がある。そして神奈川には原宿と渋谷と云う地名がある……という訳だ。
「いよー、待ってました!」
佐藤先輩の大声と湧き上がる拍手。
僕は心の中で、「何かとてつもなく悪い予感がする」と呟かずにはいられない。しかし、これはもう予感のレベルではなかった……。
宴は必要以上に盛り上がった。
彼女は以前、馬乳酒が好きだと僕に言っていた。だが、ビールから始まり、日本酒、ワイン、何でも飲みまくっている。そう言えば、確か「ジェイジェイ」では、バーボンやらアイラ島産のスコッチやらも飲んでいたなぁ。
(酒なら何でも好きなのね……)
僕は彼女にそう突っ込みたくなる。
「盈ちゃん。こいつ、盈ちゃんのことを『キス上戸』だとか言ってたけど、それ本当?」
佐藤先輩が禁句を口にした。
(って、先輩……)
(その話題だけは、振っちゃ駄目だ!)
「え~、そんな~。どうして?」(CHU)
「うわっ、何か足先から痺れる様な……」
「おっ、いいな~、佐藤~」
「課長さんも」(CHU)
「何やってるのよ~、二人とも。鼻の下を伸ばして~」
「小松さんも……」(CHU)
「えっ、あっ。あたし……、レズに目覚めそう……」
僕が恐れていたことが、遂に始まってしまった……。
(サバトだ、サバトだー!!)
「マサシも……」(CHU)
このターンが数回繰り返され、流石に我慢しきれなくなった僕は、テーブルを激しく手で叩いていた。
グラスや皿は大きく揺れ、テーブルの上が危うく滅茶苦茶になるほどの物凄い衝撃だ。そして僕は、店中に響くほどの大声を出していた。
「公主! ダイエットはどうしたんですか!」
僕がテーブルを叩いた後、店内に拡がるサバトの怪しげな雰囲気は、一瞬で静寂の世界へと変わっていた。
「じゃ、じゃー。大分飲んだし、ここら辺でお開きにしようか……」
胡麻化し笑いをしながらの課長の一言で、こうして、このサバトは華麗に終わりを告げたのである。