月宮盈は人間か? その5
文字数 1,252文字
数分もしないうちに、店の入口のドアが荒々しく開き、酔いつぶれた男性を肩に担いだ(人にはそう見えるだろう)、一人の女性が入ってきた。月宮盈、耀公主だった。
「マサシ?」
彼女は僕を見つけて驚いた様に叫んだ。だが、僕は何時も通りの調子に戻し、彼女に声を掛けることにした。
「公主、また何やったんですか? まさか、路CHUしたんじゃないでしょうね?」
すると彼女も、直ぐに気を取り直し、悪魔モードではない、何時もの一般用の口調で僕に返してくる。
「もうマサシさん、失礼ね。違うわよー! 道歩いていたら、意識失ったお兄さんが転がっていたから、介抱してあげようと思って、ここに連れてきたのよ!」
(何でもない道路に、ごろごろと気絶したお兄さんが転がってる訳ないだろ!)
彼女は、気絶した男を空いているテーブル席のソファに寝かせると、カウンター席の僕の隣に腰掛けた。そして、僕とマスターにだけ聞こえるくらいの小声で、「光臨派の坊主。平手打ちで伸びちゃったから、こいつに今日の酒代を払せようかと思って運んできた」と笑って、この状況を説明した。
「盈、それじゃ犯罪じゃないか。良くて恐喝、もう殆ど強盗だよ。今日は盈にも奢るから、その人ソファに寝かせておいてあげて」
マスターが呆れてこう言ったものだから、今度は彼女、それを僕のせいにしてくる。
「マサシ、使い魔のくせに、お前がちゃんと私を護ってくれないから、こう云うことになってしまうのだ……」
(大悪魔を護る必要なんかないでしょう!)
中村さんたちのいる奥の席では、彼女が来たの見て、一気に盛り上がっている。
「盈ちゃーん。今日は俺たちが奢っちゃうよー。湿気 た彼氏なんかそこにおいて、こっちへ来なよー」
「えー、もう、中村さんったら。いいけどー、あれは止めたのよ。彼が怒るから」
「やっぱりお前のせいか!」
中村さんが僕の方に氷を投げつけた。勿論、中村さんが僕に当てる気などは無いのは分かっている。岡本さんは、それを見て馬鹿笑いをしていた。そして、僕はマスターの方に向きを戻し、ほっとして微笑んでいだ。
「使い魔のくせに……か」
しかし、考えてみると、用も無いのに公主が夜の街に出ていく筈もない。きっと誰かがここに誘ったに違いない。
(誰が公主を呼んだのだろう?)
ふと見ると、僕の目の前に頼んでいないカクテルが置かれていた。
「マスター、これは?」
「奢るって言ったでしょ。これ、特製マムシ酒ベースカクテルだよ。本邦初公開、君の為に創ったんだよ」
カクテルのコースター脇には月下美人の花が置かれている。僕は躊躇 うことなく、特製カクテルを一機に飲み干した。
その夜の「ジェイジェイ」は異様な盛り上がりを見せ、結局、僕には彼女に謝る機会は与えられはしなかった……。
そして、その数日後、僕はあの日のことを謝った。しかし彼女は……。
「勝手な思い違いをするな。あの時はソフトクリームを食べ過ぎて、腹が痛くなってきていたのだ。そんな時に、マサシがつまらないことを聞くから、つい……」
(って、それだけ?)
「マサシ?」
彼女は僕を見つけて驚いた様に叫んだ。だが、僕は何時も通りの調子に戻し、彼女に声を掛けることにした。
「公主、また何やったんですか? まさか、路CHUしたんじゃないでしょうね?」
すると彼女も、直ぐに気を取り直し、悪魔モードではない、何時もの一般用の口調で僕に返してくる。
「もうマサシさん、失礼ね。違うわよー! 道歩いていたら、意識失ったお兄さんが転がっていたから、介抱してあげようと思って、ここに連れてきたのよ!」
(何でもない道路に、ごろごろと気絶したお兄さんが転がってる訳ないだろ!)
彼女は、気絶した男を空いているテーブル席のソファに寝かせると、カウンター席の僕の隣に腰掛けた。そして、僕とマスターにだけ聞こえるくらいの小声で、「光臨派の坊主。平手打ちで伸びちゃったから、こいつに今日の酒代を払せようかと思って運んできた」と笑って、この状況を説明した。
「盈、それじゃ犯罪じゃないか。良くて恐喝、もう殆ど強盗だよ。今日は盈にも奢るから、その人ソファに寝かせておいてあげて」
マスターが呆れてこう言ったものだから、今度は彼女、それを僕のせいにしてくる。
「マサシ、使い魔のくせに、お前がちゃんと私を護ってくれないから、こう云うことになってしまうのだ……」
(大悪魔を護る必要なんかないでしょう!)
中村さんたちのいる奥の席では、彼女が来たの見て、一気に盛り上がっている。
「盈ちゃーん。今日は俺たちが奢っちゃうよー。
「えー、もう、中村さんったら。いいけどー、あれは止めたのよ。彼が怒るから」
「やっぱりお前のせいか!」
中村さんが僕の方に氷を投げつけた。勿論、中村さんが僕に当てる気などは無いのは分かっている。岡本さんは、それを見て馬鹿笑いをしていた。そして、僕はマスターの方に向きを戻し、ほっとして微笑んでいだ。
「使い魔のくせに……か」
しかし、考えてみると、用も無いのに公主が夜の街に出ていく筈もない。きっと誰かがここに誘ったに違いない。
(誰が公主を呼んだのだろう?)
ふと見ると、僕の目の前に頼んでいないカクテルが置かれていた。
「マスター、これは?」
「奢るって言ったでしょ。これ、特製マムシ酒ベースカクテルだよ。本邦初公開、君の為に創ったんだよ」
カクテルのコースター脇には月下美人の花が置かれている。僕は
その夜の「ジェイジェイ」は異様な盛り上がりを見せ、結局、僕には彼女に謝る機会は与えられはしなかった……。
そして、その数日後、僕はあの日のことを謝った。しかし彼女は……。
「勝手な思い違いをするな。あの時はソフトクリームを食べ過ぎて、腹が痛くなってきていたのだ。そんな時に、マサシがつまらないことを聞くから、つい……」
(って、それだけ?)