月宮盈の大悪魔能力 その4

文字数 1,885文字

 彼女は僕に、自分の能力の説明を続けた。
「これは、マサシも見たことがあるだろう? 私は左手の拳から光を出すことが出来る」
 そう言えば、以前、空を飛んだ時に、彼女は目晦ましに拳の光を使用していた。
「熱を持たない照明として拳を輝かすことも可能なのだが、それだけではない。光線砲の様に熱線を発射することも、絞って銃弾の様に発射することだって出来るのだ。とは言ってもな、随分と長い間、懐中電灯の代わり以外には使ってないからなぁ……」
 ここで彼女は、両手を開いて僕に見せた。
「そして、今、見たであろう? 私の左掌は高温にすることが出来る。最大六千度くらいまでは出来ると思う。輻射熱は殆ど無い。だから熱線砲にはならないな。あくまで接触攻撃だけだ。まぁ、六千度くらいに出来ると言っても、ほんの一瞬だろうし、輻射熱が全く無いと云う訳ではない。それで自分の服が焦げたりすると嫌なので、実はそこまでしたことなど無いのだ。この能力は湯沸かし用だな。湯舟の水をかき回すだけでお風呂が沸くので、私はそうやって良く使っている」
「はぁ……」
「逆に、右手の(てのひら)は低温にすることが出来る。せいぜいマイナス二百度くらいまでだ。さっきはデモンストレーションとして氷を作ったが、あんな氷で水割りなど飲みたくはあるまい? 兄は最初見て羨んでいた様だがな……」
「確かにオンザロック用の氷を、ボール状に削るとき何かは、掌に乗せた氷が解けなくていいですけどね……」
「兄もそう思ったらしいのだが、残念なことに彼は右利きなのだ。氷を削るとき、氷を持つのは左手になるだろう? 左手では、冷やすことが出来ないのだ」
 それでも、咄嗟に氷が無い時とか、結構、重宝するのではないだろうか……?
「あと、これもマサシが体験済みなのだが、私は肩甲骨を翼に変形させて、空を飛ぶことが出来る。だが、マサシも知っている通り、大人が頑張って走った程度の速度(スピード)でしか飛べないのだ。下手すれば、走った方が遥かに早いかも知れない……」
 (いや)、流石にそれは嘘だろう。
「ま、元の持主が屑なのだから仕方あるまい。屑の能力は、所詮この程度だ」
 彼女はこの持主が、あまり好きではなかったらしい。何か、少し言葉に棘があるような気がする。
「だがな、最近、古いアニメを見ていて良いアイデアが浮かんだのだ。名付けてステルスモード。他の魔力と組み合わせ、高速飛行形体になる(すべ)を私は身に着けたのだ。その内、マサシにも乗らせてやるぞ」
「ちょ、ちょっと勘弁してくださいよ。高速飛行なんかで飛ばれたら、僕はどうなっちゃうんですか?」
 彼女は腕を組んでちょっと考えた。
「う~ん、そうか? 前より快適だと思うのだが……。まあ安心しろ。確かに遠くへ移動するなら、新幹線か飛行機の方が遥かに早く、私も楽だ。別にステルスモードを使うことなど、永遠にあるまい」
 だと良いのだが……。僕は何か変なフラグを立ててしまった様な気がする。
「身体に接する気流を、自由に操作することも出来るぞ。最大風力は測ったことがないから分からないが、かなり強い力が出せると思うのだ。それに、この能力は、気流砲、真空避雷針、空気抵抗低減など、色々な技へと応用の利く力なのだ。それに、実はこの能力がないと、私は空を飛ぶことが出来ないのだ。ま、この力とセットで飛行能力と言えるのかも知れんな」
 確かにそう言えば、空を飛んだ時、下から強い風が吹き上がっていた様な気がした。
 彼女は話を続ける。
「それから、水中活動だって出来ないこともない。具体的には、水中の酸素を身体に取り込み、肺でエラ呼吸をすることと、比較的、高速で泳げる能力らしいのだ」
「凄いじゃないですか? オリンピックでメダルが取れるんじゃないですか?」
「いや、オリンピックに出たとしても、残念ながら、とてもじゃないが勝てそうもないレベルだ。それに、飛ぶよりは遅いし、服は濡れるし、海で泳げば体や髪はシャワーを浴びるまで磯臭くなるし、こんな能力奪うんじゃなかったと、正直、今では思っている」
「服が濡れるのが嫌なら、水着で泳げばいいじゃないですか?」
「海の家でもあれば良いが、海や川に行くまで、陸の移動はどうするのだ? 水着姿で私は移動するのか?」
「服を着たまま海に入ると、人魚みたいに下半身が魚になって、陸に戻ると服を着てるみたいになるような感じで、姿を変えたりとかは出来ないのですか?」
 僕は、彼女が人魚にでもなった姿をつい想像してしまった。
「そんな気の利いた能力ではない!」
 彼女は露骨に嫌そうな顔をした。僕としては、彼女の人魚モードが見たかったのに、ちょっと残念だ。
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