決闘、炎と氷の大悪魔 その1
文字数 1,408文字
謎の爆発と、それに伴う火事で混乱する西新宿の一角、消防車のサイレンと人々の悲鳴が木霊するこの界隈で、耀公主である彼女と炎の大悪魔は、今、生死を賭けた決闘を始めようとしている。しかし、まだ二人の大悪魔は、お互い斜めに構えたまま、相手の出方を伺っている状態に過ぎなかった。
「随分と大きく出たもんだぜ。成人期になったくらいで、お嬢がそんな大口叩くとはな……。
ボ◇◆〇といい、お嬢といい、自分の分を弁 えたらどうなんだ?」
「相変わらずだな。成人期でも、全く脳は成長しないらしい……。相手の力量すら読むことが出来ぬとは……」
「上等じゃねえか、お嬢!」
「お前の炎程度では、私を倒すことなど出来やしないことを、これからたっぷりと思い知らせてやるから、さっさと掛かって来い!」
道路の幅は車道で4メートル程度、東側は線路の高架で壁になっており、反対側は歩道があって、背の高いビルが立ち並んでいる。
二人の大悪魔は、この都会の片隅で戦闘を開始した。
彼女たちの戦いは、確かに以前、彼女が僕に言っていた様に、空手か、中国拳法に近いものの様だった。
炎の大悪魔は、左右の突きと回し蹴りを繰り出しながら、前へ前へと彼女に迫って逃げられない様に壁へと追い詰めていく。一方、彼女はそれを左の腕一本で防ぎながら、後ろへ後ろへと下がって、追い詰められると肩透かしの様に体を広い方に入れ替わる。
僕には随分と長くこの展開が続いた様に感じられたが、実際には一分も経ってはいなかったのだろうと思う。
「凄いね……」
マニアっぽく岩男君が呟いた。
僕は彼女の勝利を信じているので、岩男君に少し反論する。
「今は押されているけど、お姉さんはそれなり強いから、直ぐに盛り返すよ」
「違うよ。お姉さん、押されてないよ。炎の兄ィの左手の拳、赤くなってきているよね、あれ、相当熱くなってる証拠なんだ。で、もう、掌 では受けられない。それをお姉さんも知ってて、あの左の攻撃の時は、必ずさっと間合いから外れている。炎の兄ィは必死に間合いを詰めようと前に出るんだけど、お姉さんは後ろ向きで逃げているのに追いつけない。それに、お姉さんのあの右手。なんだか動きも遅くなってきている様だし。あの動き、僕は、あれを何度か見たことがある……」
そう、確かに、彼女の右手は、意味もなく、ゆっくりとしたパンチを繰り返していた。相手もいない場所で空気を打つ様に。
突然、彼女の姿が消えたかと思うと、僕の頭上に飛び蹴りを入れてきた。
「マサシ、気を抜くな!」
彼女の蹴りは、僕の頭上を掠め、何かに当たって鈍い音を発した。
「ほう。どうやら、この使い魔が、よほど大事と見えるな……」
僕の後ろから、若い男の声が聞こえる。僕が振り向くと、直ぐ後ろに少しオタクっぽい高校生が腕を組んで立っていた。
蹴りを弾かれた彼女は、僕の頭上を宙返りして跳び越え、僕の前方に降り立った。
「ああ、自分の命以上にな」
「ならば、手を出さずにおこう。その代わり、二人掛かりで行かせて貰うぞ」
そう言うと、オタクも僕の頭上を跳び越え、彼女の目の前に着地して闘いに参加する。
「助かる!」
彼女はそう言うと、二人の大悪魔を同時に相手すべく、オタクの蹴りを躱し、斜め後に跳んで構え直した。
炎の大悪魔の方は、ぶつぶつと不平を言っていたのだが、岩男君の言う様に、あまり余裕がないのだろうか、二人で闘うことに、渋々彼も妥協したようだった。
「随分と大きく出たもんだぜ。成人期になったくらいで、お嬢がそんな大口叩くとはな……。
ボ◇◆〇といい、お嬢といい、自分の分を
「相変わらずだな。成人期でも、全く脳は成長しないらしい……。相手の力量すら読むことが出来ぬとは……」
「上等じゃねえか、お嬢!」
「お前の炎程度では、私を倒すことなど出来やしないことを、これからたっぷりと思い知らせてやるから、さっさと掛かって来い!」
道路の幅は車道で4メートル程度、東側は線路の高架で壁になっており、反対側は歩道があって、背の高いビルが立ち並んでいる。
二人の大悪魔は、この都会の片隅で戦闘を開始した。
彼女たちの戦いは、確かに以前、彼女が僕に言っていた様に、空手か、中国拳法に近いものの様だった。
炎の大悪魔は、左右の突きと回し蹴りを繰り出しながら、前へ前へと彼女に迫って逃げられない様に壁へと追い詰めていく。一方、彼女はそれを左の腕一本で防ぎながら、後ろへ後ろへと下がって、追い詰められると肩透かしの様に体を広い方に入れ替わる。
僕には随分と長くこの展開が続いた様に感じられたが、実際には一分も経ってはいなかったのだろうと思う。
「凄いね……」
マニアっぽく岩男君が呟いた。
僕は彼女の勝利を信じているので、岩男君に少し反論する。
「今は押されているけど、お姉さんはそれなり強いから、直ぐに盛り返すよ」
「違うよ。お姉さん、押されてないよ。炎の兄ィの左手の拳、赤くなってきているよね、あれ、相当熱くなってる証拠なんだ。で、もう、
そう、確かに、彼女の右手は、意味もなく、ゆっくりとしたパンチを繰り返していた。相手もいない場所で空気を打つ様に。
突然、彼女の姿が消えたかと思うと、僕の頭上に飛び蹴りを入れてきた。
「マサシ、気を抜くな!」
彼女の蹴りは、僕の頭上を掠め、何かに当たって鈍い音を発した。
「ほう。どうやら、この使い魔が、よほど大事と見えるな……」
僕の後ろから、若い男の声が聞こえる。僕が振り向くと、直ぐ後ろに少しオタクっぽい高校生が腕を組んで立っていた。
蹴りを弾かれた彼女は、僕の頭上を宙返りして跳び越え、僕の前方に降り立った。
「ああ、自分の命以上にな」
「ならば、手を出さずにおこう。その代わり、二人掛かりで行かせて貰うぞ」
そう言うと、オタクも僕の頭上を跳び越え、彼女の目の前に着地して闘いに参加する。
「助かる!」
彼女はそう言うと、二人の大悪魔を同時に相手すべく、オタクの蹴りを躱し、斜め後に跳んで構え直した。
炎の大悪魔の方は、ぶつぶつと不平を言っていたのだが、岩男君の言う様に、あまり余裕がないのだろうか、二人で闘うことに、渋々彼も妥協したようだった。