もう一度やり直したい その1
文字数 1,283文字
「おい及川。今日、合コン付き合えよ」
その日の定時後のことであった。帰り支度を始めていた僕に、佐藤先輩が変な誘いを掛けてきたのは……。
「はぁ? 何ですか?」
「ほら、あそこのカラオケで、田中の友達の女の子たちと、三対三で合コン的なのやろうとしてたんだけどさ、突然、一人出られなくなっちゃってさ……」
田中さんと云うのは、佐藤先輩の古くからの友人で、先輩とは、今でも二人つるんで良く遊び歩いている間柄なのだ。
「済みませんけど、今日は僕、とっても忙しいんですよ」
それは、佐藤先輩の誘いを断る為だけの、単なる口から出まかせだ……と云う訳ではない。今日は、どうした風の吹き回しか、彼女が僕の為に夕食を作ってくれると、片瀬のワンルームマンションに、僕を招待してくれていたのだ。
「偶には俺たちに付き合ったって良いだろう? そんな調子じゃ、お前、何時まで経っても、盈ちゃんに頭が上がんねぇぞ」
(彼女と約束があるなんて、僕はまだ一言も言っていない!!)
まぁ、昔の僕だったら、その日の気分で自由に飲みに行ったり、ぶらりと旅行に出かけたりしたものだった……。でも、最近は仕事以外の時間、殆ど彼女と過ごしている。
彼女と一緒にいるのは、確かに楽しいのだけれども、僕の自由時間が奪われているって云うのも、間違いのない事実だった。
「いーんだよ、及川は直ぐに帰っても」
この佐藤先輩の言葉でなのであるが、僕の理解としては……。
要するに僕が先に帰れば、二対三で先輩がモテる確率が高いってことだし、万が一、僕の方がモテたとしても、僕にはベタ惚れの彼女がいるから、ライバルになる可能性は全くない。だから僕を誘っている……。
(確かに、そうかも知れない……)
まぁ、何時も何時も、彼女の言いなりにホイホイ呼び出されるっての云うのも少々癪だし、偶には僕の方が彼女との約束に遅れたって良いだろう……。
僕は何か彼女に反抗をしてみたくなったのだ。それは多分、余りにも彼女に心奪われている自分に、驚きとともに、少し困惑を感じているからなのだと思う。
ま、そんな経緯 もあり、僕は会社が退けたあと、佐藤先輩と一緒に、彼の友人である田中さんと合流し、会社近くのカラオケ店へと行くことにしたのだ。
言うまでもないことだが、僕は女性との縁が深かった方ではない。正直、僕は彼女以外、女性と付き合ったことなど無いし、この手の会合に参加したことだって一度も無い。そう云う意味では、酷く緊張をしても不思議はないのだが、今回は先輩の指示に従って、一杯飲んで早々に帰れば良いと僕は甘く考えていた。
カラオケ店までは、どれ程の距離もない。僕と先輩は、会社を出たところで田中さんと待ち合わせ、そのまま歩いて彼が予約したカラオケ店へと入った。
こうして、僕たちがカラオケ店の個室には入った時には、既にもう、相手の女の子たちはカラオケに興じていた……。
ここから先、僕はカラオケ店で何をしていたのか、正確に覚えていられない程にパニックになってしまう。何故なら、三人の女の子の一人が、高校時代、僕があこがれてた女性、慶子ちゃんだったからだ。
その日の定時後のことであった。帰り支度を始めていた僕に、佐藤先輩が変な誘いを掛けてきたのは……。
「はぁ? 何ですか?」
「ほら、あそこのカラオケで、田中の友達の女の子たちと、三対三で合コン的なのやろうとしてたんだけどさ、突然、一人出られなくなっちゃってさ……」
田中さんと云うのは、佐藤先輩の古くからの友人で、先輩とは、今でも二人つるんで良く遊び歩いている間柄なのだ。
「済みませんけど、今日は僕、とっても忙しいんですよ」
それは、佐藤先輩の誘いを断る為だけの、単なる口から出まかせだ……と云う訳ではない。今日は、どうした風の吹き回しか、彼女が僕の為に夕食を作ってくれると、片瀬のワンルームマンションに、僕を招待してくれていたのだ。
「偶には俺たちに付き合ったって良いだろう? そんな調子じゃ、お前、何時まで経っても、盈ちゃんに頭が上がんねぇぞ」
(彼女と約束があるなんて、僕はまだ一言も言っていない!!)
まぁ、昔の僕だったら、その日の気分で自由に飲みに行ったり、ぶらりと旅行に出かけたりしたものだった……。でも、最近は仕事以外の時間、殆ど彼女と過ごしている。
彼女と一緒にいるのは、確かに楽しいのだけれども、僕の自由時間が奪われているって云うのも、間違いのない事実だった。
「いーんだよ、及川は直ぐに帰っても」
この佐藤先輩の言葉でなのであるが、僕の理解としては……。
要するに僕が先に帰れば、二対三で先輩がモテる確率が高いってことだし、万が一、僕の方がモテたとしても、僕にはベタ惚れの彼女がいるから、ライバルになる可能性は全くない。だから僕を誘っている……。
(確かに、そうかも知れない……)
まぁ、何時も何時も、彼女の言いなりにホイホイ呼び出されるっての云うのも少々癪だし、偶には僕の方が彼女との約束に遅れたって良いだろう……。
僕は何か彼女に反抗をしてみたくなったのだ。それは多分、余りにも彼女に心奪われている自分に、驚きとともに、少し困惑を感じているからなのだと思う。
ま、そんな
言うまでもないことだが、僕は女性との縁が深かった方ではない。正直、僕は彼女以外、女性と付き合ったことなど無いし、この手の会合に参加したことだって一度も無い。そう云う意味では、酷く緊張をしても不思議はないのだが、今回は先輩の指示に従って、一杯飲んで早々に帰れば良いと僕は甘く考えていた。
カラオケ店までは、どれ程の距離もない。僕と先輩は、会社を出たところで田中さんと待ち合わせ、そのまま歩いて彼が予約したカラオケ店へと入った。
こうして、僕たちがカラオケ店の個室には入った時には、既にもう、相手の女の子たちはカラオケに興じていた……。
ここから先、僕はカラオケ店で何をしていたのか、正確に覚えていられない程にパニックになってしまう。何故なら、三人の女の子の一人が、高校時代、僕があこがれてた女性、慶子ちゃんだったからだ。