月宮盈の大悪魔能力 その3

文字数 1,552文字

「空を飛んでも、特別何も感じないマサシなら、大悪魔の力を見たくらいでは、どうと云う程のこともないか……」
 僕は彼女の能力を目の当たりにして、言葉を失くしていた。だが、怖かった訳ではない。只、驚きの余り、どう反応して良いのか分からなくなってしまっただけなのだ。
「あ、あの……」
「これから私は、私に、どの様な力が有るかをマサシに話そうと思う。理由は無い。何となく、マサシに話したくなったのだ」
「え?」
「マサシ……。私はこの様な話を、人間にしたことは無い。マサシなら、私を、私の能力を、恐れたりはしないと……」
「別に怖くはない……です」
 正直、これは嘘だと思う。僕は、自分の手と足が細かく震えているのに気付いていた。だが、逃げたいとは思わない。
 僕は、彼女が僕を信じて話そうとしてくれていると思うし、それには、とても大きな勇気が必要だったんじゃないかと僕は思う。ならば、何もせず聞くだけの僕が、勇気を見せなくてどうすると云うのだ?

 彼女は、僕が紅茶を飲み終わると、自分の能力についての話を始めた。

「遥か昔、私はこの時空を荒らしに来た十三人の大悪魔のうちの一人であった……。だが、私は、仲間であった奴らを裏切り、残りの大悪魔たちを殺し、その能力を奪い取って自分の能力にしたのだ……。通常、大悪魔は固有能力を、一つずつ持っているものなのだが、そう云う訳で、私は大悪魔の能力を九つも持っている」
「九つ?」
「ああ、数が足りないのは、貰い損なった能力もあるし、欲しいと思わなかった能力もあるのでな」
 十二の内、四つは得られなかったと云うことなのか……。それにしても能力ってのは、どんな物があるのだろうか?
「能力って、空を飛ぶとか、憑依とか……、ですか?」
「そうだ。だが、憑依であるとか、人間の生気を吸い取るとか云った、基本的な大悪魔の特性は、固有能力には数えてはいない」
 すると、空を飛んだり、両手の温度を変化させる他に、そのような特別な能力が六つもあるってことか……。
「先ず、私が元々持っていた悪魔の能力は、危機察知と云うもので、危機が迫ると気分が悪くなって危険を知らせると云うものだ。この能力は、結構汎用性の広いもので、その方向や危機のレベルも、ある程度なら分かるし、危機の種類も経験したものなら分からないでもない」
 僕は危機察知の話を聞いて、疑問が生じた。
「公主、じゃ、光臨派の待ち伏せとか、僕が襲い掛かることについて、何故、予知できなかったのですか?」
「残念なことに、余りに弱すぎる脅威は、他の脅威の不快感と、不快感が混ざって区別することが出来ないのだ。光臨派の待ち伏せでは、食べ過ぎた後の胸やけと、私には全く区別がつきはしないのだ」
 あいつら、食べ過ぎ以下なのか?
「分かったろう? 無防備な部屋だとしても、私に危険など無いことが」
 成程、寝込みを狙われたとしても、その前に気持ちが悪くなって目が覚めるから、彼女が不意打ちされることなどは、絶対に無いと云うことなのか……。
「私が無敵である理由はそれだけではない。私の遠い昔からの友、幼馴染とでも云うのだろうか……。奴の能力で、皮膚を自由に変形させたり、瞬間的に皮膚を硬化させることが出来るのだ。固さは、そうだな、大体、硬質ガラス程度だろうか?」
 僕には少し、そのイメージが湧き難かった。それを感じとった彼女は、その能力の使い方を具体例で示した。
「この能力は凄いぞ。銃で狙撃されたり、不意に切りつけられたとしても、瞬間硬化で皮膚が鎧になるから防ぐことが可能だ。防御面だけではない。手の甲や指の皮を剣や槍に変え、武器とすることも出来る。また、皮膚の一部を飛ばして、手裏剣の様に攻撃することだって出来るのだ」
 僕の降魔の利剣が砕けたのは、この能力のせいだったのか……。
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