もう一度やり直したい その2
文字数 1,609文字
高校時代、僕と慶子ちゃんは同じ学校で同学年。クラスこそ違っていたものの、同窓生と云う間柄だった。
入学して直ぐ、一目見た時から僕は彼女に憧れていた。だが、当時の僕は、矢張り今と同じで冴えない男。一方、彼女はと云うと学年中の人気者……。
「月とすっぽんとは、まぁ、こんなことを言うんだろうな」
僕は良くそう思っていた。
でも、そうは言っても、僕だって可愛い子に対する憧れってものがあって、駄目で元々、彼女に告白をしてみようかと考えたことだって、一度や二度のことじゃあなかった。でも、勇気のない僕は、結局、告白して恥を掻くことは無かったのだ……。
そうこうして半年が経ち、彼女がバスケ部の先輩と付き合っていることが分かり、僕の短い恋はあっさりと終りを迎えたのである。
まぁ、ドラマも何もない、仕様もない短い話なのだが……。
だけど、流石に、こんな処で久しぶりに出会ったりすると、それはそれで、僕もちょっと懐かしい気にもなってくる。
とは言え、僕は別に彼女と会話を楽しみたいなどとは思っていなかった。矢張り、僕は一刻も早く帰りたいと思っていたのだ。
しかし、来て早々に「はい、さようなら」と言う勇気など僕には無く、何時まで経っても帰れないまま、結局、僕は何だかんだと言って、このカラオケ合コンに最後まで付き合うことになってしまうのだ……。我ながら優柔不断としか言い様がない。
そして、話をするとなると、話し易い相手に、話し易い話題と云うことになる。
結局、僕は、慶子ちゃん相手に高校時代の昔話をすることになってしまうのであった。
「そういえば、バスケ部の先輩とは、あれからどうなったの?」
「聞かないでよ。私、ここにいるんだから」
慶子ちゃんはグラスで喉を潤しながら、僕の質問に笑いながらそう答えた。すると、佐藤先輩が脇でそれを聞きつけて、余分な突っ込みを入れてくる。
「そーだよなー、ここにいるのに彼氏なんかいないよなー。でもこいつ。彼女がいるのにここに来てるんだぜー」
(って、それを知ってて、数合わせで誘ったの、佐藤先輩でしょうが!)
「やっだー」
別の二人の女の子が声を揃えた。
ここまで言われると、自分の人間性を疑われている様で、流石に僕だって、少しは反論したくなってくる。
「いやその、彼女って云う程には、相手されてなくって、そう、家来みたいなものかな……」
流石に僕も家畜とは言えない。
「何よ? それ」
と、洋子ちゃんと呼ばれている女の子。
「及川君、彼女できたんだ~。で、どんな彼女なの?」
慶子ちゃんが興味深そうに尋ねてくる。しかし、僕が答える前に、それに答えたのは佐藤先輩だった。
「それがさ、こいつには勿体ない位の美人でさ。ちょっとセクシーな感じだよな」
そう言った後に、佐藤先輩が僕の肩に手を回し、にやけた顔で同意を求める。
(何時のことを思い出してるんだ!)
「けっこ~、その手の女の人って、遊んでるわよね~」
と洋子ちゃん。
何かもう、カラオケ合コンって云う雰囲気ではなくなっていた。
明美ちゃんと云う娘も、この話題に乗ってきて、余分なことを訊く。
「で、慶子とその彼女、どっちが美人?」
「慶子ちゃんも美人だけど、やっぱり、盈ちゃんかな~」
(先輩、駄目だって……。そんなことをここで言っちゃ……)
「へぇ~、そうなんだ……」
慶子ちゃんは少しムッとして、そう合いの手を入れた。
(ほら、凄く変な雰囲気になっちゃったじゃないですか!)
僕は何とか場を和ませようと、ちょっと慶子ちゃんにお世辞を言ってみる。
「慶子ちゃんは、とっても美人だよ。僕だって昔から慶子ちゃんに憧れていたんだから」
「うそ」
「嘘じゃないですって」
「本当? じゃあ高校時代に戻って、もう一度やり直そうよ!」
「えっ?」
「結婚前提で、お付き合いしましょう?」
「ええっ?」
(何を考えているんだ? 慶子ちゃん)
「はい、アドレス交換しよ! 近いうちに連絡するからね」
入学して直ぐ、一目見た時から僕は彼女に憧れていた。だが、当時の僕は、矢張り今と同じで冴えない男。一方、彼女はと云うと学年中の人気者……。
「月とすっぽんとは、まぁ、こんなことを言うんだろうな」
僕は良くそう思っていた。
でも、そうは言っても、僕だって可愛い子に対する憧れってものがあって、駄目で元々、彼女に告白をしてみようかと考えたことだって、一度や二度のことじゃあなかった。でも、勇気のない僕は、結局、告白して恥を掻くことは無かったのだ……。
そうこうして半年が経ち、彼女がバスケ部の先輩と付き合っていることが分かり、僕の短い恋はあっさりと終りを迎えたのである。
まぁ、ドラマも何もない、仕様もない短い話なのだが……。
だけど、流石に、こんな処で久しぶりに出会ったりすると、それはそれで、僕もちょっと懐かしい気にもなってくる。
とは言え、僕は別に彼女と会話を楽しみたいなどとは思っていなかった。矢張り、僕は一刻も早く帰りたいと思っていたのだ。
しかし、来て早々に「はい、さようなら」と言う勇気など僕には無く、何時まで経っても帰れないまま、結局、僕は何だかんだと言って、このカラオケ合コンに最後まで付き合うことになってしまうのだ……。我ながら優柔不断としか言い様がない。
そして、話をするとなると、話し易い相手に、話し易い話題と云うことになる。
結局、僕は、慶子ちゃん相手に高校時代の昔話をすることになってしまうのであった。
「そういえば、バスケ部の先輩とは、あれからどうなったの?」
「聞かないでよ。私、ここにいるんだから」
慶子ちゃんはグラスで喉を潤しながら、僕の質問に笑いながらそう答えた。すると、佐藤先輩が脇でそれを聞きつけて、余分な突っ込みを入れてくる。
「そーだよなー、ここにいるのに彼氏なんかいないよなー。でもこいつ。彼女がいるのにここに来てるんだぜー」
(って、それを知ってて、数合わせで誘ったの、佐藤先輩でしょうが!)
「やっだー」
別の二人の女の子が声を揃えた。
ここまで言われると、自分の人間性を疑われている様で、流石に僕だって、少しは反論したくなってくる。
「いやその、彼女って云う程には、相手されてなくって、そう、家来みたいなものかな……」
流石に僕も家畜とは言えない。
「何よ? それ」
と、洋子ちゃんと呼ばれている女の子。
「及川君、彼女できたんだ~。で、どんな彼女なの?」
慶子ちゃんが興味深そうに尋ねてくる。しかし、僕が答える前に、それに答えたのは佐藤先輩だった。
「それがさ、こいつには勿体ない位の美人でさ。ちょっとセクシーな感じだよな」
そう言った後に、佐藤先輩が僕の肩に手を回し、にやけた顔で同意を求める。
(何時のことを思い出してるんだ!)
「けっこ~、その手の女の人って、遊んでるわよね~」
と洋子ちゃん。
何かもう、カラオケ合コンって云う雰囲気ではなくなっていた。
明美ちゃんと云う娘も、この話題に乗ってきて、余分なことを訊く。
「で、慶子とその彼女、どっちが美人?」
「慶子ちゃんも美人だけど、やっぱり、盈ちゃんかな~」
(先輩、駄目だって……。そんなことをここで言っちゃ……)
「へぇ~、そうなんだ……」
慶子ちゃんは少しムッとして、そう合いの手を入れた。
(ほら、凄く変な雰囲気になっちゃったじゃないですか!)
僕は何とか場を和ませようと、ちょっと慶子ちゃんにお世辞を言ってみる。
「慶子ちゃんは、とっても美人だよ。僕だって昔から慶子ちゃんに憧れていたんだから」
「うそ」
「嘘じゃないですって」
「本当? じゃあ高校時代に戻って、もう一度やり直そうよ!」
「えっ?」
「結婚前提で、お付き合いしましょう?」
「ええっ?」
(何を考えているんだ? 慶子ちゃん)
「はい、アドレス交換しよ! 近いうちに連絡するからね」