第19話 港側の孤児院にて、ビリーと進路のお話を……
文字数 1,889文字
「でね、ビリー。ドムとヘンリーを、王都の騎士や衛兵になる為の学園に入れようと思うんだけど」
私は、エドの執務室から出てすぐに港側の孤児院に向かって、今、ビリーの孤児院での執務室にいた。お互いテーブルをはさんで座っている。
もちろん、ケイシーも付いてきて、私の後ろに立っているわ。
変な噂がたったら、お互いイヤだからね。
「思うんだけどって、さぁ」
私の計画書(エドがダメ出ししたところは、線で消している)を見ながら、ビリーはやる気なく言っている。
「何? 何か問題でも?」
「……いや。俺は賛成だけど……。このまま成人して孤児院 を出たら、あいつらは元の生活に逆戻りしそうだから」
「でしょう? なのに何でそんな態度なの?」
私は少しムッとして、ビリーに言っている。だって、2人にとっては本当に良い話なんだもの。
そう思っていると、ビリーがいきなり居住まいを正した。
「奥様。俺……いや、私には、あの2人を説得する自信がないのです。学園を卒業すれば、出自がどうであれ、信用が出来るでしょう。場合によっては、騎士や衛兵にならずとも他の道も模索できます。だけど……」
ビリーは、お屋敷で教育を受けている時に、孤児院の運営をするうちに子ども達の自立する道も勉強させられたのだと思う。
武官、文官どちらの学園を出ても、必ずその道に行かなければならないという事ではなく、幅広い選択肢を得られるという事を、教育係だったアンガス・ベリーに習ったのだろう。
だからこその知識なんだろうけど……、そこまで知っていてなぜ?
「だけど?」
「まだ、自我が確定していない幼い子ならまだしも。ドムもヘンリーも、私同様に幼い子を守りながら、元締めから仕事を受けていました」
「ええ。そうなのでしょうね。それで?」
「私はご領主様や奥様に助けられ忠誠を誓い、今迄同様ここで子ども達を守っていく仕事が出来ています。だけど彼らはここを出て……」
ああ、なるほど。学園を卒業したらここには戻って来れないと思っているのね。
「わたくしも詳しくはないのだけれど、一定期間訓練が終わったら、ここに戻って来る事もできるはずよ」
だって私は知っている。
「他の領地だったら、分からないけど。ここには、辺境警備という仕事があるから」
エドと共に辺境警備をしている騎士や兵士って、この領地出身の人たち多いもの。
ビリーが一瞬きょとんとした顔をして
「ああ。なるほど」
と納得したように、手をポンと叩いて同意した。
「それじゃ、私。彼らに話してくるわ」
「……って、え? 俺に説得しろって話じゃ」
「人任せになんかしないわよ。ああ、そう。さっきの話し方も良いけど、公の場で無ければ今まで通りで良いわ。面倒くさいから……」
私は席を立って、慌ただしく部屋を出ようとする。
「面倒くさいってなぁ。奥様?」
「良いじゃない。今さらよ。じゃあ、仕事頑張って。勉強の方も……特にドムは急がせなきゃだもの。入学年齢が決まって無いと言っても、早い方が良いわ」
「あっ。待って」
ビリーが、椅子から中途半端に立ち上がり私を引き留めようとする。
早くしないと、小さい子たちがお昼寝から起きちゃうのに。
「あのな。勉強はある程度出来るんだ、2人とも。俺のお屋敷での教育が短期間で終わったのも、そのおかげだし……」
「……ストリートキッズやりながら、学校行っていたの? 前のここの領主って、言っては何だけど……」
貴族の間でも、かなり評判が悪かったような……。
ウインゲートの領地に引き籠っていた私の耳にすら入って来たもの。
ビリーが、ちょいちょいと私を呼んでいる。
それと同時にケイシーの方も見ているけど。
「ああ。ケイシーは、大丈夫よ。これでもウインゲート家の侍女だし、私と同様の知識があるから」
暗に私同様……というか、ウインゲート家の人々と同様に裏に通じているとビリーに、……伝わったかな?
それでも私は用心の為にビリーのすぐ横に行った。耳打ちはさせれないけど。
「以前……総元締め が……多分、こちらのお屋敷にあったんだと思うけど、子ども向けの書き取りと計算の練習ができる冊子を、人を通じて渡して来たんだ。仕事で入用になるから覚えろって」
そう言って、少し汚れた冊子を数冊、私に渡してくれた。
渡されて中を確認する。
「当時の上の連中はその内いなくなってしまったけど、あの2人を含む8歳以上の子どもは、最低読み書きは出来るから、すぐにでも上の学校とやらには行けるぜ」
冊子を渡された後のビリーの話は、正直私の頭の中に入って来なかった。
な……んで。
なんで、この冊子をビリーが持っているの?
私は、エドの執務室から出てすぐに港側の孤児院に向かって、今、ビリーの孤児院での執務室にいた。お互いテーブルをはさんで座っている。
もちろん、ケイシーも付いてきて、私の後ろに立っているわ。
変な噂がたったら、お互いイヤだからね。
「思うんだけどって、さぁ」
私の計画書(エドがダメ出ししたところは、線で消している)を見ながら、ビリーはやる気なく言っている。
「何? 何か問題でも?」
「……いや。俺は賛成だけど……。このまま成人して
「でしょう? なのに何でそんな態度なの?」
私は少しムッとして、ビリーに言っている。だって、2人にとっては本当に良い話なんだもの。
そう思っていると、ビリーがいきなり居住まいを正した。
「奥様。俺……いや、私には、あの2人を説得する自信がないのです。学園を卒業すれば、出自がどうであれ、信用が出来るでしょう。場合によっては、騎士や衛兵にならずとも他の道も模索できます。だけど……」
ビリーは、お屋敷で教育を受けている時に、孤児院の運営をするうちに子ども達の自立する道も勉強させられたのだと思う。
武官、文官どちらの学園を出ても、必ずその道に行かなければならないという事ではなく、幅広い選択肢を得られるという事を、教育係だったアンガス・ベリーに習ったのだろう。
だからこその知識なんだろうけど……、そこまで知っていてなぜ?
「だけど?」
「まだ、自我が確定していない幼い子ならまだしも。ドムもヘンリーも、私同様に幼い子を守りながら、元締めから仕事を受けていました」
「ええ。そうなのでしょうね。それで?」
「私はご領主様や奥様に助けられ忠誠を誓い、今迄同様ここで子ども達を守っていく仕事が出来ています。だけど彼らはここを出て……」
ああ、なるほど。学園を卒業したらここには戻って来れないと思っているのね。
「わたくしも詳しくはないのだけれど、一定期間訓練が終わったら、ここに戻って来る事もできるはずよ」
だって私は知っている。
「他の領地だったら、分からないけど。ここには、辺境警備という仕事があるから」
エドと共に辺境警備をしている騎士や兵士って、この領地出身の人たち多いもの。
ビリーが一瞬きょとんとした顔をして
「ああ。なるほど」
と納得したように、手をポンと叩いて同意した。
「それじゃ、私。彼らに話してくるわ」
「……って、え? 俺に説得しろって話じゃ」
「人任せになんかしないわよ。ああ、そう。さっきの話し方も良いけど、公の場で無ければ今まで通りで良いわ。面倒くさいから……」
私は席を立って、慌ただしく部屋を出ようとする。
「面倒くさいってなぁ。奥様?」
「良いじゃない。今さらよ。じゃあ、仕事頑張って。勉強の方も……特にドムは急がせなきゃだもの。入学年齢が決まって無いと言っても、早い方が良いわ」
「あっ。待って」
ビリーが、椅子から中途半端に立ち上がり私を引き留めようとする。
早くしないと、小さい子たちがお昼寝から起きちゃうのに。
「あのな。勉強はある程度出来るんだ、2人とも。俺のお屋敷での教育が短期間で終わったのも、そのおかげだし……」
「……ストリートキッズやりながら、学校行っていたの? 前のここの領主って、言っては何だけど……」
貴族の間でも、かなり評判が悪かったような……。
ウインゲートの領地に引き籠っていた私の耳にすら入って来たもの。
ビリーが、ちょいちょいと私を呼んでいる。
それと同時にケイシーの方も見ているけど。
「ああ。ケイシーは、大丈夫よ。これでもウインゲート家の侍女だし、私と同様の知識があるから」
暗に私同様……というか、ウインゲート家の人々と同様に裏に通じているとビリーに、……伝わったかな?
それでも私は用心の為にビリーのすぐ横に行った。耳打ちはさせれないけど。
「以前……
そう言って、少し汚れた冊子を数冊、私に渡してくれた。
渡されて中を確認する。
「当時の上の連中はその内いなくなってしまったけど、あの2人を含む8歳以上の子どもは、最低読み書きは出来るから、すぐにでも上の学校とやらには行けるぜ」
冊子を渡された後のビリーの話は、正直私の頭の中に入って来なかった。
な……んで。
なんで、この冊子をビリーが持っているの?