番外編 ピーター・ブラッドローの追憶 後編
文字数 1,474文字
「ピーター様。本当に戦場に行ってしまわれるのですか?」
「大丈夫。今回は偵察がてらだから、すぐに戻るよ」
僕が出かける支度をしながら、チェルシーは不安そうに言ってきた。
そんなチェルシーの額に軽くキスをする。そして、いつも通り屋敷を出た。
偵察とはいえ、同盟国が戦っている最前線だ。
王妃様が、敵の戦いっぷりを見たいと仰せになって、少数精鋭で行くことになった。
だけど、戦場で王妃の護衛を務め、武勲を立てれば褒賞で、チェルシーとの身分差も何とかなるかもしれない。
そんな希望を胸に僕は戦場に向かった。
この偵察の後、僕ら3人は伯爵位を賜った。今回は、同盟国の兵士に紛れての偵察だったが、次に出陣する時には、自国の戦闘になる。
司令官を務める為の爵位の授与だというが、それと同時に領地を持たされるという話だった。
「王妃様。僕は、領地はいりません。フォーブズやマクファーレンと違い領地経営は未経験です。なのに、またすぐに戦地に向かう身では、せっかく賜った領地も荒れてしまいましょう」
「なるほど。もっともな意見だね。そうしたら、どうしよう?」
「恐れながら。我が屋敷の侍女チェルシーとの婚姻を認めて頂きたい。使用人とはいえ、彼女はオグモンド男爵の令嬢、身分的には問題ないはず」
「まぁ、伯爵の正妻としては……だね。だけど、君らは次の戦争が終わったらまだ身分が上がるよ」
は? そんな確定的に……。
「君らは確実に次も武勲を立てるだろうからね。ふむ、そうだね。そのチェルシーとやらを、私に預けてくれないかい? 悪いようにはしないから」
王妃様は、僕にそんな提案をしてきた。
「君が、次の戦場で武勲を立てたら、必ずチェルシーと婚姻を結べるようにしてあげるよ」
「はっ。有難き事にございます」
そう言うやり取りの後に、チェルシーを王妃様に預けた。
その後、すぐに僕たちはまた戦場に旅立つ。
僕たちが戦場に立つのは最後だという、王妃様の言葉を信じて……。
「そして、今に至るわけだ。王妃様は約束通りオグモンド男爵にチェルシーを自分の娘だと認めさせ、伯爵家に養女に出したことにして、俺の家の使用人だったという過去を抹消した。そして、伯爵家から公爵家に養女に出され、そこで令嬢としての教育をみっちり仕込まれて、俺の前に現れたという訳だ」
そう言って、俺は話を締めくくった。
「あ~、いや。俺たちが知っている話ばかりで、大事な部分が抜けてる気がするが……」
まぁ、俺の生い立ちの部分は、騎士見習いの頃から一緒だったからな。
エドマンドの言いたいことはよくわかる。
「あのなぁ~。僕たちは、チェルシー嬢との馴れ初めと言うか、ラブロマンスをだな」
ジョールは、ハッキリ言ってきた。
二人とも、自分の婚約者殿に『きっとお二人には素敵なラブロマンスがあったんでしょうね』と言われて、『わたくし、知りたいわ』と言う目で見られ、しぶしぶやって来たんだろう。
特に、エドマンドの方は……。
「お前らが、先に言うのなら俺も言っても良いけど?」
二人が、ウッと言う感じで引いた。
無いとは言わせない。特にエドマンドは、惚れない限り相手が子供だ何だと言って、婚姻を先延ばしにしただろうから……。
「あ~、うん。とりあえず、飲もう」
「そうだな……」
ジョールも、エドマンドも少し顔を赤くしながら、酒を勧めてくる。
こうして、俺達のよくわからない曖昧な夜は過ぎて行った。
コイバナは、女性同士でやってくれ。
「大丈夫。今回は偵察がてらだから、すぐに戻るよ」
僕が出かける支度をしながら、チェルシーは不安そうに言ってきた。
そんなチェルシーの額に軽くキスをする。そして、いつも通り屋敷を出た。
偵察とはいえ、同盟国が戦っている最前線だ。
王妃様が、敵の戦いっぷりを見たいと仰せになって、少数精鋭で行くことになった。
だけど、戦場で王妃の護衛を務め、武勲を立てれば褒賞で、チェルシーとの身分差も何とかなるかもしれない。
そんな希望を胸に僕は戦場に向かった。
この偵察の後、僕ら3人は伯爵位を賜った。今回は、同盟国の兵士に紛れての偵察だったが、次に出陣する時には、自国の戦闘になる。
司令官を務める為の爵位の授与だというが、それと同時に領地を持たされるという話だった。
「王妃様。僕は、領地はいりません。フォーブズやマクファーレンと違い領地経営は未経験です。なのに、またすぐに戦地に向かう身では、せっかく賜った領地も荒れてしまいましょう」
「なるほど。もっともな意見だね。そうしたら、どうしよう?」
「恐れながら。我が屋敷の侍女チェルシーとの婚姻を認めて頂きたい。使用人とはいえ、彼女はオグモンド男爵の令嬢、身分的には問題ないはず」
「まぁ、伯爵の正妻としては……だね。だけど、君らは次の戦争が終わったらまだ身分が上がるよ」
は? そんな確定的に……。
「君らは確実に次も武勲を立てるだろうからね。ふむ、そうだね。そのチェルシーとやらを、私に預けてくれないかい? 悪いようにはしないから」
王妃様は、僕にそんな提案をしてきた。
「君が、次の戦場で武勲を立てたら、必ずチェルシーと婚姻を結べるようにしてあげるよ」
「はっ。有難き事にございます」
そう言うやり取りの後に、チェルシーを王妃様に預けた。
その後、すぐに僕たちはまた戦場に旅立つ。
僕たちが戦場に立つのは最後だという、王妃様の言葉を信じて……。
「そして、今に至るわけだ。王妃様は約束通りオグモンド男爵にチェルシーを自分の娘だと認めさせ、伯爵家に養女に出したことにして、俺の家の使用人だったという過去を抹消した。そして、伯爵家から公爵家に養女に出され、そこで令嬢としての教育をみっちり仕込まれて、俺の前に現れたという訳だ」
そう言って、俺は話を締めくくった。
「あ~、いや。俺たちが知っている話ばかりで、大事な部分が抜けてる気がするが……」
まぁ、俺の生い立ちの部分は、騎士見習いの頃から一緒だったからな。
エドマンドの言いたいことはよくわかる。
「あのなぁ~。僕たちは、チェルシー嬢との馴れ初めと言うか、ラブロマンスをだな」
ジョールは、ハッキリ言ってきた。
二人とも、自分の婚約者殿に『きっとお二人には素敵なラブロマンスがあったんでしょうね』と言われて、『わたくし、知りたいわ』と言う目で見られ、しぶしぶやって来たんだろう。
特に、エドマンドの方は……。
「お前らが、先に言うのなら俺も言っても良いけど?」
二人が、ウッと言う感じで引いた。
無いとは言わせない。特にエドマンドは、惚れない限り相手が子供だ何だと言って、婚姻を先延ばしにしただろうから……。
「あ~、うん。とりあえず、飲もう」
「そうだな……」
ジョールも、エドマンドも少し顔を赤くしながら、酒を勧めてくる。
こうして、俺達のよくわからない曖昧な夜は過ぎて行った。
コイバナは、女性同士でやってくれ。