第61話 婚約発表の夜会 ピーターとチェルシーの事情
文字数 1,632文字
「おめでとう、ジョール、メアリー嬢」
「ありがとう、エドマンド。だけどさぁ、マリー嬢にピーターの事情くらい教えといてやれよ」
相変わらず色恋沙汰になるとポンコツになるなって笑いながら言っている。
「ブラッドロー様の事情?」
「まぁ、ピーターは気にしてないし、王室も認めているから問題は無いのだけれどね。さすがにここでは言えないかな?」
ジュール様は、軽い感じで言ってくれている。
「そうだな、うっかりしていた。マリー後で説明するから」
エド様も、普通に私に言っている。まぁ、公の場だからの態度なのだろう。
気にはなるけど、ここでは言えない事なのね……と、納得をした。
それより、今は……
「メアリー様、綺麗。ビックリしましたわ」
「え? あ……王宮の侍女の方々に、支度を手伝って頂きましたの。なんだか、わたくしではないようで……」
メアリー様は、私の誉め言葉に少し赤くなって、それでも嬉しそうに言ってくれた。
「あっ、わかるわ。わたくしも自分の姿を鏡で見た時、誰? って思いましたもの」
「そうっ。そうなの。本当に、わたくし」
「でも、メイクも自然だし、その薄いピンクから濃いピンクのグラデのドレスの裾にふんだんに刺繍が入って……全体的にメアリー様らしさが出てますわ」
「ドレスは、ジョール様からの贈り物ですの。わたくしには大人っぽいかもと思うのですが」
そんなこと無い、と私が言おうとしたら、ジョール様が横から言ってきた。
「似合ってるよ。何度も言うけど、本当にメアリーは綺麗だ」
メアリー様は、赤くなって下を向こうとして踏ん張った。夜会で主役の令嬢が下を向くなんて許されない。
頑張って。メアリー様。
そうしているうちに、ダンス曲が流れてきた。
「マリー。踊ろうか」
「ええ」
そう言って、2人でジョール様達に挨拶をしてホールの中央に出た。
メアリー様が、デビュタント前なのでジョール様はダンスを控えているようだった。
その代わりというように、仲睦まじく二人でおしゃべりを楽しんでいるようだ。
まぁ、最初のダンスを踊ってしまったら、他の男性とも踊らないといけなくなるものね。
「マリー。驚いても、大声を出してくれるなよ」
エド様は、最初にそうくぎを刺して、私にピーター様の所の事情を話し出した。
「ピーターの婚約者のチェルシー嬢は、オグモンド男爵家の令嬢で、幼い頃奉公に出されてブラッドロー家の侍女をしていたんだ」
うちのケイシーと同じ立場という訳ね。なるほど……。
「ピーターは、前回の戦場でも武勲を立てていて、報奨品にチェルシー嬢を……と願い出たのだんだ。だが、男爵家から出されてしまった令嬢で、しかも今の身分が使用人だったから、そのままでは難しくてな。段階を踏んでムーアクロフト家の養女になって、今回の婚約が実現したというわけなんだ」
「そこには長年の素敵なラブロマンスがあるというわけですね。羨ましいですわ」
「よくわからんが、多分そうなんだろうな。ただ、チェルシー嬢はそこに引け目を感じているらしい。年齢の割に社交界慣れもしていないから、少し敏感になっているのだと思う」
「なるほど、それで先ほどの反応だったのですね。わかりましたわ」
うん、私は公の場であまり近付かない方が良いってことね。
とっさの場面で、何を言ってしまうかわからないものね。
「マリー」
そういう事を考えてると、不意に名前を呼ばれて、エド様のお顔を見た。優しいお顔して私を見ているわ。
「俺は不器用だから気の利いたことは言えんが、マリーも何かあれば一人で抱え込まず、俺にも言ってくれ。俺も仕事上の言えない事以外はマリーに相談するから……な」
エ……エド様って、やっぱり侮れないわ。でも、今回の……トム・エフィンジャーの事はどこまで言っていいのかわからない。だから
「はい。わかりましたわ。エド様」
とだけ、返事を返した。
「ありがとう、エドマンド。だけどさぁ、マリー嬢にピーターの事情くらい教えといてやれよ」
相変わらず色恋沙汰になるとポンコツになるなって笑いながら言っている。
「ブラッドロー様の事情?」
「まぁ、ピーターは気にしてないし、王室も認めているから問題は無いのだけれどね。さすがにここでは言えないかな?」
ジュール様は、軽い感じで言ってくれている。
「そうだな、うっかりしていた。マリー後で説明するから」
エド様も、普通に私に言っている。まぁ、公の場だからの態度なのだろう。
気にはなるけど、ここでは言えない事なのね……と、納得をした。
それより、今は……
「メアリー様、綺麗。ビックリしましたわ」
「え? あ……王宮の侍女の方々に、支度を手伝って頂きましたの。なんだか、わたくしではないようで……」
メアリー様は、私の誉め言葉に少し赤くなって、それでも嬉しそうに言ってくれた。
「あっ、わかるわ。わたくしも自分の姿を鏡で見た時、誰? って思いましたもの」
「そうっ。そうなの。本当に、わたくし」
「でも、メイクも自然だし、その薄いピンクから濃いピンクのグラデのドレスの裾にふんだんに刺繍が入って……全体的にメアリー様らしさが出てますわ」
「ドレスは、ジョール様からの贈り物ですの。わたくしには大人っぽいかもと思うのですが」
そんなこと無い、と私が言おうとしたら、ジョール様が横から言ってきた。
「似合ってるよ。何度も言うけど、本当にメアリーは綺麗だ」
メアリー様は、赤くなって下を向こうとして踏ん張った。夜会で主役の令嬢が下を向くなんて許されない。
頑張って。メアリー様。
そうしているうちに、ダンス曲が流れてきた。
「マリー。踊ろうか」
「ええ」
そう言って、2人でジョール様達に挨拶をしてホールの中央に出た。
メアリー様が、デビュタント前なのでジョール様はダンスを控えているようだった。
その代わりというように、仲睦まじく二人でおしゃべりを楽しんでいるようだ。
まぁ、最初のダンスを踊ってしまったら、他の男性とも踊らないといけなくなるものね。
「マリー。驚いても、大声を出してくれるなよ」
エド様は、最初にそうくぎを刺して、私にピーター様の所の事情を話し出した。
「ピーターの婚約者のチェルシー嬢は、オグモンド男爵家の令嬢で、幼い頃奉公に出されてブラッドロー家の侍女をしていたんだ」
うちのケイシーと同じ立場という訳ね。なるほど……。
「ピーターは、前回の戦場でも武勲を立てていて、報奨品にチェルシー嬢を……と願い出たのだんだ。だが、男爵家から出されてしまった令嬢で、しかも今の身分が使用人だったから、そのままでは難しくてな。段階を踏んでムーアクロフト家の養女になって、今回の婚約が実現したというわけなんだ」
「そこには長年の素敵なラブロマンスがあるというわけですね。羨ましいですわ」
「よくわからんが、多分そうなんだろうな。ただ、チェルシー嬢はそこに引け目を感じているらしい。年齢の割に社交界慣れもしていないから、少し敏感になっているのだと思う」
「なるほど、それで先ほどの反応だったのですね。わかりましたわ」
うん、私は公の場であまり近付かない方が良いってことね。
とっさの場面で、何を言ってしまうかわからないものね。
「マリー」
そういう事を考えてると、不意に名前を呼ばれて、エド様のお顔を見た。優しいお顔して私を見ているわ。
「俺は不器用だから気の利いたことは言えんが、マリーも何かあれば一人で抱え込まず、俺にも言ってくれ。俺も仕事上の言えない事以外はマリーに相談するから……な」
エ……エド様って、やっぱり侮れないわ。でも、今回の……トム・エフィンジャーの事はどこまで言っていいのかわからない。だから
「はい。わかりましたわ。エド様」
とだけ、返事を返した。