第55話 王妃様とマリー
文字数 1,394文字
「それで、私に何か用事があったんじゃないのかい? みんなが来ないような時間に談話室 に来るだなんて」
私は、王妃様もここにいらっしゃらないと思ってきたのだけど……誰も使用していない時なら、扉の前の近衛兵はともかく室内に侍女はいないと思ったから。
だけど、私が来るのを見透かしたように王妃様が来ていた。
王宮に来てゲストルームならまだしも、王族のプライベートゾーンで一人になりたいなんて、我がままだ。それに、普通の公爵令嬢ならそんな事、考えたりしない。
公爵家のご令嬢でも、エド様の身分の辺境伯夫人でも。いつも人がいて当たり前、眠っている時ですら護衛が付く。本来なら、そんな身分。
「マリー?」
王妃様の雰囲気が婦人の柔らかいものに変わっていた。
「ごめんなさいね。1人にすることは出来ないの。あなたの今までの環境だと、ここの生活は窮屈でしょうね。だけど、気持ちはわかるけど、慣れてもらわないと困るわ」
王妃様の言葉に私は思わず自分の口を両手でふさいだ。考えたことが口から洩れていた?
そんな私の様子を見て、王妃様はクスっと笑う。
「今、マリーの中にはわたくしの欠片があるの。トム・エフィンジャーにも言われたでしょう? 面白いもの仕込まれているって」
「え……と、なんでそれを王妃様が……」
「お母様でしょう? マリー。その欠片があると考えが読めたり、状態が分かったりするのよ。でも、普段の行動やあなたの心はわからないから安心してね。王宮内は別だけど……それは、あなたに限った事じゃないし」
「お母様は、王宮内の事は全てわかるのですか?」
「だいたいね。それが、国王よりも権限がある王妃の絶対条件だから。って、話を戻していいかしら」
「あ……はい、すみません」
恐縮して私が言ったら、王妃様はにっこり笑った。
「トム・エフィンジャーは、また行方不明になっているの。しかも、完全に気配を断っているわ」
「はぁ」
それはいつもの事なのでは? と思うのだけど。
「婚礼前が一番危ないと思うのよ」
危ない? 何が?
「ほら、覚えてない? トム・エフィンジャーがあなたを欲しがっていた事」
『もう少し大人になったら俺のもんにならねぇか?』
ああ、そういえばそんな事言ってたっけ。
「神出鬼没だからねぇ」
「だから、わたくしを保護するために家族ごっこなんて……」
そう私が言うと、王妃様は少し遠い目をした。
「ウィンゲート家やマクファーレン家にいるよりはマシ、程度なのだけどね」
「どういう……」
「ここにいたら、わたくしの名前で王 室 に呼び出されることは無いから」
…………はい? 今なんて?
「あの」
私がしゃべろうとすると、唇に指をあてられる。
そして、王妃様はすれ違いざまに私にこう忠告していった。
「第二王子 のルイに気を付けて」
そして王妃様は扉に向かいながら
「さて、溜まっている書類を片付けなければね。マリーも、もう少ししたらエドマンドの屋敷に挨拶に行くのでしょう? お部屋に帰って、お肌の手入れをしてもらいなさいな」
そう言って、護衛の近衛兵に指示を出して退出していった。
「マリー様。お部屋まで護衛仕 ります」
礼を執りながらそう言ってくる近衛兵を連れて私もお部屋に戻って行った。
私は、王妃様もここにいらっしゃらないと思ってきたのだけど……誰も使用していない時なら、扉の前の近衛兵はともかく室内に侍女はいないと思ったから。
だけど、私が来るのを見透かしたように王妃様が来ていた。
王宮に来てゲストルームならまだしも、王族のプライベートゾーンで一人になりたいなんて、我がままだ。それに、普通の公爵令嬢ならそんな事、考えたりしない。
公爵家のご令嬢でも、エド様の身分の辺境伯夫人でも。いつも人がいて当たり前、眠っている時ですら護衛が付く。本来なら、そんな身分。
「マリー?」
王妃様の雰囲気が婦人の柔らかいものに変わっていた。
「ごめんなさいね。1人にすることは出来ないの。あなたの今までの環境だと、ここの生活は窮屈でしょうね。だけど、気持ちはわかるけど、慣れてもらわないと困るわ」
王妃様の言葉に私は思わず自分の口を両手でふさいだ。考えたことが口から洩れていた?
そんな私の様子を見て、王妃様はクスっと笑う。
「今、マリーの中にはわたくしの欠片があるの。トム・エフィンジャーにも言われたでしょう? 面白いもの仕込まれているって」
「え……と、なんでそれを王妃様が……」
「お母様でしょう? マリー。その欠片があると考えが読めたり、状態が分かったりするのよ。でも、普段の行動やあなたの心はわからないから安心してね。王宮内は別だけど……それは、あなたに限った事じゃないし」
「お母様は、王宮内の事は全てわかるのですか?」
「だいたいね。それが、国王よりも権限がある王妃の絶対条件だから。って、話を戻していいかしら」
「あ……はい、すみません」
恐縮して私が言ったら、王妃様はにっこり笑った。
「トム・エフィンジャーは、また行方不明になっているの。しかも、完全に気配を断っているわ」
「はぁ」
それはいつもの事なのでは? と思うのだけど。
「婚礼前が一番危ないと思うのよ」
危ない? 何が?
「ほら、覚えてない? トム・エフィンジャーがあなたを欲しがっていた事」
『もう少し大人になったら俺のもんにならねぇか?』
ああ、そういえばそんな事言ってたっけ。
「神出鬼没だからねぇ」
「だから、わたくしを保護するために家族ごっこなんて……」
そう私が言うと、王妃様は少し遠い目をした。
「ウィンゲート家やマクファーレン家にいるよりはマシ、程度なのだけどね」
「どういう……」
「ここにいたら、わたくしの名前で
…………はい? 今なんて?
「あの」
私がしゃべろうとすると、唇に指をあてられる。
そして、王妃様はすれ違いざまに私にこう忠告していった。
「
そして王妃様は扉に向かいながら
「さて、溜まっている書類を片付けなければね。マリーも、もう少ししたらエドマンドの屋敷に挨拶に行くのでしょう? お部屋に帰って、お肌の手入れをしてもらいなさいな」
そう言って、護衛の近衛兵に指示を出して退出していった。
「マリー様。お部屋まで護衛
礼を執りながらそう言ってくる近衛兵を連れて私もお部屋に戻って行った。