第20話 怪我をした青年について
文字数 1,548文字
私は怪我をして眠り込んでしまった青年を運んでくれた農村の人たちに、お礼をして、一階の使用人用の仮眠室に青年を寝かせた。
私にも常識があって、さすがに庶民の得体の知れない青年を貴族が使う客室に寝かせる気は無かった。
それでも、怪我人。侍女に身体を拭かせて綺麗にした後、お医者様には診せる。
「怪我自体は、大したことないです。ただ、数が多い。熱も出て来ています。しばらくは、栄養を取りゆっくりさせた方が良いとは思いますが……」
果たして、そこまで面倒を、見る気があるのか……というのと、青年が完治まで大人しく、面倒を見られているのかという、両方の懸念があるのだろう。
お医者様は、少し言いにくそうに語尾をにごしていた。
「奥様。ちょっとよろしいでしょうか?」
お医者様が帰った後、執事のジュードが私の側に来て部屋の隅に誘導する。
「なにかしら」
「その者を一体どうするおつもりですか?」
「そうねぇ。とりあえず、エド様……旦那様の指示を仰ぐつもりだけど、新しい領地の人だと思うのよね。こういう考え方はあまり好きじゃ無いのだけど、恩を売っておけばあちらの領地の事が少し分かるかなって思ったの。まぁ、そんなことに利用するつもりで、助けたのでは無かったのだけど」
アハハって感じで、私はお茶をにごした。
だって、ジュードがとても驚いた表情をしたから……。
私の口から、人を利用するような発言が出たことに、驚いたのかもしれないわ。でも、仕方無いわ。私だって、上位貴族なのだもの。
「そうですか。わかりました、旦那様にもそのようにお伝えしてよろしいですか?」
「ええ。かまわないわ。お願い出来るかしら」
かしこまりましたと言って、ジュードは使用人に何か指示を出しこの部屋を出て行った。
「マリーお嬢様。私たちも部屋に戻りましょう。ここは、使用人達だけで充分です」
ケイシーが、私に部屋に戻るように提案してきた。やっぱり、この青年を警戒しているのだと思う。
私はケイシーの提案に素直に従った。
青年のそばにいつまでもいて、何かあるのかと勘ぐられるのも嫌だし……。
誰かに、追われているようだったのは、言った方が良かったのかしら。
お部屋に戻る廊下で、私はそんな事を考えていた。
夕方には旦那様が帰ってこられたようだった。
「怪我をした青年? 使用人の仮眠室にいるのか」
帰宅後すぐの、ジュードからの報告に着替えもそこそこに仮眠室に向かっている。
「はい。奥様が、連れて来られて」
「まぁ、熱が出るような怪我をしているのなら保護するのが普通だな。保護する場所にしても、正しい判断が出来ているではないか」
何か問題があるのか? と言う感じで、エドマンドは言っている。
「それが……その男、刃物で切られたような傷や、殴られた後もございまして……」
「トラブルに巻き込まれて、逃げてきたってところか」
厄介だな……と、エドマンドは思う。だが、領地内のトラブルなら放っておくわけにもいかない。
仮眠室に着き、中にいた使用人が挨拶をしようとするのを手で制してベッドの中を見る。
なるほど、若い男だ。茶褐色の少し癖はあるが短く切った髪。
布団に隠れてしまっているが、膨らみ具合から察するに、身体の線は細い。まだ、10代か。
エドマンドは、少し考え込む……
「この男、どこかで見た気がするのだが」
どこでだったかな? とエドマンドは考えるがどうにも思い出せない。
「一緒に港を視察している騎士団の方々にも、見て頂ければ分かるのでは?」
「ああ。そうだな」
部屋でエドマンドとジュードがボソボソ話す。ベッドでは、心なしか青年が身じろぎしたような気がしていた。
私にも常識があって、さすがに庶民の得体の知れない青年を貴族が使う客室に寝かせる気は無かった。
それでも、怪我人。侍女に身体を拭かせて綺麗にした後、お医者様には診せる。
「怪我自体は、大したことないです。ただ、数が多い。熱も出て来ています。しばらくは、栄養を取りゆっくりさせた方が良いとは思いますが……」
果たして、そこまで面倒を、見る気があるのか……というのと、青年が完治まで大人しく、面倒を見られているのかという、両方の懸念があるのだろう。
お医者様は、少し言いにくそうに語尾をにごしていた。
「奥様。ちょっとよろしいでしょうか?」
お医者様が帰った後、執事のジュードが私の側に来て部屋の隅に誘導する。
「なにかしら」
「その者を一体どうするおつもりですか?」
「そうねぇ。とりあえず、エド様……旦那様の指示を仰ぐつもりだけど、新しい領地の人だと思うのよね。こういう考え方はあまり好きじゃ無いのだけど、恩を売っておけばあちらの領地の事が少し分かるかなって思ったの。まぁ、そんなことに利用するつもりで、助けたのでは無かったのだけど」
アハハって感じで、私はお茶をにごした。
だって、ジュードがとても驚いた表情をしたから……。
私の口から、人を利用するような発言が出たことに、驚いたのかもしれないわ。でも、仕方無いわ。私だって、上位貴族なのだもの。
「そうですか。わかりました、旦那様にもそのようにお伝えしてよろしいですか?」
「ええ。かまわないわ。お願い出来るかしら」
かしこまりましたと言って、ジュードは使用人に何か指示を出しこの部屋を出て行った。
「マリーお嬢様。私たちも部屋に戻りましょう。ここは、使用人達だけで充分です」
ケイシーが、私に部屋に戻るように提案してきた。やっぱり、この青年を警戒しているのだと思う。
私はケイシーの提案に素直に従った。
青年のそばにいつまでもいて、何かあるのかと勘ぐられるのも嫌だし……。
誰かに、追われているようだったのは、言った方が良かったのかしら。
お部屋に戻る廊下で、私はそんな事を考えていた。
夕方には旦那様が帰ってこられたようだった。
「怪我をした青年? 使用人の仮眠室にいるのか」
帰宅後すぐの、ジュードからの報告に着替えもそこそこに仮眠室に向かっている。
「はい。奥様が、連れて来られて」
「まぁ、熱が出るような怪我をしているのなら保護するのが普通だな。保護する場所にしても、正しい判断が出来ているではないか」
何か問題があるのか? と言う感じで、エドマンドは言っている。
「それが……その男、刃物で切られたような傷や、殴られた後もございまして……」
「トラブルに巻き込まれて、逃げてきたってところか」
厄介だな……と、エドマンドは思う。だが、領地内のトラブルなら放っておくわけにもいかない。
仮眠室に着き、中にいた使用人が挨拶をしようとするのを手で制してベッドの中を見る。
なるほど、若い男だ。茶褐色の少し癖はあるが短く切った髪。
布団に隠れてしまっているが、膨らみ具合から察するに、身体の線は細い。まだ、10代か。
エドマンドは、少し考え込む……
「この男、どこかで見た気がするのだが」
どこでだったかな? とエドマンドは考えるがどうにも思い出せない。
「一緒に港を視察している騎士団の方々にも、見て頂ければ分かるのでは?」
「ああ。そうだな」
部屋でエドマンドとジュードがボソボソ話す。ベッドでは、心なしか青年が身じろぎしたような気がしていた。