第13話 港側の孤児院への慰問
文字数 1,414文字
屋敷の私の部屋に戻ってから、ケイシーがブチブチ文句を言っていた。
「イヤな女。あのサマンサって」
「下品だわ。ケイシー」
思わずケイシーをたしなめてしまった。と言うか、逆はあっても私がケイシーを……なんて、珍しい。いえ、初めてだわ。
だって、ケイシーは婚姻前の王宮滞在時に、研修とテストを受けて、王宮侍女の資格まで得てしまっているのだから。
「ですが、あの時、お茶の用意を手伝いに行ったら何て言ったと思います?」
『触らないで下さいませね。マクファーレン様のお好みに通りに用意いたしますので』
「って、そう言ったんですよ。もう、信じられない」
いや、何を信じていたのか分からないけど、ウィンゲート領の母様といたお屋敷でもこんなに怒ったケイシーを見た事なんて無かったわ。
って言うか、サマンサの声色 マネできるのね。
「エドの好み通りのお茶を入れたかったら、イライザに習ったら良いんじゃない? エド付きの侍女をそれこそ領地に来た時からしているのだし。多分、サマンサもイライザに習ったんだと思うわよ」
イライザ・ヘイマーは子育てを終えた後、侍女として復帰してこの領地に赴任してきたマクファーレン家でも古株のベテラン侍女だ。
「そういう問題じゃないです」
私の提案にも従わず、ぷんすか怒っている。
侍女としてはどうかと思うけど、これが私とケイシーの距離なんだから仕方ないわ。
まぁね。分かってはいるけどね。ケイシーが、サマンサを警戒している理由なんて。
でも今は、正直それどころじゃないわ。
明日はビリーがいる孤児院に慰問に行くのだし……。
こちらの孤児院の方は、エドが長く関わっている分落ち着いているけど、港側の方はどうだろう?
もう随分と、保護した子どもも増えているようだけど。
エドがもし愛妾を持つようになってしまっても、正直なところ、私にはどうしようもない。
私自身の感情はともかく、妾を持つのが当たり前の世の中だから、賢者様の決まりごとがあるのだと思うのよね。
だから、仕方の無い事なのだわ。
「こらっ! お前ら、ちょっとは大人しく出来ないのか」
私たちが、港側の孤児院に着いた時には騒動の真っ最中だった。
ビリーが必死に、子ども達を並ばせようとしている。
港側の孤児院は、ストリートキッズをすべて受け入れると決めた時に、元々あった建物では手狭になると言うので領地の奥の広い土地に新たに建てていた。
敷地内には、菜園まで造っている。
まぁ、以前の建物は老朽化も激しかったから……。
それにしても元気に暴れまわっているわね。
あっ、ケイシーがお土産のお菓子を取られてしまった。
「あっ。こら」
お菓子が入ったかごを持って行った子どもを追いかけようか迷っているみたいだけど……。
追いかけない方が、正解だと思うよ。追いかけっこだったら、勝てないだろうし。
「なんで俺たちが貴族なんかにへこへこしなきゃならないんだよ」
「なんてこと言うんだ、ヘンリー。不敬だろ?」
逃げ回りながら減らず口を叩いている年長の子どもにビリーが慌てている。
まぁ確かにね。
今まで、自分達だけで生きてきたんだもの。
エドは、不敬なんて気にもせず面白そうに見ているから良いのだけれど。
そう思って、窓の外を見てみると木の上にビリーより少し年下だろう男の子が登ってこちらを見ていた。
なるほど……、あれがビリーの後釜?
私は、室内の騒ぎをしり目に、そっと建物の外に抜け出した。
「イヤな女。あのサマンサって」
「下品だわ。ケイシー」
思わずケイシーをたしなめてしまった。と言うか、逆はあっても私がケイシーを……なんて、珍しい。いえ、初めてだわ。
だって、ケイシーは婚姻前の王宮滞在時に、研修とテストを受けて、王宮侍女の資格まで得てしまっているのだから。
「ですが、あの時、お茶の用意を手伝いに行ったら何て言ったと思います?」
『触らないで下さいませね。マクファーレン様のお好みに通りに用意いたしますので』
「って、そう言ったんですよ。もう、信じられない」
いや、何を信じていたのか分からないけど、ウィンゲート領の母様といたお屋敷でもこんなに怒ったケイシーを見た事なんて無かったわ。
って言うか、サマンサの
「エドの好み通りのお茶を入れたかったら、イライザに習ったら良いんじゃない? エド付きの侍女をそれこそ領地に来た時からしているのだし。多分、サマンサもイライザに習ったんだと思うわよ」
イライザ・ヘイマーは子育てを終えた後、侍女として復帰してこの領地に赴任してきたマクファーレン家でも古株のベテラン侍女だ。
「そういう問題じゃないです」
私の提案にも従わず、ぷんすか怒っている。
侍女としてはどうかと思うけど、これが私とケイシーの距離なんだから仕方ないわ。
まぁね。分かってはいるけどね。ケイシーが、サマンサを警戒している理由なんて。
でも今は、正直それどころじゃないわ。
明日はビリーがいる孤児院に慰問に行くのだし……。
こちらの孤児院の方は、エドが長く関わっている分落ち着いているけど、港側の方はどうだろう?
もう随分と、保護した子どもも増えているようだけど。
エドがもし愛妾を持つようになってしまっても、正直なところ、私にはどうしようもない。
私自身の感情はともかく、妾を持つのが当たり前の世の中だから、賢者様の決まりごとがあるのだと思うのよね。
だから、仕方の無い事なのだわ。
「こらっ! お前ら、ちょっとは大人しく出来ないのか」
私たちが、港側の孤児院に着いた時には騒動の真っ最中だった。
ビリーが必死に、子ども達を並ばせようとしている。
港側の孤児院は、ストリートキッズをすべて受け入れると決めた時に、元々あった建物では手狭になると言うので領地の奥の広い土地に新たに建てていた。
敷地内には、菜園まで造っている。
まぁ、以前の建物は老朽化も激しかったから……。
それにしても元気に暴れまわっているわね。
あっ、ケイシーがお土産のお菓子を取られてしまった。
「あっ。こら」
お菓子が入ったかごを持って行った子どもを追いかけようか迷っているみたいだけど……。
追いかけない方が、正解だと思うよ。追いかけっこだったら、勝てないだろうし。
「なんで俺たちが貴族なんかにへこへこしなきゃならないんだよ」
「なんてこと言うんだ、ヘンリー。不敬だろ?」
逃げ回りながら減らず口を叩いている年長の子どもにビリーが慌てている。
まぁ確かにね。
今まで、自分達だけで生きてきたんだもの。
エドは、不敬なんて気にもせず面白そうに見ているから良いのだけれど。
そう思って、窓の外を見てみると木の上にビリーより少し年下だろう男の子が登ってこちらを見ていた。
なるほど……、あれがビリーの後釜?
私は、室内の騒ぎをしり目に、そっと建物の外に抜け出した。