第5話 新婚旅行のお誘い
文字数 1,407文字
「旅行……ですか?」
私たちは、朝食と言うか、お昼を食べながらお話していた。
今までもそうだったけど、厨房が一階にあるので一人で食べる時でなければ、一階の奥の一室を食事の部屋として、そこでご飯を食べる事にしていた。
子どもとかできた時、そういう習慣があった方が良いだろうと、私が婚約者として来た時から旦那様の提案でそうして来ていた。
夫婦になって、その言葉がリアリティを増してきているけど。
「旅行と言っても、同じマクファーレン領の兄の所だけどな。お屋敷自体には3~4日の滞在になるが」
「まぁ。新婚旅行ですのね。素敵だわ」
この世界、同じ国内とは言っても、王都以外はたいていどなたかが治めている土地なの。
だから、親しい友人の領地でも、普通の旅行ならまだしも、新婚旅行先には選ばない。
領地内の親戚の所に行くのが普通なの。
道中、寄り道なんかもするから全体の行程は、二週間程度が普通ね。
婚姻した後に頂ける一か月の休養は、こんな風に旅行に使うか、屋敷から出ずに跡取りをつくる期間に充てるか……なのよね。
私の様にデビュタントしただけの未成年だったら、子どもの事はまだうるさく言われないのだけど……その期間だけ、白い結婚の方もいらっしゃるし。
成人して婚姻した人は大変だわ。
子どもが出来ないというだけで、捨て置かれる方もいると聞くもの。
「……で、いいか?」
「え? あっ、はい?」
しまった、旦那様の話を聞いてなかったわ。
「本当に、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。なんだか夫婦だという実感がまだ……」
ダメだわ、この話題。身の危険しか感じない。
目の前で旦那様がふ~ん? って、感じで見てるもの。
「まぁ良い。明後日にでも立とうと思うけど、かまわないか?」
「わたくしは、かまいませんが。旦那様のお兄様の方は……」
なんだか、物凄く急な話だから大丈夫なのかしら。
「以前からの約束で、了承の返事も貰っているから大丈夫だよ。向こうは今か今かと待っている状態だ。……って、なんだ? 旦那様って」
「え……あっ。夫婦になったのですし。エド様でなければ、旦那様かなって」
やっぱりエド様を、愛称で呼び捨てにするなんて私にはまだハードルが高すぎるわ。
それに、給仕係も侍女もいるんだし。
「様付はダメだって言わなかったか?」
様を付けない……旦那? って、何か違う呼び名になってしまうわ。
「でも、ここは二人っきりでは」
「ここにいるのは、うちの使用人だけだろう? 家族と変わらん」
家族……。そうか、だからここの使用人の方々はこんなにのびのびと誠実に働いているんだわ。
「はい。わかりました。エド」
私が呼び捨てで呼ぶと、嬉しそうに笑ってくれた。少し気恥ずかしい。
何はともあれ、旦那様……いえ、エドとの旅行だわ。楽しみ。
食事の間を出たら、すぐにでもケイシーに頼んで旅行の用意をしてもらわなくちゃ。
ケイシーも付いてくるのよね。
じゃあ、二人分の……。
パタパタと部屋を出て行こうとしたら、エドに肩を抱かれた。
「そんなに焦らなくても、ゆっくり戻れば良いだろう? マリー」
「え? でも」
「今回旅行に行くことは、もうケイシーたちには伝えてあるから」
あ……そうか。そうよね。
旅行の用意は急に出来るものでも無い。
もう行くつもりで段取りを組んでいたのだわ。
エドは、私の方を抱いていた手を私の手に移動させて、手を繋いでゆっくりお部屋まで戻った。
私たちは、朝食と言うか、お昼を食べながらお話していた。
今までもそうだったけど、厨房が一階にあるので一人で食べる時でなければ、一階の奥の一室を食事の部屋として、そこでご飯を食べる事にしていた。
子どもとかできた時、そういう習慣があった方が良いだろうと、私が婚約者として来た時から旦那様の提案でそうして来ていた。
夫婦になって、その言葉がリアリティを増してきているけど。
「旅行と言っても、同じマクファーレン領の兄の所だけどな。お屋敷自体には3~4日の滞在になるが」
「まぁ。新婚旅行ですのね。素敵だわ」
この世界、同じ国内とは言っても、王都以外はたいていどなたかが治めている土地なの。
だから、親しい友人の領地でも、普通の旅行ならまだしも、新婚旅行先には選ばない。
領地内の親戚の所に行くのが普通なの。
道中、寄り道なんかもするから全体の行程は、二週間程度が普通ね。
婚姻した後に頂ける一か月の休養は、こんな風に旅行に使うか、屋敷から出ずに跡取りをつくる期間に充てるか……なのよね。
私の様にデビュタントしただけの未成年だったら、子どもの事はまだうるさく言われないのだけど……その期間だけ、白い結婚の方もいらっしゃるし。
成人して婚姻した人は大変だわ。
子どもが出来ないというだけで、捨て置かれる方もいると聞くもの。
「……で、いいか?」
「え? あっ、はい?」
しまった、旦那様の話を聞いてなかったわ。
「本当に、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。なんだか夫婦だという実感がまだ……」
ダメだわ、この話題。身の危険しか感じない。
目の前で旦那様がふ~ん? って、感じで見てるもの。
「まぁ良い。明後日にでも立とうと思うけど、かまわないか?」
「わたくしは、かまいませんが。旦那様のお兄様の方は……」
なんだか、物凄く急な話だから大丈夫なのかしら。
「以前からの約束で、了承の返事も貰っているから大丈夫だよ。向こうは今か今かと待っている状態だ。……って、なんだ? 旦那様って」
「え……あっ。夫婦になったのですし。エド様でなければ、旦那様かなって」
やっぱりエド様を、愛称で呼び捨てにするなんて私にはまだハードルが高すぎるわ。
それに、給仕係も侍女もいるんだし。
「様付はダメだって言わなかったか?」
様を付けない……旦那? って、何か違う呼び名になってしまうわ。
「でも、ここは二人っきりでは」
「ここにいるのは、うちの使用人だけだろう? 家族と変わらん」
家族……。そうか、だからここの使用人の方々はこんなにのびのびと誠実に働いているんだわ。
「はい。わかりました。エド」
私が呼び捨てで呼ぶと、嬉しそうに笑ってくれた。少し気恥ずかしい。
何はともあれ、旦那様……いえ、エドとの旅行だわ。楽しみ。
食事の間を出たら、すぐにでもケイシーに頼んで旅行の用意をしてもらわなくちゃ。
ケイシーも付いてくるのよね。
じゃあ、二人分の……。
パタパタと部屋を出て行こうとしたら、エドに肩を抱かれた。
「そんなに焦らなくても、ゆっくり戻れば良いだろう? マリー」
「え? でも」
「今回旅行に行くことは、もうケイシーたちには伝えてあるから」
あ……そうか。そうよね。
旅行の用意は急に出来るものでも無い。
もう行くつもりで段取りを組んでいたのだわ。
エドは、私の方を抱いていた手を私の手に移動させて、手を繋いでゆっくりお部屋まで戻った。