第53話 王太子殿下と婦人会
文字数 1,519文字
王太子殿下の執務室の皆さんと昼食をとって、さぁ午後の仕事を始めましょう。……と思ったら、王太子殿下のご婚約者にして私の友人になったジョゼフィン・レンフィールド公爵令嬢がお茶会にいらしていたメンバーの方々を従えて執務室に乱入して来た。
いわゆる婦人会の乱入……だわね。
「どうしたんだい? ジョゼ。いかな婦人会といえど王 宮 の 表 、私の執務室に乱入するだなんてあまりに礼を欠いたことだとは思わないのかい?」
王太子殿下はジョゼ様率いる婦人会の乱入に冷静に対処していた。
まぁ、悪い言い方をすれば、王太子殿下は『女は家に引っ込んでろ』※って言っているのだけれど、まずいんじゃないかしら? 伝わるわ、ジョゼ様達にも。
「こちらにいらっしゃるのが殿方ばかりでしたら、そうでしょうね。ですが、ご婦人であるマリー様を朝から晩までその王 宮 の 表 に出され、仕事漬けにするなんて暴挙を見逃すわけには参りませんわ。しかも、婚礼の儀直前のご婦人を」
ジョゼ様もこの乱入と抗議は当然とばかりに言い募る。
「婦人会として正式に抗議文を出しても構わないと思ってますのよ。かよわいご婦人をこんな殿方ばかりのところで、殿方と同じ仕事をさせるなんて……しかも、一日中」
ジョゼ様、滅茶苦茶怒ってるよ、抗議文を出すなんて。
婦人会としての正式な抗議文。つまり、王太子殿下とその執務室のメンバーは一つでも対処を間違えば王宮侍女を含め貴族の女性全員を敵に回す……と言う事になる。
だいたい、執務室付きの王宮侍女だって午前と午後では人員を入れ替えているのだ、確かに私が一日中ここで仕事をするのは世間的にまずいのかもしれない。
私は楽しいのだけれど……いや、婦人会のお茶会とかよりは、百倍楽しいんだけど。
まずいわね、王太子殿下。あんな事をおっしゃるから……。
「グラントリー兄さま。婦人会の方々に謝罪された方がよろしいかと」
私は王太子殿下に言う。今だけは、何を言っても何をしても不敬にならないって言った言葉を信じて。
「マ……姫様、王太子殿下に何を」
エイベルお兄様が私に向かって抗議の声を上げた。エイベルお兄様も女性全員敵に回したい派なの?
「マリー、何を……」
王太子殿下も私の提案に戸惑っている。
「最初のグラントリー兄さまの言葉だと『女は家に引っ込んでろ』と聞こえてしまいますわ。これでは、ご婦人方に怒るなと言う方が無理というものでございます」
「そ……そんな風に聞こえていたのか」
王太子殿下が驚いている……って、わざとそう言う言い方を……するわけないか。
私より1つ年上なだけの、王太子殿下。私の周りが大人の男性ばかりだったから、女性に配慮ある言動は当然だと思っていたけど、まだ、経験値が足りてないのだわ。
女性の扱いが得意でなさそうなエド様ですら、こんな失態はしないものね。
「先ほどのは、失言だった。申し訳ない」
王太子殿下は素直に婦人会の女性たちに謝った。
飾り気のない謝罪だったが、本心からと見て取られ好感を持って受け入れられたようだ。
良かったわ。私の所為で、王太子殿下が女性の敵にならなくて。
結局、私は王宮侍女と同じ勤務時間。午前中だけ執務室で仕事をする事となり、何とその分の給金まで頂けることとなった。
「当たり前でしょ? 妹になったら何をさせても良いってものじゃ無いのよ」
とは、ジョゼ様の言葉なのだけども。
※西洋では『女は家に引っ込んでろ』ではなく、『女はキッチンに引っ込んでろ』と言う言葉を心無い男性は使っているようです。
いわゆる婦人会の乱入……だわね。
「どうしたんだい? ジョゼ。いかな婦人会といえど
王太子殿下はジョゼ様率いる婦人会の乱入に冷静に対処していた。
まぁ、悪い言い方をすれば、王太子殿下は『女は家に引っ込んでろ』※って言っているのだけれど、まずいんじゃないかしら? 伝わるわ、ジョゼ様達にも。
「こちらにいらっしゃるのが殿方ばかりでしたら、そうでしょうね。ですが、ご婦人であるマリー様を朝から晩までその
ジョゼ様もこの乱入と抗議は当然とばかりに言い募る。
「婦人会として正式に抗議文を出しても構わないと思ってますのよ。かよわいご婦人をこんな殿方ばかりのところで、殿方と同じ仕事をさせるなんて……しかも、一日中」
ジョゼ様、滅茶苦茶怒ってるよ、抗議文を出すなんて。
婦人会としての正式な抗議文。つまり、王太子殿下とその執務室のメンバーは一つでも対処を間違えば王宮侍女を含め貴族の女性全員を敵に回す……と言う事になる。
だいたい、執務室付きの王宮侍女だって午前と午後では人員を入れ替えているのだ、確かに私が一日中ここで仕事をするのは世間的にまずいのかもしれない。
私は楽しいのだけれど……いや、婦人会のお茶会とかよりは、百倍楽しいんだけど。
まずいわね、王太子殿下。あんな事をおっしゃるから……。
「グラントリー兄さま。婦人会の方々に謝罪された方がよろしいかと」
私は王太子殿下に言う。今だけは、何を言っても何をしても不敬にならないって言った言葉を信じて。
「マ……姫様、王太子殿下に何を」
エイベルお兄様が私に向かって抗議の声を上げた。エイベルお兄様も女性全員敵に回したい派なの?
「マリー、何を……」
王太子殿下も私の提案に戸惑っている。
「最初のグラントリー兄さまの言葉だと『女は家に引っ込んでろ』と聞こえてしまいますわ。これでは、ご婦人方に怒るなと言う方が無理というものでございます」
「そ……そんな風に聞こえていたのか」
王太子殿下が驚いている……って、わざとそう言う言い方を……するわけないか。
私より1つ年上なだけの、王太子殿下。私の周りが大人の男性ばかりだったから、女性に配慮ある言動は当然だと思っていたけど、まだ、経験値が足りてないのだわ。
女性の扱いが得意でなさそうなエド様ですら、こんな失態はしないものね。
「先ほどのは、失言だった。申し訳ない」
王太子殿下は素直に婦人会の女性たちに謝った。
飾り気のない謝罪だったが、本心からと見て取られ好感を持って受け入れられたようだ。
良かったわ。私の所為で、王太子殿下が女性の敵にならなくて。
結局、私は王宮侍女と同じ勤務時間。午前中だけ執務室で仕事をする事となり、何とその分の給金まで頂けることとなった。
「当たり前でしょ? 妹になったら何をさせても良いってものじゃ無いのよ」
とは、ジョゼ様の言葉なのだけども。
※西洋では『女は家に引っ込んでろ』ではなく、『女はキッチンに引っ込んでろ』と言う言葉を心無い男性は使っているようです。