第46話 メアリー様たちのお帰り後の婚礼準備
文字数 2,000文字
エド様と私にひたすら惚気を披露してくれたジョール様とメアリー様は2週間という短い期間だったけど、我がマクファーレン領を満喫して帰っていった。
メアリー様の置き土産は何と言っても刺繍。
私のウエディングドレスの刺繍用に凝った図案を書いてくれて、領内のお針子さんたちの指導までして帰ってくれた。
それと難航していた、お色直しのドレスも決まって……宝石や小物類……は、まぁすぐに決まるでしょう。費用は、うちの実家から出るのだけど、領内の娘さんたちが買えないものは最初から除外しているし、ドレスによってある程度決まっているからね。
こちらも、後は出来上がるのを待つばかりになってホッとしていた。
久しぶりにケイシーの入れてくれたお茶を飲んでのんびりしている。
メアリー様には、本当に惚気られたわ。だけど、何で……
「メアリー様は、何であんなにジョール様のそばでお顔を赤くしてたのかしら? 引っ込み思案だと言っても、私たちとは普通にお話していたし、エド様とお話しても平気そうだったのに」
「ケイシーには心当たりがありますわ、マリーお嬢様」
ケイシーが自分の事を私では無く、ケイシーと呼ぶときは私を元気づける時か自分の考えを主張したい時かのどちらかだけど……この場合、後者かな?
「心当たり?」
「ケイシーは見つけてしまいました。2年前、マリーお嬢様はこのご本を開けた途端、お屋敷の外まで逃げてしまわれましたわ」
ケイシーが私の手にその本を渡す。表紙には何も書いてない。
私は、意外と読書が好きだ、本は私の知らない世界を教えてくれるから。その私が、読みもせず開けた途端逃げた? 2年前?
「2年前というと、今のメアリー様と同じ年ね」
「ええ。メアリー様はこの本をご覧になった直後くらいにジョール様との縁談が決まったのではないでしょうか?」
「読んでも良いかしら」
「どうぞ。というか、もともとマリー様の教育のためのご本です。すぐに必要になりますから」
私の教育のため? すぐに必要になるって……。
私は、なにげなくその本を開いた。
バン! いや、つい思いっきり閉じてしまったよ。え? ええ? 何? これ?
「…………これ、読まないといけない? って言うか」
その後の言葉は続けられなかった。
「でも、それ簡単な医術書にも載っている物を、字の綺麗な方に清書してもらって高名な画家の方がこの本の為に描いたって……マリーお嬢様?」
顔が熱い。多分、今の私はメアリー様の事を言えないくらい、顔が真っ赤になっているんだと思う。だって、この本を読んだ後どんな顔をしてエド様に会えば良いの?
「別に、普通になさっていてよろしいんじゃないでしょうか?」
その日の午後に我が屋敷に到着した王宮の美容部隊……なんだかもう来るのが当たり前になってしまった……の、エイダが平然として言った。
その横で、エイダに付いて来ている他の王宮侍女たちがその本をみんなで読んでいるのだけど……。何でみんな平気なの?
「でも、このご本ここにもあったんですね」
「ああ。家庭教師の方、リンド夫人でしたね。じゃあ、王妃様が持たせたのですねぇ」
「王宮の王女様たちも同じご本ですものね。マリー様、良かったですね。王太子殿下のご婚約者様もこのご本をごらんになってるので話が合いますよ」
どんな話だ。どんなっ。
「各家庭によって、違うものなの?」
私はつい王宮侍女たちに訊いてしまっていた。
「内容は同じですけど、紙の質とか……一番違うのは絵ですね。文字の方は、字の綺麗な方はいくらでもいますけど、ここまで繊細に綺麗に描かれているとなると、さすが王室お抱えの画家だと思いますよ」
王室お抱えの画家……が、描いた本を投げ捨てて逃げちゃったんですけどね、私。
「まぁ、マリー様は気になさらずとも良いんじゃないですか? 月のものが来たばかりのお子様用のご本ですし」
「あっ、それよりもここの侍女たちに指導しとかないといけないですよね。ケイシー」
「はい」
私のエステの用意をしていたケイシーが振り返る。
「マリー様の身体のケアが済んだら、マリー様付きの侍女たちを呼んできて」
ケイシーは、ああって感じで「かしこまりました」と笑顔で答えていた。
※実は、令嬢の性教育本。ここだけ、日本の平安時代参照です。別にワイセツ物(春画)では無く教育本(巻物?)です。男性の方は本では無く添い伏しの儀がありましたから。
実は、向こうの映画とかで視ると婚姻の決まった令嬢に侍女が直接教えてるみたいなのですよね。ケイシーが教えるのも不自然な気がしたし、内容が大奥のいじめに似てたので、日本流の本で……って事にしました。
現代は家庭の医学書に載ってます。絵はすごく雑……最新のは知りませんが。
メアリー様の置き土産は何と言っても刺繍。
私のウエディングドレスの刺繍用に凝った図案を書いてくれて、領内のお針子さんたちの指導までして帰ってくれた。
それと難航していた、お色直しのドレスも決まって……宝石や小物類……は、まぁすぐに決まるでしょう。費用は、うちの実家から出るのだけど、領内の娘さんたちが買えないものは最初から除外しているし、ドレスによってある程度決まっているからね。
こちらも、後は出来上がるのを待つばかりになってホッとしていた。
久しぶりにケイシーの入れてくれたお茶を飲んでのんびりしている。
メアリー様には、本当に惚気られたわ。だけど、何で……
「メアリー様は、何であんなにジョール様のそばでお顔を赤くしてたのかしら? 引っ込み思案だと言っても、私たちとは普通にお話していたし、エド様とお話しても平気そうだったのに」
「ケイシーには心当たりがありますわ、マリーお嬢様」
ケイシーが自分の事を私では無く、ケイシーと呼ぶときは私を元気づける時か自分の考えを主張したい時かのどちらかだけど……この場合、後者かな?
「心当たり?」
「ケイシーは見つけてしまいました。2年前、マリーお嬢様はこのご本を開けた途端、お屋敷の外まで逃げてしまわれましたわ」
ケイシーが私の手にその本を渡す。表紙には何も書いてない。
私は、意外と読書が好きだ、本は私の知らない世界を教えてくれるから。その私が、読みもせず開けた途端逃げた? 2年前?
「2年前というと、今のメアリー様と同じ年ね」
「ええ。メアリー様はこの本をご覧になった直後くらいにジョール様との縁談が決まったのではないでしょうか?」
「読んでも良いかしら」
「どうぞ。というか、もともとマリー様の教育のためのご本です。すぐに必要になりますから」
私の教育のため? すぐに必要になるって……。
私は、なにげなくその本を開いた。
バン! いや、つい思いっきり閉じてしまったよ。え? ええ? 何? これ?
「…………これ、読まないといけない? って言うか」
その後の言葉は続けられなかった。
「でも、それ簡単な医術書にも載っている物を、字の綺麗な方に清書してもらって高名な画家の方がこの本の為に描いたって……マリーお嬢様?」
顔が熱い。多分、今の私はメアリー様の事を言えないくらい、顔が真っ赤になっているんだと思う。だって、この本を読んだ後どんな顔をしてエド様に会えば良いの?
「別に、普通になさっていてよろしいんじゃないでしょうか?」
その日の午後に我が屋敷に到着した王宮の美容部隊……なんだかもう来るのが当たり前になってしまった……の、エイダが平然として言った。
その横で、エイダに付いて来ている他の王宮侍女たちがその本をみんなで読んでいるのだけど……。何でみんな平気なの?
「でも、このご本ここにもあったんですね」
「ああ。家庭教師の方、リンド夫人でしたね。じゃあ、王妃様が持たせたのですねぇ」
「王宮の王女様たちも同じご本ですものね。マリー様、良かったですね。王太子殿下のご婚約者様もこのご本をごらんになってるので話が合いますよ」
どんな話だ。どんなっ。
「各家庭によって、違うものなの?」
私はつい王宮侍女たちに訊いてしまっていた。
「内容は同じですけど、紙の質とか……一番違うのは絵ですね。文字の方は、字の綺麗な方はいくらでもいますけど、ここまで繊細に綺麗に描かれているとなると、さすが王室お抱えの画家だと思いますよ」
王室お抱えの画家……が、描いた本を投げ捨てて逃げちゃったんですけどね、私。
「まぁ、マリー様は気になさらずとも良いんじゃないですか? 月のものが来たばかりのお子様用のご本ですし」
「あっ、それよりもここの侍女たちに指導しとかないといけないですよね。ケイシー」
「はい」
私のエステの用意をしていたケイシーが振り返る。
「マリー様の身体のケアが済んだら、マリー様付きの侍女たちを呼んできて」
ケイシーは、ああって感じで「かしこまりました」と笑顔で答えていた。
※実は、令嬢の性教育本。ここだけ、日本の平安時代参照です。別にワイセツ物(春画)では無く教育本(巻物?)です。男性の方は本では無く添い伏しの儀がありましたから。
実は、向こうの映画とかで視ると婚姻の決まった令嬢に侍女が直接教えてるみたいなのですよね。ケイシーが教えるのも不自然な気がしたし、内容が大奥のいじめに似てたので、日本流の本で……って事にしました。
現代は家庭の医学書に載ってます。絵はすごく雑……最新のは知りませんが。