第15話 マクファーレン家執事ジュードと領主エドモンド(エド側)
文字数 1,390文字
辺境警備の仕事から帰った後、エドマンドは執務室でジュードから報告を受けていた。
主な報告の内容は、新たに領地になった隣にある港町の事だ。
新しい領地は、しばらく領主がいなかった所為か、収支に不透明なところがある事と、港町だから多少は仕方無いと思っていたが、ごろつき連中もいるようだ。
ごろつきの方は、兵士や辺境警備の騎士を適当に見回らせたら何とかなるだろうが……運営を正常化させるのは、少し大変かも知れないなとエドマンドは思う。
港の方の領地の運営は、領地経営責任者補佐をさせているアンガス・ベリーに任せようと思っていたが、もう少し後になりそうだ。
「それと、奥様から、1階の奥、使用人が働いている場所に仕切りを作ってはどうかと提案がありました。旦那様の許可と予算の見積もりの依頼を受けておりますが、いかが致しましょう」
「仕切り?」
「今のままでは、お客様から見えてしまったときに、相手の方の身分によっては不敬罪と言われかねないと、おっしゃっておりました」
「ああ。それは、その通りだな。俺も一緒に見ようか?」
「いえ。奥様が、使い勝手やお屋敷全体バランスのもあるだろうから、現場の使用人達と話し合って作りたいと、おっしゃっていましたが……」
「ちょっと待て。さっきから奥様と言っているが、マリーのことを奥様と呼んでいるのか?」
「はい。帳簿を見ただけで領地の運営も把握できますし、改装も予算内に留められるよう、最初から使用人の意見を取り入れるよう提案されてます。帳簿はともかく、15歳で即座にこれだけのことを考えられるのでしたら、旦那様の留守も立派に守れるようになりましょう」
(なるほど、ジュードはマリーのことを認めたという訳か……)
「それにしても、奥様呼びは、まだ早くないか?」
「いえ、これから私と一緒に勉強していけば、一年と経たず一人前になれます」
私が立派に育てて見せます、とばかりにジュードは胸を張っているが……。
「そうじゃなくてな。まだ15歳だろ? 可哀想じゃないか。まだ、遊びたい盛りだろうし」
そう言うエドマンドをジュードはジト目で見てしまった。
「……婚約者様として連れて帰られたのですよね」
ジュードの問いにエドマンドは、明後日の方向を向いた。
「旦那様?」
「仕切りの件は、分かった。マリーに、任せる。ただ、あまり急かしてやるな。ゆっくり、ここに慣れてからで良いだろう?」
エドマンドの態度を訝しんでいたジュードだったが、それ以上の問答はせず、
「かしこまりました」
とだけ言って、礼を執り部屋を出て行った。
その扉を見ながらエドマンドは溜息を吐く。
自分が、この領地を父親から任されたのは、20歳の頃。
ジュードが付いていたとはいえ、領地の運営は大変だった。
それをまだ15歳のマリーに、奥方としての公務をさせるのは酷というものだ。
あんなに好奇心旺盛で、なんでも面白がるような性格なのだ。
今までだって、田舎に捨て置かれた分、自由に過ごして来たのだろう。
あまり、マリーを急かして逃げ出したいと思われても困る。
ん?……困る……のか?
いや、困るだろう。この婚約は、王妃命令だ。
婚姻関係の命令違反の処罰は、理由にもよるが最高刑で処刑だ。
そうなんだけど……な。本当に? それだけが理由か?
主な報告の内容は、新たに領地になった隣にある港町の事だ。
新しい領地は、しばらく領主がいなかった所為か、収支に不透明なところがある事と、港町だから多少は仕方無いと思っていたが、ごろつき連中もいるようだ。
ごろつきの方は、兵士や辺境警備の騎士を適当に見回らせたら何とかなるだろうが……運営を正常化させるのは、少し大変かも知れないなとエドマンドは思う。
港の方の領地の運営は、領地経営責任者補佐をさせているアンガス・ベリーに任せようと思っていたが、もう少し後になりそうだ。
「それと、奥様から、1階の奥、使用人が働いている場所に仕切りを作ってはどうかと提案がありました。旦那様の許可と予算の見積もりの依頼を受けておりますが、いかが致しましょう」
「仕切り?」
「今のままでは、お客様から見えてしまったときに、相手の方の身分によっては不敬罪と言われかねないと、おっしゃっておりました」
「ああ。それは、その通りだな。俺も一緒に見ようか?」
「いえ。奥様が、使い勝手やお屋敷全体バランスのもあるだろうから、現場の使用人達と話し合って作りたいと、おっしゃっていましたが……」
「ちょっと待て。さっきから奥様と言っているが、マリーのことを奥様と呼んでいるのか?」
「はい。帳簿を見ただけで領地の運営も把握できますし、改装も予算内に留められるよう、最初から使用人の意見を取り入れるよう提案されてます。帳簿はともかく、15歳で即座にこれだけのことを考えられるのでしたら、旦那様の留守も立派に守れるようになりましょう」
(なるほど、ジュードはマリーのことを認めたという訳か……)
「それにしても、奥様呼びは、まだ早くないか?」
「いえ、これから私と一緒に勉強していけば、一年と経たず一人前になれます」
私が立派に育てて見せます、とばかりにジュードは胸を張っているが……。
「そうじゃなくてな。まだ15歳だろ? 可哀想じゃないか。まだ、遊びたい盛りだろうし」
そう言うエドマンドをジュードはジト目で見てしまった。
「……婚約者様として連れて帰られたのですよね」
ジュードの問いにエドマンドは、明後日の方向を向いた。
「旦那様?」
「仕切りの件は、分かった。マリーに、任せる。ただ、あまり急かしてやるな。ゆっくり、ここに慣れてからで良いだろう?」
エドマンドの態度を訝しんでいたジュードだったが、それ以上の問答はせず、
「かしこまりました」
とだけ言って、礼を執り部屋を出て行った。
その扉を見ながらエドマンドは溜息を吐く。
自分が、この領地を父親から任されたのは、20歳の頃。
ジュードが付いていたとはいえ、領地の運営は大変だった。
それをまだ15歳のマリーに、奥方としての公務をさせるのは酷というものだ。
あんなに好奇心旺盛で、なんでも面白がるような性格なのだ。
今までだって、田舎に捨て置かれた分、自由に過ごして来たのだろう。
あまり、マリーを急かして逃げ出したいと思われても困る。
ん?……困る……のか?
いや、困るだろう。この婚約は、王妃命令だ。
婚姻関係の命令違反の処罰は、理由にもよるが最高刑で処刑だ。
そうなんだけど……な。本当に? それだけが理由か?