第7話 マクファーレン家の問題
文字数 1,704文字
「辛らつだな」
レナルド様がエドにそう言っている。
確かにねぇ。男性が触れる話題でも無いのに。
「別に、他意はないさ。屋敷の事は奥方の管轄 だからな。ただ、王室が動く前に何とかしたほうが良いのではないか?」
王室? 王妃様も、キャロライン様には苦言を呈 していたけど。
「もしくは、ウィンゲート家が動くか……」
エドが不穏な事を言っている。私の実家が動くって? 何で?
たかが、嫁と小姑の諍 いなのに。
ああ。ベアトリス様が、真っ青になっている。
「エド。わたくし、少し疲れたみたい」
私は事態を収拾すべく、エドに縋った。
だけど、反応したのはレナルド様。
「すまないね、気が付かなくて。お部屋に案内させよう」
そう言って、執事に指示を出している。
「こちらでございます」
エドがちゃんと付いてきてくれるか心配だったけど、私を気遣うように一緒に立ち上がってくれた。
「マリー。大丈夫か? すまなかったな」
そう言った後、再びレナルド様の方を向いてエドは言う。
「一応。助言はしたからな」
そして、自分の仕事は終わったとばかりに、私に付き添いゆっくり歩いて、応接室を出たのだった。
私たちは、客間に案内された。
ケイシーとベッキーは、続きの間の侍女が待機する場所に荷物を置いて、執事に連れられて行ってしまった。
ベッキーは、分からないけど、ケイシーは初めての屋敷だ。
こちらの侍女との顔つなぎをしておかないと、動きが取れないのだと思う。
王宮よりは手狭だけど、一応上位貴族が泊まる事を想定したお部屋だわ。
「あの、エド? わたくし状況が良くわからなくて、どうして良いのか分からないのですけど」
話してくれるかな……。もう、婚姻を結んだのだもの。
エドの問題は、私の問題でもあるよね。
だけど、エドはう~んと考え込んでいるようだわ。
「関係無い……とは、言えないな。本来、俺たちには関係の無い。兄貴たちが解決しないといけない問題なのだけどな」
エドはソファーに座り、ちょいちょいと私を呼びよせる。
珍しいわ。エドがこんな風に、私を呼びよせるのって。
そう思いながら、隣に座った。少し離れて座ったのに、エドは私をグイっと抱き寄せた。
「状況を説明するとだな。親父たちは嫡男夫婦を王都の屋敷に入れぬようにして、俺とマリーを住まわせたいのだと思う」
「え? えっと。ご当主様とキャロライン様が……ですか?」
「今では俺の方が、爵位が上だからな。しかも、初代だ。だから、嫡男に代わってマクファーレン家当主を引き継いで欲しいのだろうけど」
なんでまた……、そんな。
「もしかしたら、辺境伯の爵位の為……ですか? でも、そんな事をしても今のご当主様の爵位は変わらないと思いますけど……」
うん。絶対変わらない。伯爵家とか公爵家とか、便宜上言うけれど、爵位自体は本人のものだもの。
「親父は……な。問題はキャロラインの方だ。実家の爵位は高い方が良いと思っている。だから、王妃様もそちらに文句を言っていただろう?」
「そうですね」
だとしたら、私は何をしたら良いのかしら?
「まぁ。しばらくは、関係ないさ。マリーもそういう事情があるとだけ、覚えてくれたらいい」
「エド?」
エドは、私の頬にかすめるようなキスをして、耳元で言う。
「王都での、俺たちの屋敷も出来る事だし。あっちから、ちょっかいをかけられ無ければ、本当に俺たちには関係ないからな」
あら。本当に、そんな話が進んでいるのね。じゃなくて……。
「本当に、良いんですの? 私の為じゃなくて」
「マリーの仕事じゃ無いだろう? 人の仕事を取るものじゃない」
そっか、そうだよね。エドは、ベアトリス様の仕事だと言いたいのだわ。
レナルド様に、事態を伝えるまでが私たちの仕事で、後は純粋に新婚旅行として楽しんで良いのよね。
「ここはな。大きな川が流れていて、川魚なんかも採れるんだぞ」
エドが、気分を変えるように私に言ってきた。
「本当ですの? わたくし、楽しみだわ」
だから私も、気持ちを切り替える。
「明日にでも、行こうな」
エドの提案に、私はもう明日の魚釣りのことしか考えられなくなってしまった。
明日が楽しみだわ。
レナルド様がエドにそう言っている。
確かにねぇ。男性が触れる話題でも無いのに。
「別に、他意はないさ。屋敷の事は奥方の
王室? 王妃様も、キャロライン様には苦言を
「もしくは、ウィンゲート家が動くか……」
エドが不穏な事を言っている。私の実家が動くって? 何で?
たかが、嫁と小姑の
ああ。ベアトリス様が、真っ青になっている。
「エド。わたくし、少し疲れたみたい」
私は事態を収拾すべく、エドに縋った。
だけど、反応したのはレナルド様。
「すまないね、気が付かなくて。お部屋に案内させよう」
そう言って、執事に指示を出している。
「こちらでございます」
エドがちゃんと付いてきてくれるか心配だったけど、私を気遣うように一緒に立ち上がってくれた。
「マリー。大丈夫か? すまなかったな」
そう言った後、再びレナルド様の方を向いてエドは言う。
「一応。助言はしたからな」
そして、自分の仕事は終わったとばかりに、私に付き添いゆっくり歩いて、応接室を出たのだった。
私たちは、客間に案内された。
ケイシーとベッキーは、続きの間の侍女が待機する場所に荷物を置いて、執事に連れられて行ってしまった。
ベッキーは、分からないけど、ケイシーは初めての屋敷だ。
こちらの侍女との顔つなぎをしておかないと、動きが取れないのだと思う。
王宮よりは手狭だけど、一応上位貴族が泊まる事を想定したお部屋だわ。
「あの、エド? わたくし状況が良くわからなくて、どうして良いのか分からないのですけど」
話してくれるかな……。もう、婚姻を結んだのだもの。
エドの問題は、私の問題でもあるよね。
だけど、エドはう~んと考え込んでいるようだわ。
「関係無い……とは、言えないな。本来、俺たちには関係の無い。兄貴たちが解決しないといけない問題なのだけどな」
エドはソファーに座り、ちょいちょいと私を呼びよせる。
珍しいわ。エドがこんな風に、私を呼びよせるのって。
そう思いながら、隣に座った。少し離れて座ったのに、エドは私をグイっと抱き寄せた。
「状況を説明するとだな。親父たちは嫡男夫婦を王都の屋敷に入れぬようにして、俺とマリーを住まわせたいのだと思う」
「え? えっと。ご当主様とキャロライン様が……ですか?」
「今では俺の方が、爵位が上だからな。しかも、初代だ。だから、嫡男に代わってマクファーレン家当主を引き継いで欲しいのだろうけど」
なんでまた……、そんな。
「もしかしたら、辺境伯の爵位の為……ですか? でも、そんな事をしても今のご当主様の爵位は変わらないと思いますけど……」
うん。絶対変わらない。伯爵家とか公爵家とか、便宜上言うけれど、爵位自体は本人のものだもの。
「親父は……な。問題はキャロラインの方だ。実家の爵位は高い方が良いと思っている。だから、王妃様もそちらに文句を言っていただろう?」
「そうですね」
だとしたら、私は何をしたら良いのかしら?
「まぁ。しばらくは、関係ないさ。マリーもそういう事情があるとだけ、覚えてくれたらいい」
「エド?」
エドは、私の頬にかすめるようなキスをして、耳元で言う。
「王都での、俺たちの屋敷も出来る事だし。あっちから、ちょっかいをかけられ無ければ、本当に俺たちには関係ないからな」
あら。本当に、そんな話が進んでいるのね。じゃなくて……。
「本当に、良いんですの? 私の為じゃなくて」
「マリーの仕事じゃ無いだろう? 人の仕事を取るものじゃない」
そっか、そうだよね。エドは、ベアトリス様の仕事だと言いたいのだわ。
レナルド様に、事態を伝えるまでが私たちの仕事で、後は純粋に新婚旅行として楽しんで良いのよね。
「ここはな。大きな川が流れていて、川魚なんかも採れるんだぞ」
エドが、気分を変えるように私に言ってきた。
「本当ですの? わたくし、楽しみだわ」
だから私も、気持ちを切り替える。
「明日にでも、行こうな」
エドの提案に、私はもう明日の魚釣りのことしか考えられなくなってしまった。
明日が楽しみだわ。