第12話 孤児院への慰問
文字数 2,134文字
「ようこそお越しくださいました。ご領主様。奥様」
孤児院を管理している女性、サマンサが礼を執り挨拶をしてくれる。
この女性は、ケイシーと似たような境遇で、家から出され途方に暮れているところを、エドがこちらに勧誘したらしい。
年齢もケイシーと同じくらいで20代半ばなのだそうだ。
「ああ。久しいな。何か困った事はないか?」
エドが挨拶を返していた。
「特にはございません。これも、ご領主様がいつも気にかけて下さっているおかげです」
サマンサの横には、子どもたちが5人。
私たちが来ると言うので、おそろいの余所行きの服を着せられていた。
うん。子どもたちも元気そう。建物の方は……、専門の方に見てもらわないと私じゃ分からないわ。
私がそう考えている内に、ケイシーが子どもたちにお土産のお菓子を配っていた。
お偉方の慰問の際、子ども達は最初の挨拶だけして部屋へ戻って行く場合が多いから、このタイミングじゃ無いと直接渡せないのよね。
今日ここへ来たのは、エドとケイシーと私。
まぁ、護衛の方々は外で待機しているけど……。
ビリーが管理している港側より先に、元の領地の方を優先させたのは、エドから任された孤児院の運営を管理するようになる私をサマンサに紹介する為。
管理すると言っても、ほとんどはこのサマンサと領地経営責任者補佐のアンガス・ベリーがするのだけどね。
どこの領地も、名目上は女主人がしていることになっているから。
ちなみに王都は、王妃様の管理下で運営されていることになっているし。
バザーなんかは、婦人会主催だし、領地だと奥方が主催するものだから。
「ああ。これからは私の妻となったマリーが、ここと港側の孤児院の運営を見る事になったからな。何かあればマリーに相談するように」
エドがそう言うと、え? っという顔でサマンサがエドを見た。
「マリー・マクファーレンです。困る事があれば、いつでもわたくしの方へ言ってね。出来る限り善処させてもらうから」
「はい。ありがとう存じます。立ち話も何ですから、どうぞこちらのお部屋へ。今、お茶をお入れいたします」
なんだろう? そそくさと奥に引っ込んじゃった。
まぁ、侍女も居ないからお茶は自分で入れるしか無いのだろうけど。
「ケイシー。あなた、お茶を入れるのを手伝ってらっしゃい」
「かしこまりました」
私が指示をするとケイシーも、奥に引っ込む。
「応接室なんて、あるんですね」
王都の孤児院の来賓室 も、こんなに立派では無いと思うのだけど。
エドは勝手知ったるという感じで、応接室に私を連れて行き座った。
「ああ。俺以外の貴族も来ることがあるし。子どもを引き取りたいと願い出る夫婦もいるからな。マリーも座ったらどうだ?」
ソファーの自分の横をポンポンと叩いている。
横に座れって言う事ですね。
「夫婦限定なのですか?」
「ん? ああ。子どもが出来ない夫婦限定。ちゃんと身元も調べて問題がない事を確認してからだな。自分の子どもとして、愛してもらわないと困る」
なるほど……。そうよね、子どもは愛情を受けて育つべきだわ。
私たちが雑談していると、お茶の用意をしてサマンサとケイシーが入って来た。
ケイシーは、入ってすぐに私たちが座っている後ろに立つ。
「お口に合うかどうかわかりませんが」
お菓子を出し。紅茶を入れてくれる。
手慣れているというか、どこかで訓練を受けたような所作だわ。
「サマンサは、お茶を入れるのが上手なのね」
私は口を付けてから、そう訊いてみた。お茶自体も、かなり美味しい。
「ありがとうございます、奥様。孤児院を任される前に、ご領主さまのお屋敷で訓練を受けました」
なるほど、ビリーと同じ経緯ね。貴族も相手にしないといけないから、侍女程度のマナーは仕込まれたのね。
「随分と子どもの数も減ったな」
サマンサが席に着き、エドも紅茶を飲んでから訊いてる。
「ええ。ここ2~3年の内に、前からいた子ども達は成人して巣立っていきましたから」
「そうだったな。俺がここを引き継いだ時は、飢饉の後で酷い状態だったから……」
「ええ。でも、子ども達もご領主さまのおかげで、無事に親が住んでいた場所へ戻って行けましたわ」
「当然だろう? 元々、自分の土地なのだ。親が管理していた田畑も元通りにして返してやれてよかった」
貴族は元々、平民を自分と同じ人間だと思っていない人も多い。
エドが、当然と言った事をしないのが当たり前の世界だもの。
本当にすごいと思うわ。
「さて。近況も聞けたし。そろそろ戻るか」
エドは私の方を見て言う。
「そうですね」
とエド様の方を見て言い、サマンサに向き直って
「今日は有意義な時間を過ごせたわ。孤児院の事で問題が起きたら、一緒に考えていきましょうね」
そう挨拶をして、エドと一緒に立ち上がって出口へ向かおうとした。
「今日は、ありがとうございました。また、お越しくださいませ、ご領主様」
サマンサは、エドの側にスルッと近づいて行って挨拶をしている。
ん? 私、さりげなく無視された感じ?
エドが先に建物から外に出ている……いえ、それは良いのだけれど。
気になって後ろを振り返ったら、サマンサから、プィっとそっぽを向かれてしまった。
孤児院を管理している女性、サマンサが礼を執り挨拶をしてくれる。
この女性は、ケイシーと似たような境遇で、家から出され途方に暮れているところを、エドがこちらに勧誘したらしい。
年齢もケイシーと同じくらいで20代半ばなのだそうだ。
「ああ。久しいな。何か困った事はないか?」
エドが挨拶を返していた。
「特にはございません。これも、ご領主様がいつも気にかけて下さっているおかげです」
サマンサの横には、子どもたちが5人。
私たちが来ると言うので、おそろいの余所行きの服を着せられていた。
うん。子どもたちも元気そう。建物の方は……、専門の方に見てもらわないと私じゃ分からないわ。
私がそう考えている内に、ケイシーが子どもたちにお土産のお菓子を配っていた。
お偉方の慰問の際、子ども達は最初の挨拶だけして部屋へ戻って行く場合が多いから、このタイミングじゃ無いと直接渡せないのよね。
今日ここへ来たのは、エドとケイシーと私。
まぁ、護衛の方々は外で待機しているけど……。
ビリーが管理している港側より先に、元の領地の方を優先させたのは、エドから任された孤児院の運営を管理するようになる私をサマンサに紹介する為。
管理すると言っても、ほとんどはこのサマンサと領地経営責任者補佐のアンガス・ベリーがするのだけどね。
どこの領地も、名目上は女主人がしていることになっているから。
ちなみに王都は、王妃様の管理下で運営されていることになっているし。
バザーなんかは、婦人会主催だし、領地だと奥方が主催するものだから。
「ああ。これからは私の妻となったマリーが、ここと港側の孤児院の運営を見る事になったからな。何かあればマリーに相談するように」
エドがそう言うと、え? っという顔でサマンサがエドを見た。
「マリー・マクファーレンです。困る事があれば、いつでもわたくしの方へ言ってね。出来る限り善処させてもらうから」
「はい。ありがとう存じます。立ち話も何ですから、どうぞこちらのお部屋へ。今、お茶をお入れいたします」
なんだろう? そそくさと奥に引っ込んじゃった。
まぁ、侍女も居ないからお茶は自分で入れるしか無いのだろうけど。
「ケイシー。あなた、お茶を入れるのを手伝ってらっしゃい」
「かしこまりました」
私が指示をするとケイシーも、奥に引っ込む。
「応接室なんて、あるんですね」
王都の孤児院の
エドは勝手知ったるという感じで、応接室に私を連れて行き座った。
「ああ。俺以外の貴族も来ることがあるし。子どもを引き取りたいと願い出る夫婦もいるからな。マリーも座ったらどうだ?」
ソファーの自分の横をポンポンと叩いている。
横に座れって言う事ですね。
「夫婦限定なのですか?」
「ん? ああ。子どもが出来ない夫婦限定。ちゃんと身元も調べて問題がない事を確認してからだな。自分の子どもとして、愛してもらわないと困る」
なるほど……。そうよね、子どもは愛情を受けて育つべきだわ。
私たちが雑談していると、お茶の用意をしてサマンサとケイシーが入って来た。
ケイシーは、入ってすぐに私たちが座っている後ろに立つ。
「お口に合うかどうかわかりませんが」
お菓子を出し。紅茶を入れてくれる。
手慣れているというか、どこかで訓練を受けたような所作だわ。
「サマンサは、お茶を入れるのが上手なのね」
私は口を付けてから、そう訊いてみた。お茶自体も、かなり美味しい。
「ありがとうございます、奥様。孤児院を任される前に、ご領主さまのお屋敷で訓練を受けました」
なるほど、ビリーと同じ経緯ね。貴族も相手にしないといけないから、侍女程度のマナーは仕込まれたのね。
「随分と子どもの数も減ったな」
サマンサが席に着き、エドも紅茶を飲んでから訊いてる。
「ええ。ここ2~3年の内に、前からいた子ども達は成人して巣立っていきましたから」
「そうだったな。俺がここを引き継いだ時は、飢饉の後で酷い状態だったから……」
「ええ。でも、子ども達もご領主さまのおかげで、無事に親が住んでいた場所へ戻って行けましたわ」
「当然だろう? 元々、自分の土地なのだ。親が管理していた田畑も元通りにして返してやれてよかった」
貴族は元々、平民を自分と同じ人間だと思っていない人も多い。
エドが、当然と言った事をしないのが当たり前の世界だもの。
本当にすごいと思うわ。
「さて。近況も聞けたし。そろそろ戻るか」
エドは私の方を見て言う。
「そうですね」
とエド様の方を見て言い、サマンサに向き直って
「今日は有意義な時間を過ごせたわ。孤児院の事で問題が起きたら、一緒に考えていきましょうね」
そう挨拶をして、エドと一緒に立ち上がって出口へ向かおうとした。
「今日は、ありがとうございました。また、お越しくださいませ、ご領主様」
サマンサは、エドの側にスルッと近づいて行って挨拶をしている。
ん? 私、さりげなく無視された感じ?
エドが先に建物から外に出ている……いえ、それは良いのだけれど。
気になって後ろを振り返ったら、サマンサから、プィっとそっぽを向かれてしまった。