第29話 事件現場とエド様との時間
文字数 1,380文字
少し時はさかのぼって、港の路地裏の事件現場。
港の領地の路地裏で、トム・エフィンジャーが去った直後、エド様率いる騎士団の方々がやって来ていた。
少し広めの路地裏は、改めて見ると惨劇の後という言葉を当てはめるにふさわしい状態になっている。
街のゴロツキの斬殺死体は3つも転がっているし、騎士団の騎士も剣を抜いたまま無傷で死んでいた。
そして領主の婚約者はその場にへたり込み、呆然と立っている丸腰の青年一人。
騎士団の騎士達はこの惨状に一瞬、唖然としてしまっていた。
だが、即座に仕事を始める。
私は、エド様を見つけなんとか立とうと頑張った。
でも、その努力の途中でエド様に抱き上げられ、そのまま抱きしめられてしまった。
「良かった。無事だったか」
私は、その腕の中で、自分がいかに緊張してたか、怖かったかが分かった。
だって、身体が震えてる。涙が、止まらない。
私は子どものように、声をあげて泣いてしまった。
結局、エド様は私たちを罪に問うつもりは無く。
簡単に事の成り行きを聞き、無関係の人に絶対見せられぬ『トム・エフィンジャー』からの書類を見せるために、地下の取調室に私たちを連れて来たという訳だった。
取りあえず、ビリーは5階の使用人部屋をもらい、執事のジュード・ウォリナーから、貴族と相対する時の立ち振る舞いや帳簿の見方、孤児院運営の指導を受けるらしい。
孤児院は、貴族が寄付をしたり物品を融通したり、奉仕の対象にしているため領地外からでも視察にやって来ることがある。
その時に、子どもたちはともかく責任者が貴族としての立ち振る舞いが出来なければお話にならないからだ。
私は、エド様と私の部屋で寛いでいた。
紅茶を目の前に、エド様からもらったネックレスの残骸を見つめる。
「せっかくエド様から頂いたのに……」
「そのおかげで、マリーが助かったんだ。欲しいなら、また買うさ」
「でも、初めての贈り物でしたのよ」
横に座っているエド様が私の頭を撫でる。
「だけどな、それが発動してくれたおかげで、マリーを見つけることが出来た。王妃様の魔法のおかげだ。仕方無いんだよ。魔法を付与するにはもろすぎたのだから……」
「王妃様は、魔法を使えるのですか?」
「ああ、使える。それが、王妃になる条件だからな。魔法を使って戦争に出るのが……」
私には、魔力なんて無い。なんだ、だからなれなかったのか……。
少し、ホッとした。
エド様が私を横抱きにし、頭をこつんとあてる。
「もう今回のようなことはごめんだぞ。路地裏のあの惨劇の中にマリーの姿を見つけたときは、息が止まるかと思った」
「エド様?」
「頼むからもう大人しくしていてくれ」
う~ん、無理かも……。
「今、無理って思わなかったか?」
「…………いえ、そんなことは……ど、努力しますわ」
エド様から、本当にかぁ? って顔をされてしまった。
エド様といい、ビリーといい何でこう、皆、疑り深いの?
この分だったら、あれはエド様には言わない方が良いかもね。
ビリーにも、聞えてなかったみたいだし……トム・エフィンジャーから言われたあの言葉。
『お前、もう少し大人になったら俺のもんにならねぇか?』
絶対。ぜえ~ったい、お断りですからね。
港の領地の路地裏で、トム・エフィンジャーが去った直後、エド様率いる騎士団の方々がやって来ていた。
少し広めの路地裏は、改めて見ると惨劇の後という言葉を当てはめるにふさわしい状態になっている。
街のゴロツキの斬殺死体は3つも転がっているし、騎士団の騎士も剣を抜いたまま無傷で死んでいた。
そして領主の婚約者はその場にへたり込み、呆然と立っている丸腰の青年一人。
騎士団の騎士達はこの惨状に一瞬、唖然としてしまっていた。
だが、即座に仕事を始める。
私は、エド様を見つけなんとか立とうと頑張った。
でも、その努力の途中でエド様に抱き上げられ、そのまま抱きしめられてしまった。
「良かった。無事だったか」
私は、その腕の中で、自分がいかに緊張してたか、怖かったかが分かった。
だって、身体が震えてる。涙が、止まらない。
私は子どものように、声をあげて泣いてしまった。
結局、エド様は私たちを罪に問うつもりは無く。
簡単に事の成り行きを聞き、無関係の人に絶対見せられぬ『トム・エフィンジャー』からの書類を見せるために、地下の取調室に私たちを連れて来たという訳だった。
取りあえず、ビリーは5階の使用人部屋をもらい、執事のジュード・ウォリナーから、貴族と相対する時の立ち振る舞いや帳簿の見方、孤児院運営の指導を受けるらしい。
孤児院は、貴族が寄付をしたり物品を融通したり、奉仕の対象にしているため領地外からでも視察にやって来ることがある。
その時に、子どもたちはともかく責任者が貴族としての立ち振る舞いが出来なければお話にならないからだ。
私は、エド様と私の部屋で寛いでいた。
紅茶を目の前に、エド様からもらったネックレスの残骸を見つめる。
「せっかくエド様から頂いたのに……」
「そのおかげで、マリーが助かったんだ。欲しいなら、また買うさ」
「でも、初めての贈り物でしたのよ」
横に座っているエド様が私の頭を撫でる。
「だけどな、それが発動してくれたおかげで、マリーを見つけることが出来た。王妃様の魔法のおかげだ。仕方無いんだよ。魔法を付与するにはもろすぎたのだから……」
「王妃様は、魔法を使えるのですか?」
「ああ、使える。それが、王妃になる条件だからな。魔法を使って戦争に出るのが……」
私には、魔力なんて無い。なんだ、だからなれなかったのか……。
少し、ホッとした。
エド様が私を横抱きにし、頭をこつんとあてる。
「もう今回のようなことはごめんだぞ。路地裏のあの惨劇の中にマリーの姿を見つけたときは、息が止まるかと思った」
「エド様?」
「頼むからもう大人しくしていてくれ」
う~ん、無理かも……。
「今、無理って思わなかったか?」
「…………いえ、そんなことは……ど、努力しますわ」
エド様から、本当にかぁ? って顔をされてしまった。
エド様といい、ビリーといい何でこう、皆、疑り深いの?
この分だったら、あれはエド様には言わない方が良いかもね。
ビリーにも、聞えてなかったみたいだし……トム・エフィンジャーから言われたあの言葉。
『お前、もう少し大人になったら俺のもんにならねぇか?』
絶対。ぜえ~ったい、お断りですからね。