第31話 昨晩の続きのお話

文字数 919文字

「え? 今なんて……」
 朝の気だるいベッドの中で、エドが言った事を私は訊き返していた。
「あ~。まぁ、何だ。ボブとサマンサの事はあまり突いてやるな」
 そう言いながら、エドはもうベッドから出て着替えているけど……。

「……はい。エドがそう言うのであれば」
「なんだ? 不満そうだな」
 声に出ちゃってたかな。
 不満という訳では無いし、他人の恋愛事情に首を突っ込むなんて、野暮以外の何物でもないのだけれど。
 だけど、何かすっきりしない。

 ボブと恋仲なのに何でエドに気があるような態度をしているのか……とか。
 何と言うか……そう、不誠実。誠実さが足りないと思ってしまうのだわ。

「すみません。サマンサの態度が気になってました。でも、大丈夫です。エドがそう言うのなら、もう気にしない事にします」
 私は笑顔でそう言ったのに、エドはなんだかため息を吐いていた。

「すまないな、マリー。事情があるんだ」
「事情、ですか?」
 着替え終わったエドが、ベッドに戻って来た。
 2人きりの部屋でも、警戒しなければならない話って事?

「サマンサが管理している孤児院が閉鎖されてしまったら、彼女の身分は男爵令嬢に戻る。そうすると、()()()()()()サマンサは男爵家に連れ戻されてしまうんだ」
 何も無ければ……って。ああ、そうか。
「だから、サマンサはエドに気のあるふりをしているのですね」
 なるほど、なるほど。

「イヤになるくらい、察しが良いな」
 何だかボソッと、エドが言っているけど。
 それは、褒めて下さっているのよね。
「分かりましたわ。この事は誰にも……ケイシーにもしゃべりませんわ。お家騒動にもかかわっているのでしょうから」
 うんうん、きっとそう。
「それなら、孤児院閉鎖後はこちらの侍女として、迎えた方が良いですわよね。大丈夫ですわ。わたくし、女主人としてちゃんと頑張りますから」
 そう言って、私は着替えるためにベッドを出て立ち上がった。

 即座にエドに抱きしめられたけど。
「すまんな」
「いいえ」
 何を謝っているのだか……。

 エドには、()()()()()とは言ったけど……。
 今後の展開としては、色々と考えないといけないのかもしれない。

 エドの愛妾なんて、考えただけでも胸が痛くなるのだけれども。
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