第18話 教育のお話 計画とエドの執務室
文字数 1,375文字
マクファーレン領の教育機関は2つあるわ。
一つは、読み書き計算やこの領地で暮らすための簡単な法律 を教えるの。
だいたい8歳くらいから2年間かしら。
この教育は、領民の子どもに対して必ず行わなければならないと国が定めているので、どの領地でも同じことを教えている……はず。
もう一つは、その上の教育で、その学校で成績が優秀だったら、王都の平民が通える王立学園、文官の学園か武官の学園へ領主の推薦状を持っての受験が可能なの。
推薦だけで入学できないところが、賢者様の国、ハーボルト王国らしいと言うかなんというか……。
ああ、でも平民は受かりさえすれば学費や寮費、学生の間の生活費も国が賄ってくれるのよ。
多分ね。
ストリートキッズの中でも幼い子たちは、他の道も選べるし、勉強すれば下級文官の道もあるのだと思う。
でも、ドムやヘンリーはなかなか難しいのではないかと思うのよ。
そこで、この学園の武官の方の学園への受験を勧めるという事を思い付いたの。
「教育は、何も受けてない状態だから、孤児院の方に教師をまわそうと思っていたが……。実技はどうするんだ?」
ここはエドの執務室。
エドはデスクで私が作成した書類を手に話を聞いてくれていた。
ちなみに私は、使用人や部下がするようにデスクの前に立っている。
ドムたちに話す前に、エドの許可を取ろうと思って計画の書類作成をし、話をしたらそう言われた。
「それに、領地での上の教育は、学校に通う事が絶対条件なんだが」
「そう……なんですか……」
意外にもエドが厳しい態度で言ってきた。
私に対してはいつも甘かったから、少し驚いている。
「騎士団に入るにしろ、衛兵になるにしろ、軍と言うのは規律正しく行動できない者は入れない。学校の決まりを守り、人間関係にも気を配る。それくらいの事が出来ないようなら、やっていけないだろう」
それは、その通りだと私も思う。
推薦をすると言う事は、その人に対して責任を負うという事だもの。
「では、国が定めた教育の方は、孤児院内でして頂けるのですね」
私は姿勢を正し訊く。
書類の方には上の教育も孤児院内でと書いていたのだけど、あきらめる事にした。
「それは当然だ。人間関係以前に、8歳児の中にあの二人を入れるわけにはいかないだろう。それに、他の子にしても偏見を受けかねないからな」
まぁ、14歳のドムと12歳のヘンリーを入れるわけにはいかないわよね。
言わなくても、盗みをしていた子と同じ学び舎で……なんてと、他の子どもの親から反発を受ける事も想定内に入っているなんて、少し嬉しくなってしまう。
本当にエドって外見と違って、いろんなところに気を配れる方だわ。失礼なんだけどね。
「何が嬉しくて笑っているのか知らんが……」
あっ。エドが怪訝そうな顔をして私を見ている。
「実技の方はこちらで考えるから、本人たちの意志を確認して来い」
え?
「良いんですか?」
「将来の選択肢としては、最良だろう。学園も実技の成績が良ければ、学力面は普通でも入学は出来るからな」
「ありがとうございます。エド、大好き」
そう言って、私は満面の笑みで(多分)執務室を出て行った。
だから、私が出て行ったその後で
「…………色々、反則だろう? マリー」
とつぶやいたのは、部屋に残った侍女イライザ・ヘイマーしか聞いていなかった。
一つは、読み書き計算やこの領地で暮らすための簡単な
だいたい8歳くらいから2年間かしら。
この教育は、領民の子どもに対して必ず行わなければならないと国が定めているので、どの領地でも同じことを教えている……はず。
もう一つは、その上の教育で、その学校で成績が優秀だったら、王都の平民が通える王立学園、文官の学園か武官の学園へ領主の推薦状を持っての受験が可能なの。
推薦だけで入学できないところが、賢者様の国、ハーボルト王国らしいと言うかなんというか……。
ああ、でも平民は受かりさえすれば学費や寮費、学生の間の生活費も国が賄ってくれるのよ。
多分ね。
ストリートキッズの中でも幼い子たちは、他の道も選べるし、勉強すれば下級文官の道もあるのだと思う。
でも、ドムやヘンリーはなかなか難しいのではないかと思うのよ。
そこで、この学園の武官の方の学園への受験を勧めるという事を思い付いたの。
「教育は、何も受けてない状態だから、孤児院の方に教師をまわそうと思っていたが……。実技はどうするんだ?」
ここはエドの執務室。
エドはデスクで私が作成した書類を手に話を聞いてくれていた。
ちなみに私は、使用人や部下がするようにデスクの前に立っている。
ドムたちに話す前に、エドの許可を取ろうと思って計画の書類作成をし、話をしたらそう言われた。
「それに、領地での上の教育は、学校に通う事が絶対条件なんだが」
「そう……なんですか……」
意外にもエドが厳しい態度で言ってきた。
私に対してはいつも甘かったから、少し驚いている。
「騎士団に入るにしろ、衛兵になるにしろ、軍と言うのは規律正しく行動できない者は入れない。学校の決まりを守り、人間関係にも気を配る。それくらいの事が出来ないようなら、やっていけないだろう」
それは、その通りだと私も思う。
推薦をすると言う事は、その人に対して責任を負うという事だもの。
「では、国が定めた教育の方は、孤児院内でして頂けるのですね」
私は姿勢を正し訊く。
書類の方には上の教育も孤児院内でと書いていたのだけど、あきらめる事にした。
「それは当然だ。人間関係以前に、8歳児の中にあの二人を入れるわけにはいかないだろう。それに、他の子にしても偏見を受けかねないからな」
まぁ、14歳のドムと12歳のヘンリーを入れるわけにはいかないわよね。
言わなくても、盗みをしていた子と同じ学び舎で……なんてと、他の子どもの親から反発を受ける事も想定内に入っているなんて、少し嬉しくなってしまう。
本当にエドって外見と違って、いろんなところに気を配れる方だわ。失礼なんだけどね。
「何が嬉しくて笑っているのか知らんが……」
あっ。エドが怪訝そうな顔をして私を見ている。
「実技の方はこちらで考えるから、本人たちの意志を確認して来い」
え?
「良いんですか?」
「将来の選択肢としては、最良だろう。学園も実技の成績が良ければ、学力面は普通でも入学は出来るからな」
「ありがとうございます。エド、大好き」
そう言って、私は満面の笑みで(多分)執務室を出て行った。
だから、私が出て行ったその後で
「…………色々、反則だろう? マリー」
とつぶやいたのは、部屋に残った侍女イライザ・ヘイマーしか聞いていなかった。