第20話
文字数 1,448文字
「あの、古和 先生って、そのーー兄って、どんな方ですか?」
「あーー、そうですね、医師としては優秀ですよ。
患者さんのことをよく考えてくれていますし。
少し頼りないところもなきにしもあらずですが。
あら、ごめんなさい。妹さんに」
「いえ、いいんです。
私もずっと会ってみたいと思ってたんです。
一人っ子で育ったものですから。
あのーー、結婚はしてるんですか?」
「いえ、まだ独身ですよ。お付き合いしておられる方はいるようですけど」
「そうですか。母の寿命がもう長くないとわかった今、出来たら母と古和先生とで少しでもいいんです、一緒に過ごす時間を作れたらーー。
でもきっと古和先生は母のこと恨んでますよね。
顔も会わせたくないから主治医も交代してるわけですしーー」
しばらくの沈黙の後、中尾師長が大きな声で言いました。
「わかりました!
私が何とかします!
里奈さん心配しないでください」
「えっ、本当ですか?
師長さんも何かとお忙しいでしょうに」
「いえ、大丈夫です!
古和先生とも長い付き合いですし、ここは任せて下さい!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!
どうぞよろしくお願いします!」
里奈さんは溢れる涙を拭き拭き中尾師長の手を握り締めました。
でも、中尾師長、またそんな安請け合いをして大丈夫なんでしょうか。
「とんちゃん、ちょっといい?」
中尾師長は、東主任に声をかけると、二人で談話室に入りドアをしっかり閉めました。
「師長もしかして、かあ君と佐々木さんのことですか?」
「そう!
とんちゃん2人の関係知ってるの?」
「2人は親子なんじゃないですか?」
「えーー!?
とんちゃん知ってたんだったら何で教えてくれなかったのよ!」
「やっぱり……。
いえ、直接彼から聞いたわけではないんです。
でも、あの日、佐々木さんが入院された日、かあ君と、いえ、古和と、私で救急外来担当してたんですけど、佐々木さんを見てからかあ君、いえ、古和の様子が変でーー。
佐々木さんを6階病棟に上げる時、主治医を能見 先生に変わってもらうって言うから何で? って聞いたんですけど、何でもないって言うだけでーー。
でも、以前かあ君、いえ古和からーー」
「あーーもういいわよ! かあ君だろうがカラスだろうがどっちだって!
私は二人が付き合ってること知ってるんだから」
「すいません。
で、かあ君の母親が小さい頃家を出て行ったってことは聞いてたんです。
かあ君の父親のご両親と同居してたらしいんですけど、上手くいってなかったらしくてーー。
ある日突然いなくなったらしくて、家を出てから一度も会ったことがないし、もう親とも思ってない、自分とは関係ない人だって。
佐々木さん、年齢的にかあ君の母親くらいの年代ですよね。
佐々木さんがこの病院に連れて来られるのを拒否したって救急隊員からも聞いてましたし、もしかしたら佐々木さんは佐々木さんで、かあ君がこの病院で働いてるの知ってたから拒否したんじゃないのかなって」
「そうよそうよ、そうなのよ!」
中尾師長は東主任の両肩をぐっと掴んで力強く言いました。
「ついさっき、美津子さんの娘さんの里奈さんと話したんだけど、どうやら二人は親子だってことがわかったのよ!
それで、里奈さん、美津子さんがもう長くは生きられないって能見先生から言われて、何とか二人で過ごせる時間を作ってあげたいって言うから、私、任せて下さい! って言っちゃったんだけど、とんちゃん何かいいアイディアない?」
あらあら、中尾師長、やっぱり何も思いついてなかったんですね。
「あーー、そうですね、医師としては優秀ですよ。
患者さんのことをよく考えてくれていますし。
少し頼りないところもなきにしもあらずですが。
あら、ごめんなさい。妹さんに」
「いえ、いいんです。
私もずっと会ってみたいと思ってたんです。
一人っ子で育ったものですから。
あのーー、結婚はしてるんですか?」
「いえ、まだ独身ですよ。お付き合いしておられる方はいるようですけど」
「そうですか。母の寿命がもう長くないとわかった今、出来たら母と古和先生とで少しでもいいんです、一緒に過ごす時間を作れたらーー。
でもきっと古和先生は母のこと恨んでますよね。
顔も会わせたくないから主治医も交代してるわけですしーー」
しばらくの沈黙の後、中尾師長が大きな声で言いました。
「わかりました!
私が何とかします!
里奈さん心配しないでください」
「えっ、本当ですか?
師長さんも何かとお忙しいでしょうに」
「いえ、大丈夫です!
古和先生とも長い付き合いですし、ここは任せて下さい!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!
どうぞよろしくお願いします!」
里奈さんは溢れる涙を拭き拭き中尾師長の手を握り締めました。
でも、中尾師長、またそんな安請け合いをして大丈夫なんでしょうか。
「とんちゃん、ちょっといい?」
中尾師長は、東主任に声をかけると、二人で談話室に入りドアをしっかり閉めました。
「師長もしかして、かあ君と佐々木さんのことですか?」
「そう!
とんちゃん2人の関係知ってるの?」
「2人は親子なんじゃないですか?」
「えーー!?
とんちゃん知ってたんだったら何で教えてくれなかったのよ!」
「やっぱり……。
いえ、直接彼から聞いたわけではないんです。
でも、あの日、佐々木さんが入院された日、かあ君と、いえ、古和と、私で救急外来担当してたんですけど、佐々木さんを見てからかあ君、いえ、古和の様子が変でーー。
佐々木さんを6階病棟に上げる時、主治医を
でも、以前かあ君、いえ古和からーー」
「あーーもういいわよ! かあ君だろうがカラスだろうがどっちだって!
私は二人が付き合ってること知ってるんだから」
「すいません。
で、かあ君の母親が小さい頃家を出て行ったってことは聞いてたんです。
かあ君の父親のご両親と同居してたらしいんですけど、上手くいってなかったらしくてーー。
ある日突然いなくなったらしくて、家を出てから一度も会ったことがないし、もう親とも思ってない、自分とは関係ない人だって。
佐々木さん、年齢的にかあ君の母親くらいの年代ですよね。
佐々木さんがこの病院に連れて来られるのを拒否したって救急隊員からも聞いてましたし、もしかしたら佐々木さんは佐々木さんで、かあ君がこの病院で働いてるの知ってたから拒否したんじゃないのかなって」
「そうよそうよ、そうなのよ!」
中尾師長は東主任の両肩をぐっと掴んで力強く言いました。
「ついさっき、美津子さんの娘さんの里奈さんと話したんだけど、どうやら二人は親子だってことがわかったのよ!
それで、里奈さん、美津子さんがもう長くは生きられないって能見先生から言われて、何とか二人で過ごせる時間を作ってあげたいって言うから、私、任せて下さい! って言っちゃったんだけど、とんちゃん何かいいアイディアない?」
あらあら、中尾師長、やっぱり何も思いついてなかったんですね。