第16話
文字数 2,032文字
「あっ、金田さん、お疲れ様です、東です。遅くに悪いんだけど、608号に入院お願いできる?
はい、そうそう、あと30分程したら上がるわね」
救急車がいなくなったので翔太君と二人で救急外来に戻ると、東主任が先程の救急患者さんの入院手続きをしているようでした。
どうやら、6階に入院になるようですね。今晩も夜更 けから日向 さんたち、忙しくなりそうです。
6階では休憩を終えた日向さんや金田さんが、慌ただしたく入院準備をしています。
裕子 さんは、先ほどの救急患者さんが上がって来る前に休憩をとっているのでしょう。
しばらくすると、東主任から連絡があり、先程の救急患者さんが6階にやってきました。
患者さんのベッドを病室まで移動し、金田さんは血圧や体温、患者さんの全身状態をチェックしているようです。
日向さんは東主任より、先程の救急外来での診断結果の申し送りを受けています。
休憩から出てきた裕子さんは、ベッドネームや電子カルテ入力など入院に必要な事務作業をするなど、それぞれ役割を分担しながら入院処理を行っていきます。
その間にも病棟患者のナースコール対応だったり、点滴や排泄管理などの通常業務もありますから、夜間の緊急入院があると、朝まで休憩なしなんてこともよくあるのです。
本当に頭が下がります。
「富永 さんでいい? 送り?
はい、よろしくお願いします。
佐々木美津子さん、68歳、女性。
本日って言ってももう日付変わってるから昨日か。
23時40分頃お腹を押さえてその場に座り込む。
本人は大丈夫って言ってたらしいけど、段々症状ひどくなり、問いかけにも反応しなくなったため、お店のアルバイト店員高田さんが救急車を呼んで搬送されています。
取り敢えず明日から詳しく検査していかないとはっきりしたことは言えないんだけど、症状から消化器系のようね。
今は点滴で痛みも抑えてます。
今500つないでるのでーー」
日向さんは東主任の申し送りを聞き、わからないところはその都度質問しながらメモをとっていきます。
「古和 先生、すぐに上がって来られます?
頓用の薬も出しておいて欲しいですし」
日向さんがそう言うと、なぜか東主任の顔が曇りました。
「取り急ぎ必要な薬の処方は済んでるの。
ここに上がる前に薬剤室に寄って、処方箋渡してきたから、30分程したら取りに行ってくれる?」
「すいません。
ありがとうございます」
「あと他に、古和先生に確認しなきゃいけないこと何かある?」
「えーーっと、患者さんの容態見に来てくれるんですよね?」
「それが、ちょっと他にも救急外来に患者さん来てて、上がって来られないかもしれないって。
今つないでる点滴で朝まで大丈夫だと思うんだけど、佐々木さんから痛みの訴えあったり容態変わったりしたらすぐ連絡してって」
「わかりました。あと、家族さんに連絡は、いってるんですか?」
「付き添いで来てくれてた高田さんって人に聞いたんだけど、お店に帰らないとわからないらしくて今見に帰ってくれてるの。
さしあたり着替えなんかは病院の入院セット使うとしても、身の回りの物なんかも必要になってくるでしょうから、まずは娘さんに連絡とって来てもらうのが先決ね」
「娘さん、お近くなんですか?」
「それが、遠いんだって。
今から連絡しても飛行機使って一番早くて、明日の午後になるんじゃないかな」
「そうですか。わかりました」
「3人とも休憩取れた?
少しだったら私も手伝えるけど」
「ありがとうございます、何とか大丈夫です。
3人で手分けしてやりますので」
「じゃあ、よろしくね」
そう言うと、東主任はエレベーターのボタンを押しながら言いました。
「あっ、富永さん。
主治医、能見 先生だから」
「えっ? 古和先生じゃないんですか?」
「違うの。
能見先生でカルテに入力しといてくれる?」
「ーーーー。
わかりました」
元々のかかりつけ医がいない場合は、初めに診察した医師が主治医になるのが通常です。
日向さんは不思議に思い、何か事情があるような気がしましたが、何も言いませんでした。
『あっ、なつさん、さっきの兵隊さんだ』
翔太君の声に顔を上げると、先程平田さんの病室にいた兵隊さんが規則正しい歩き方で平田さんの部屋とは反対の方向に廊下を歩いていきます。
どうやら、平田さんが亡くなるのはもう少し先になるようです。
先程は思わぬところにいたソウルさんに驚きましたが、人が亡くなる時、私たちソウルの者がお迎えに行くことはよくあることなのです。
前に亡くなった家族、遠い親戚、昔の親友。亡くなる本人が全く知らないと感じた人でも、人生の何処かでご縁があった方なのでしょう。
あの兵隊さんも平田さんと何かしらの関係がある方なんだと思います。
そう言えば平田さん自身も以前は私たちソウルの姿が見えていない様子でしたが、突然見えるようになったということは、少し時期は延びたとは言え、お亡くなりになる時もそう遠くないと言うことでしょう。
はい、そうそう、あと30分程したら上がるわね」
救急車がいなくなったので翔太君と二人で救急外来に戻ると、東主任が先程の救急患者さんの入院手続きをしているようでした。
どうやら、6階に入院になるようですね。今晩も
6階では休憩を終えた日向さんや金田さんが、慌ただしたく入院準備をしています。
しばらくすると、東主任から連絡があり、先程の救急患者さんが6階にやってきました。
患者さんのベッドを病室まで移動し、金田さんは血圧や体温、患者さんの全身状態をチェックしているようです。
日向さんは東主任より、先程の救急外来での診断結果の申し送りを受けています。
休憩から出てきた裕子さんは、ベッドネームや電子カルテ入力など入院に必要な事務作業をするなど、それぞれ役割を分担しながら入院処理を行っていきます。
その間にも病棟患者のナースコール対応だったり、点滴や排泄管理などの通常業務もありますから、夜間の緊急入院があると、朝まで休憩なしなんてこともよくあるのです。
本当に頭が下がります。
「
はい、よろしくお願いします。
佐々木美津子さん、68歳、女性。
本日って言ってももう日付変わってるから昨日か。
23時40分頃お腹を押さえてその場に座り込む。
本人は大丈夫って言ってたらしいけど、段々症状ひどくなり、問いかけにも反応しなくなったため、お店のアルバイト店員高田さんが救急車を呼んで搬送されています。
取り敢えず明日から詳しく検査していかないとはっきりしたことは言えないんだけど、症状から消化器系のようね。
今は点滴で痛みも抑えてます。
今500つないでるのでーー」
日向さんは東主任の申し送りを聞き、わからないところはその都度質問しながらメモをとっていきます。
「
頓用の薬も出しておいて欲しいですし」
日向さんがそう言うと、なぜか東主任の顔が曇りました。
「取り急ぎ必要な薬の処方は済んでるの。
ここに上がる前に薬剤室に寄って、処方箋渡してきたから、30分程したら取りに行ってくれる?」
「すいません。
ありがとうございます」
「あと他に、古和先生に確認しなきゃいけないこと何かある?」
「えーーっと、患者さんの容態見に来てくれるんですよね?」
「それが、ちょっと他にも救急外来に患者さん来てて、上がって来られないかもしれないって。
今つないでる点滴で朝まで大丈夫だと思うんだけど、佐々木さんから痛みの訴えあったり容態変わったりしたらすぐ連絡してって」
「わかりました。あと、家族さんに連絡は、いってるんですか?」
「付き添いで来てくれてた高田さんって人に聞いたんだけど、お店に帰らないとわからないらしくて今見に帰ってくれてるの。
さしあたり着替えなんかは病院の入院セット使うとしても、身の回りの物なんかも必要になってくるでしょうから、まずは娘さんに連絡とって来てもらうのが先決ね」
「娘さん、お近くなんですか?」
「それが、遠いんだって。
今から連絡しても飛行機使って一番早くて、明日の午後になるんじゃないかな」
「そうですか。わかりました」
「3人とも休憩取れた?
少しだったら私も手伝えるけど」
「ありがとうございます、何とか大丈夫です。
3人で手分けしてやりますので」
「じゃあ、よろしくね」
そう言うと、東主任はエレベーターのボタンを押しながら言いました。
「あっ、富永さん。
主治医、
「えっ? 古和先生じゃないんですか?」
「違うの。
能見先生でカルテに入力しといてくれる?」
「ーーーー。
わかりました」
元々のかかりつけ医がいない場合は、初めに診察した医師が主治医になるのが通常です。
日向さんは不思議に思い、何か事情があるような気がしましたが、何も言いませんでした。
『あっ、なつさん、さっきの兵隊さんだ』
翔太君の声に顔を上げると、先程平田さんの病室にいた兵隊さんが規則正しい歩き方で平田さんの部屋とは反対の方向に廊下を歩いていきます。
どうやら、平田さんが亡くなるのはもう少し先になるようです。
先程は思わぬところにいたソウルさんに驚きましたが、人が亡くなる時、私たちソウルの者がお迎えに行くことはよくあることなのです。
前に亡くなった家族、遠い親戚、昔の親友。亡くなる本人が全く知らないと感じた人でも、人生の何処かでご縁があった方なのでしょう。
あの兵隊さんも平田さんと何かしらの関係がある方なんだと思います。
そう言えば平田さん自身も以前は私たちソウルの姿が見えていない様子でしたが、突然見えるようになったということは、少し時期は延びたとは言え、お亡くなりになる時もそう遠くないと言うことでしょう。