第21話
文字数 1,799文字
「三久路 君、今日、平田さんの退院調整カンファレンスよね?
何時から?」
中尾師長が時計を見ながら三久路君に尋ねます。
「はい、2時からです」
「参加者には全員連絡してあるわね?」
「はい、能見 先生は検査が何件か入ってるので、来られそうなら来てくれるそうです。
訪問看護ステーションの田所所長、地域医療連携室の西沢さん、PT白河さんは、参加確認しています。
あとは家族さんと、担当看護師の富永 さんです。
富永さんが司会もやってくれる予定です」
「そうーー、西沢さん、来るんだーー。
あっ、そう言えば三久路君、何回か退院カンファレンス見学したことあったわよね?」
「はい」
「よし、じゃあ今日の司会は三久路君やってみて」
「えーー!?」
「大丈夫よ、富永さんいるから。
それに私も平田さんのこと気になってるの。ちょっと顔出すつもりしてるから。
方向性はわかってるわね?」
「はい、入院するまでは何とか自宅で在宅サービスを使いながら生活出来ていましたが、今回の入院でADLがかなり低下しており、そのことを踏まえて平田さん、家族さんが納得してスムーズに退院出来るよう調整していきます」
「うんうん、そうだね。
それで、家族さんの意向は?」
「平田さんの息子さんの妻が一人で介護しており、今後も以前のように自宅で今まで通りサービスを使いながら介護を続けたいとの希望です」
「三久路君はどう思う?」
「はい、入院前は自宅で車椅子生活でしたが、何とか介助を受けながらポータブルトイレを使えるくらいのADLはあったとの記録でした。
しかし、今回の入院で介護度があがっており、定期的な吸引処置も必要となることから、自宅に戻るのは難しいのではないかと担当の富永さんが話していました」
「うん、そうね。2人でよく情報共有出来てるみたいね。
今後、施設に移るにしても自宅に戻るにしても、患者さんや家族さんが今後どうした生活を送っていきたいのか、どうするのが最善なのかを皆で考えましょう。
それじゃ、2時からよろしくね」
「はい!」
急に大役を仰せつかった三久路君の顔が緊張で見る見る高潮してきました。
早速ナースステーション奥の棚から退院調整カンファレンスのファイルを取り出し、会議の進め方マニュアルを確認しています。
何だか今日の三久路君はいつにも増してより逞しく大きく見えます。
「あっ、西沢さん!
お疲れ様です。
あ久しぶりです、お元気でしたか?」
「あーー、はい、変わらずです。
中尾師長、あの、先週も病棟のカンファレンスでお会いしてますがーー」
「あらっ、先週からじゃもうかれこれ1週間もお会いしてないじゃないですか」
「あーー、はーー。
あの、よろしくお願いします」
そう言うと、西沢さんは逃げるように隣の面談室に入って行きました。
「ちょっ……」
なんとも、いつもこの二人の会話の温度差ったらありません。
「ねえ、桜川 さん、中尾師長がなんで西沢さん追いかけてるか知ってる?」
ナースステーションの奥で二人の会話を聞きながら、点滴の準備をしていた金田さんが裕子 さんに聞きました。
「あっ、私それずっと疑問に思ってたんですよね。
中尾師長って歳はいってるけど美人で、性格もいいじゃないですか。
かたやこういっちゃなんですけど、見た目がパッとしないって言うかーー、まあそれは人それぞれ好みがあるからいいと思うんですけど、私が一番気になるのは、あんなわかりやすいヅラ着けます? ってことなんですよね。
それに西沢さん、仕事は真面目だし患者さんや家族さんのことよく考えてくれてるし、いい人だとは思うんですけど、なんか頼りないって言うかーー。
私的には彼氏には無理ですね」
西沢さんはここ城山病院の地域医療連携室で働く40代中頃の男性です。
中肉中背で、どこといって特徴のない風貌で、仕事は至って真面目、病院スタッフからの信頼も厚いです。
地域医療連携室というのは入院患者がスムーズに退院、もしくは転院出来るよう病院と地域の福祉施設や医療機関を繋ぐ役割をしているところです。
幅広い知識が必要で、仕事の時はとても活発に意見を言う西沢さんですが、プライベートはとても無口です。
特に中尾師長が勢いよく話しかけると、なぜかいつも逃げるように去っていきます。
裕子さんと同じように私もいつも気になっているのが、西沢さんの頭です。なんていうかーー、そのーー不自然なんですよね。
何時から?」
中尾師長が時計を見ながら三久路君に尋ねます。
「はい、2時からです」
「参加者には全員連絡してあるわね?」
「はい、
訪問看護ステーションの田所所長、地域医療連携室の西沢さん、PT白河さんは、参加確認しています。
あとは家族さんと、担当看護師の
富永さんが司会もやってくれる予定です」
「そうーー、西沢さん、来るんだーー。
あっ、そう言えば三久路君、何回か退院カンファレンス見学したことあったわよね?」
「はい」
「よし、じゃあ今日の司会は三久路君やってみて」
「えーー!?」
「大丈夫よ、富永さんいるから。
それに私も平田さんのこと気になってるの。ちょっと顔出すつもりしてるから。
方向性はわかってるわね?」
「はい、入院するまでは何とか自宅で在宅サービスを使いながら生活出来ていましたが、今回の入院でADLがかなり低下しており、そのことを踏まえて平田さん、家族さんが納得してスムーズに退院出来るよう調整していきます」
「うんうん、そうだね。
それで、家族さんの意向は?」
「平田さんの息子さんの妻が一人で介護しており、今後も以前のように自宅で今まで通りサービスを使いながら介護を続けたいとの希望です」
「三久路君はどう思う?」
「はい、入院前は自宅で車椅子生活でしたが、何とか介助を受けながらポータブルトイレを使えるくらいのADLはあったとの記録でした。
しかし、今回の入院で介護度があがっており、定期的な吸引処置も必要となることから、自宅に戻るのは難しいのではないかと担当の富永さんが話していました」
「うん、そうね。2人でよく情報共有出来てるみたいね。
今後、施設に移るにしても自宅に戻るにしても、患者さんや家族さんが今後どうした生活を送っていきたいのか、どうするのが最善なのかを皆で考えましょう。
それじゃ、2時からよろしくね」
「はい!」
急に大役を仰せつかった三久路君の顔が緊張で見る見る高潮してきました。
早速ナースステーション奥の棚から退院調整カンファレンスのファイルを取り出し、会議の進め方マニュアルを確認しています。
何だか今日の三久路君はいつにも増してより逞しく大きく見えます。
「あっ、西沢さん!
お疲れ様です。
あ久しぶりです、お元気でしたか?」
「あーー、はい、変わらずです。
中尾師長、あの、先週も病棟のカンファレンスでお会いしてますがーー」
「あらっ、先週からじゃもうかれこれ1週間もお会いしてないじゃないですか」
「あーー、はーー。
あの、よろしくお願いします」
そう言うと、西沢さんは逃げるように隣の面談室に入って行きました。
「ちょっ……」
なんとも、いつもこの二人の会話の温度差ったらありません。
「ねえ、
ナースステーションの奥で二人の会話を聞きながら、点滴の準備をしていた金田さんが
「あっ、私それずっと疑問に思ってたんですよね。
中尾師長って歳はいってるけど美人で、性格もいいじゃないですか。
かたやこういっちゃなんですけど、見た目がパッとしないって言うかーー、まあそれは人それぞれ好みがあるからいいと思うんですけど、私が一番気になるのは、あんなわかりやすいヅラ着けます? ってことなんですよね。
それに西沢さん、仕事は真面目だし患者さんや家族さんのことよく考えてくれてるし、いい人だとは思うんですけど、なんか頼りないって言うかーー。
私的には彼氏には無理ですね」
西沢さんはここ城山病院の地域医療連携室で働く40代中頃の男性です。
中肉中背で、どこといって特徴のない風貌で、仕事は至って真面目、病院スタッフからの信頼も厚いです。
地域医療連携室というのは入院患者がスムーズに退院、もしくは転院出来るよう病院と地域の福祉施設や医療機関を繋ぐ役割をしているところです。
幅広い知識が必要で、仕事の時はとても活発に意見を言う西沢さんですが、プライベートはとても無口です。
特に中尾師長が勢いよく話しかけると、なぜかいつも逃げるように去っていきます。
裕子さんと同じように私もいつも気になっているのが、西沢さんの頭です。なんていうかーー、そのーー不自然なんですよね。