第48話
文字数 1,849文字
「え?
今度の日曜?
別に予定ないけどーー」
珍しく日向 さんを廊下の隅に呼び出して何を言うのかと思えば三久路 君からお出かけのお誘いのようです。
「桜川 さんもオフですよね。
お父さんの病状は落ち着いてきてますし、良かったら一緒に水族館行きませんか?
新しく出来た今話題になってるとこなんですよ。
最近桜川さん、なんだか元気ないですよね。
そのーー、お父さんのこと以外にも気になることとか、悩みごとあると思うんですけど、少しでも気分転換してもらえたらーーって」
「ーー三久路君ーー。
ありがと。
三久路君も日曜オフだっけ?」
「僕は明けなので、お昼からになりますけど、いいですか?
シフト表で、今月三人の休み合う日がこの日しかなくて」
「そうなんだーー。
わかった。
ユッコに聞いてみるね」
日向さんは三久路君の優しい気遣いに感謝しているに違いありません。
「あっ、冨永 さん、白河さんも一緒に行っていいですか?」
その言葉を聞くまではーー。
「あーーーー、楽しかったーー!!」
裕子 さんがストローを鳴らしてジュースを飲み干しました。
普段は滅多に病院の外には出ない私ですが、まだ失恋の傷が癒 えてない日向さんと白河さんのプライベートでの対面が気になり、またもや四人のお出掛けにおともしてしまいました。
三久路君が心配していたように、ここ最近元気がなかった裕子さんでしたが、今日はそんなことも少し忘れて休日を楽しんでいたような気がします。
そんな裕子さんの笑顔を見つめる日向さん、三久路君、白河さん三人の笑顔はもっと嬉しそうです。
「ミクロ、明けでしょ?
そろそろ帰って寝ないとーー。
今日は誘ってくれてありがとう。
すんごく楽しかったーー。
白河さんも付き合ってくれてありがとうございました」
「いえいえ。
こちらこそ前からアーリーと行きたいねって言ってたとこだったんで、やっとこれて楽しかったです。
アーリーが毎日お二人の話ばっかりするもんだから、僕もいつも気になっててーー」
えーー、そんなことないよーー、いや、そうだってーーなどと言い合う三久路君と白河さんを見ている日向さんがフッと視線を外したところを見た裕子さんが、急にハキハキとした口調で言いました。
「はい!
それじゃあ、今日はこれでお開きということで。
私はちょっと日向に付き合ってほしい買い物あるので、私たちは先に失礼するね。
ミクロ、白河さん、今日は本当にありがとうございました!」
水族館の出口で三久路君、白河さんと別れた二人は駅に向かって歩き出しました。
「ユッコ、買い物なんてないんでしょ?」
「え?」
「正直三久路君と一緒にいる白河さん見ると、まだここがチクチクする」
日向さんはそう言いながら自分の胸をツンツンと軽く叩きました。
「でもね、三久路君といるとすんごく楽しくて嬉しそうな白河さん見てると、良かったなあって思えるようになってきたんだ」
「日向ーーーー」
裕子さんは人目を気にせず日向さんに抱きつきました。
「まだあの二人見ると辛いはずなのに、私のために今日は本当にありがとうね。
ーー私、日向に謝らなきゃいけないことがあるんだーー。
お父さんから聞いたよね?
お兄ちゃんのことーー。
ーー私、お兄ちゃんいるんだーー。
日向には一人っ子だってずっと嘘ついてたーー。
ごめんーー」
「うううん」
「ーーお兄ちゃん、小さい頃から勉強もスポーツも凄く良く出来て自慢の兄だったんだよね。
私にも優しくて。
いつもお兄ちゃんが家族の中心だった。
お母さんもお父さんもお兄ちゃんの話ばっかりしててーー。
それでもお父さんもお母さんも私に優しかったし、私もお兄ちゃんのこと大好きだった。
そんな時に突然お母さんが事故で亡くなっちゃったんだ。
そこからかな、うちの家おかしくなったの。
遠くに住んでたおばあちゃんが一緒に住んで、家のことしてくれて、なんとか家の中回ってたんだけどーー。
おばあちゃんが高校の時亡くなってからは、もう家族バラバラになっちゃった」
「ユッコーー」
「あんなに勉強もスポーツも出来て友達もいっぱいいた自慢のお兄ちゃんが今家に引きこもってて、お父さんは急性膵炎でうちの病院に入院してる。
それなのに私は他人事みたいに干渉せず、自分のことだけして、普通に働いてる。
おかしいよね?
日向、私おかしいよね?」
「おかしくない、おかしくなんかないよ、ユッコーー」
二人とも溢れる涙を拭いながら抱き合い肩をたたき合っています。
裕子さんと抱き合う日向さんと目が合った私まで涙を堪えることが出来ず思わず目頭を押さえました。
今度の日曜?
別に予定ないけどーー」
珍しく
「
お父さんの病状は落ち着いてきてますし、良かったら一緒に水族館行きませんか?
新しく出来た今話題になってるとこなんですよ。
最近桜川さん、なんだか元気ないですよね。
そのーー、お父さんのこと以外にも気になることとか、悩みごとあると思うんですけど、少しでも気分転換してもらえたらーーって」
「ーー三久路君ーー。
ありがと。
三久路君も日曜オフだっけ?」
「僕は明けなので、お昼からになりますけど、いいですか?
シフト表で、今月三人の休み合う日がこの日しかなくて」
「そうなんだーー。
わかった。
ユッコに聞いてみるね」
日向さんは三久路君の優しい気遣いに感謝しているに違いありません。
「あっ、
その言葉を聞くまではーー。
「あーーーー、楽しかったーー!!」
普段は滅多に病院の外には出ない私ですが、まだ失恋の傷が
三久路君が心配していたように、ここ最近元気がなかった裕子さんでしたが、今日はそんなことも少し忘れて休日を楽しんでいたような気がします。
そんな裕子さんの笑顔を見つめる日向さん、三久路君、白河さん三人の笑顔はもっと嬉しそうです。
「ミクロ、明けでしょ?
そろそろ帰って寝ないとーー。
今日は誘ってくれてありがとう。
すんごく楽しかったーー。
白河さんも付き合ってくれてありがとうございました」
「いえいえ。
こちらこそ前からアーリーと行きたいねって言ってたとこだったんで、やっとこれて楽しかったです。
アーリーが毎日お二人の話ばっかりするもんだから、僕もいつも気になっててーー」
えーー、そんなことないよーー、いや、そうだってーーなどと言い合う三久路君と白河さんを見ている日向さんがフッと視線を外したところを見た裕子さんが、急にハキハキとした口調で言いました。
「はい!
それじゃあ、今日はこれでお開きということで。
私はちょっと日向に付き合ってほしい買い物あるので、私たちは先に失礼するね。
ミクロ、白河さん、今日は本当にありがとうございました!」
水族館の出口で三久路君、白河さんと別れた二人は駅に向かって歩き出しました。
「ユッコ、買い物なんてないんでしょ?」
「え?」
「正直三久路君と一緒にいる白河さん見ると、まだここがチクチクする」
日向さんはそう言いながら自分の胸をツンツンと軽く叩きました。
「でもね、三久路君といるとすんごく楽しくて嬉しそうな白河さん見てると、良かったなあって思えるようになってきたんだ」
「日向ーーーー」
裕子さんは人目を気にせず日向さんに抱きつきました。
「まだあの二人見ると辛いはずなのに、私のために今日は本当にありがとうね。
ーー私、日向に謝らなきゃいけないことがあるんだーー。
お父さんから聞いたよね?
お兄ちゃんのことーー。
ーー私、お兄ちゃんいるんだーー。
日向には一人っ子だってずっと嘘ついてたーー。
ごめんーー」
「うううん」
「ーーお兄ちゃん、小さい頃から勉強もスポーツも凄く良く出来て自慢の兄だったんだよね。
私にも優しくて。
いつもお兄ちゃんが家族の中心だった。
お母さんもお父さんもお兄ちゃんの話ばっかりしててーー。
それでもお父さんもお母さんも私に優しかったし、私もお兄ちゃんのこと大好きだった。
そんな時に突然お母さんが事故で亡くなっちゃったんだ。
そこからかな、うちの家おかしくなったの。
遠くに住んでたおばあちゃんが一緒に住んで、家のことしてくれて、なんとか家の中回ってたんだけどーー。
おばあちゃんが高校の時亡くなってからは、もう家族バラバラになっちゃった」
「ユッコーー」
「あんなに勉強もスポーツも出来て友達もいっぱいいた自慢のお兄ちゃんが今家に引きこもってて、お父さんは急性膵炎でうちの病院に入院してる。
それなのに私は他人事みたいに干渉せず、自分のことだけして、普通に働いてる。
おかしいよね?
日向、私おかしいよね?」
「おかしくない、おかしくなんかないよ、ユッコーー」
二人とも溢れる涙を拭いながら抱き合い肩をたたき合っています。
裕子さんと抱き合う日向さんと目が合った私まで涙を堪えることが出来ず思わず目頭を押さえました。