第38話
文字数 1,387文字
「19時32分、お亡くなりになりました」
能見 先生が浩一さんの死亡確認をゆっくりと行う姿を側で見ていた洋子さんは、ありがとうございました、と深く頭を下げました。
「点滴などの管を抜いて体を綺麗に整えるのに5分ほど外でお待ちください」
日向 さんが声をかけると、洋子さんは頷いて病室の外に出ます。
『芳子さん、浩一さん連れて行ってあげるの?』
私が芳子さんに声をかけると彼女は黙って頷きました。
少し前から浩一さんにも芳子さんの姿が見えていたのでしょう。不安気な様子もなく、どこかしらほっとしたようにも見えます。
『すいませんが、もう少しだけ待ってください』浩一さんが言いました。
芳子さんは静かに微笑みで答えます。
死亡確認が終わった浩一さんの体から日向さんと三久路 君が点滴などのチューブを、能見先生が栄養チューブを血管から取り出しました。
今の浩一さんは、まるでただ静かに眠っているようです。
最後に布団を綺麗に整え、能見先生が、よし、と言うと、日向さんが病室の扉を開けて洋子さんを部屋に呼び戻しました。
その時です。
ガターンと言う音と共にエレベーターが6階に着いたと同時に、バタバタバタッと走り出てきたのは浩一さんのご両親と小さな2人の男の子です。
祐樹君はおばあちゃんに抱かれて、お兄ちゃんの和樹君はおじいちゃんに手を引かれています。
廊下を走って622号室の前まで来ると、ちょうど病室を出た能見先生や日向さん、三久路君とすれ違いました。
深くお辞儀をする3人の横をごくりと唾を飲み込んで扉を開けて入っていきます。その直後でした。
「うわーーーーーーーー。
この親不孝者がーーーー。
親より早く死ぬ奴があるかーーーー。
あーーっあーーーーーー」
浩一さんのお父さんの泣き叫ぶ声が病棟に響き渡りました。
ナースステーションに戻った日向さんたちはそんな家族さんの声を聞きながらも日常の業務をこなさなくてはいけません。
「三久路君、悪いけど、一階まで行って6階スタッフのユニフォーム、クリーニング上がってきてるの取ってきてくれない?
時間かかってもいいから全員分探して取ってきて」
中尾師長が言いました。
ふと、三久路君を見ると、右腕を目に当てていますが、その腕の下から涙が止めどなく流れています。
「今すぐ行って」と言うと、三久路君は声を出さずにコクンと一度頷くとナースステーションを出てダッシュで非常階段を降りて行きました。
浩一さんは最後にご両親と2人の息子に会いたかったのでしょう。
泣き叫んでいたお父さんが少し落ち着いたところで、妻の洋子さん、お父さん、お母さんをそれぞれ抱きしめながら一人づつありがとう、と声をかけました。
そして、何が起こっているのか理解出来ないまでも、この場の雰囲気にのまれて不安そうな弟の祐樹君の頭を撫でると、祐樹、ごめんな、と言いました。
最後に洋子さんの手をしっかり握り、必死で涙を堪えている和樹君の正面に屈んで、目線を合わせると、
『和樹、お母さんや祐樹のこと頼んだぞ』と肩を掴んで言った時でした。
和樹君はしっかりと頷いてそして、次から次へと溢れてくる涙を何度も何度も手で拭いました。
浩一さんはスッキリとした顔でこちらを振り返ると
『芳子さん、お待たせしました。
よろしくお願いします』と頭を下げました。
「点滴などの管を抜いて体を綺麗に整えるのに5分ほど外でお待ちください」
『芳子さん、浩一さん連れて行ってあげるの?』
私が芳子さんに声をかけると彼女は黙って頷きました。
少し前から浩一さんにも芳子さんの姿が見えていたのでしょう。不安気な様子もなく、どこかしらほっとしたようにも見えます。
『すいませんが、もう少しだけ待ってください』浩一さんが言いました。
芳子さんは静かに微笑みで答えます。
死亡確認が終わった浩一さんの体から日向さんと
今の浩一さんは、まるでただ静かに眠っているようです。
最後に布団を綺麗に整え、能見先生が、よし、と言うと、日向さんが病室の扉を開けて洋子さんを部屋に呼び戻しました。
その時です。
ガターンと言う音と共にエレベーターが6階に着いたと同時に、バタバタバタッと走り出てきたのは浩一さんのご両親と小さな2人の男の子です。
祐樹君はおばあちゃんに抱かれて、お兄ちゃんの和樹君はおじいちゃんに手を引かれています。
廊下を走って622号室の前まで来ると、ちょうど病室を出た能見先生や日向さん、三久路君とすれ違いました。
深くお辞儀をする3人の横をごくりと唾を飲み込んで扉を開けて入っていきます。その直後でした。
「うわーーーーーーーー。
この親不孝者がーーーー。
親より早く死ぬ奴があるかーーーー。
あーーっあーーーーーー」
浩一さんのお父さんの泣き叫ぶ声が病棟に響き渡りました。
ナースステーションに戻った日向さんたちはそんな家族さんの声を聞きながらも日常の業務をこなさなくてはいけません。
「三久路君、悪いけど、一階まで行って6階スタッフのユニフォーム、クリーニング上がってきてるの取ってきてくれない?
時間かかってもいいから全員分探して取ってきて」
中尾師長が言いました。
ふと、三久路君を見ると、右腕を目に当てていますが、その腕の下から涙が止めどなく流れています。
「今すぐ行って」と言うと、三久路君は声を出さずにコクンと一度頷くとナースステーションを出てダッシュで非常階段を降りて行きました。
浩一さんは最後にご両親と2人の息子に会いたかったのでしょう。
泣き叫んでいたお父さんが少し落ち着いたところで、妻の洋子さん、お父さん、お母さんをそれぞれ抱きしめながら一人づつありがとう、と声をかけました。
そして、何が起こっているのか理解出来ないまでも、この場の雰囲気にのまれて不安そうな弟の祐樹君の頭を撫でると、祐樹、ごめんな、と言いました。
最後に洋子さんの手をしっかり握り、必死で涙を堪えている和樹君の正面に屈んで、目線を合わせると、
『和樹、お母さんや祐樹のこと頼んだぞ』と肩を掴んで言った時でした。
和樹君はしっかりと頷いてそして、次から次へと溢れてくる涙を何度も何度も手で拭いました。
浩一さんはスッキリとした顔でこちらを振り返ると
『芳子さん、お待たせしました。
よろしくお願いします』と頭を下げました。