膠着
文字数 1,414文字
4回表、山京学園高校の攻撃は、8番、キャッチャー、帯刀さん。
これ以上あの1年生を引っ張らせると終盤がきつくなる。頼むぞ。
(さて、この回は上位まで回る。できれば8、9番でアウト二つ取りたいな)
(2点差だし、リードしたまま澪先輩にマウンドを渡したい)
帯刀友里に対し、鈴は変化球主体で攻めていく。
初球カーブでストライクを奪うと、2球目も外へ逃げていくカーブで空振りを奪った。
(なんか序盤より曲がってる気がするんだけど……?)
鈴は再度カーブを投げる。アウトコースからさらに外へ曲がる変化球。
帯刀友里はバットを出しかけて慌てて止めようとしたが、間に合わなかった。完全にバットが回っていた。
9番は途中からファーストに入っている浜野忍だ。
器用なところを評価されたバッターだったが、鈴の独特のフォームに幻惑されてセカンドゴロ。あっという間にツーアウトになった。
鈴はアウトコースにストレートを投げ込む。
小林歩夢がいきなり振ってきた。
が、やや芯を外れてライトにフライが上がる。
優が余裕を持ってキャッチ。
スリーアウトチェンジだ。
裾花清流ナインは意気揚々とベンチに戻っていく。
いいムードで攻撃につなげられそうだった。
裾花清流は1番からの好打順だったが、雪原風日のピッチングの前にあっけなく三者凡退に終わった。
うーん、打てない相手じゃないと思ったんだけどなー。
チェンジアップが想像以上に遅いのね。そのぶんストレートが球速以上に速く感じられて振り遅れるんだわ。
最初から絶好調ってわけか。スロースターターならまだチャンスがあったんだけどね。
それだったら強豪校で背番号1は背負えないって。とにかく、2点差を死守しないとね。
そう、岩見さんの言う通りです。このまま逃げ切ることはできるはず。しっかり守りましょう。
(うーん、緋田先生もちょっと不安になってきてるみたいね)
私、次の回もしっかり抑えるので! そんな暗い顔しないでください!
私、だんだん自信がついてきたんです! 0で切って澪先輩に託します! それじゃあ!
いきなりこれだけの仕事を任せているわけですからね。……ですが新海さん、感慨にひたるのは試合が終わってからにしましょうね?
あっ、ごめんなさい。……私もブルペンに行ってきます。じゃあ朝陽ちゃん、相手お願いね。
(2イニングなら新海さんも全力で投げられる。どういう精神状態でマウンドに上がれるかは朝山さん次第……)
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