切り札は完成した
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裾花清流のメンバーは日が暮れるまで練習した。
鈴は朝陽を相手に30球ほど投げ込んだ。
ストレート、カーブ、シンカー、シュート。
各変化球の精度を確かめる。
悠子との投球練習を終えた澪は、軽めのランニングに入っている。
鈴は3塁側のブルペンに立った。
マウンドはならしていない。
複数の投手がブルペンを連続で使う場合、土はならさないのが裾花清流――というより緋田恵のやり方だった。
実戦のマウンドでは、相手投手が使ったあとのマウンドに立つことになる。
相手のスパイクの跡をならして、自分が投げやすいように調整する。
そこまで含めての投球練習だ。
恵の話だと、これはメジャーリーグで使われている方法なんだとか。
鈴は頷き、最後の1球を投げ込んだ。
悠子が快音を鳴らして捕ってくれる。
サード正面に打球が飛ぶ。
美晴がしっかり押さえてセカンドに送球。桜がキャッチしてファーストに転送。ここもブレなくしっかり連携が取れている。
内野陣へのノックが続く。
凪はひたすら恵にボールを渡している。
外野手の4人、礼、優、青葉、雅はライト側にいて、ファールゾーンからセンター方向にノックをしていた。ノッカーは順番で交代しながらだ。
一方、山京学園。
レギュラー陣は軽めの調整を終えると、部室に引き上げていた。
山京学園の部室では軽口の叩き合いが日常茶飯事と化している。
白山水穂も1年生ながら、上級生に対し遠慮なく色々と言ってくる。その度胸だけはみんな評価していた。