これからは私に任せなさい!
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野球部員全員が職員室の一角に集まった。
職員室はグラウンドから近くテレビも二台あるので、データ分析をする時にはいつもこの場所を使うことになっている。
新聞部の岸川という生徒が解説してくれる。
公式戦は地元のケーブルテレビが放送しているので、一試合まるまるデータが取れる。
岸川は野球観戦が趣味らしく、映像の切り抜きがうまい。
投手の変化球、ピンチの場面での配球、注意すべきバッターや戦術などが短い中にしっかり詰め込まれていた。
真修館のエース今崎は左のオーバースロー。
大きく振りかぶり、ゆったりしたモーションからキレのあるボールを投げる。
しかしランナーを背負うと、ピッチングのテンポが一変する。クイックを多用して盗塁の隙を与えない。テンポを上げても制球力は落ちず、しっかり危機を脱している。
東御女学院の白鳥にはスローカーブがあった。
開桜の川船美咲には縦のスライダー。
そして真修館の今崎はインコースのストレート。
全員がグラウンドに戻って練習の用意に入った。
練習の用意をしながら、漆原礼はそっと自分の手を見た。
かすかに震えている。
先輩たちが何度も挑み、逃してきたベスト4。
あと一勝がどうしても届かないところにある。
そして長野県の高校女子野球では、まだ公立校がベスト4入りしたことはない。上位を占めるのは常に私立校だ。
真修館はその一角。
――絶対に負けたくない。
この震えは、その強い感情から来ている。