中軸対決
文字数 2,478文字
主審が右手を挙げて「ストライクツー!」と宣言する。
開桜の4番、草壁
パワーに自信はあったが、新海澪のストレートに押されている。
草壁真尋は外のスライダーに手を出して平凡なセカンドゴロに倒れた。
ストレートの球威を見せつけられているので、うまく変化球に対応しきれない。
太刀川雪乃は開桜に三人いる左バッターの一人だ。構えは小さく、左足のかかとを上下させてリズムを取っている。
裾花清流バッテリーはストレートから入った。
雪乃がいきなり振ってきた。
強烈な流し打ちだったが、打球はレフトポールのやや左のフェンスに当たってファール。
打球を追いかけた礼がつぶやく。
1年生とは思えない強い当たりだった。
澪はサイン通り、外角にチェンジアップを投げた。
太刀川雪乃がここも振ってくる。
タイミングをずらされることなく芯で捉え、三遊間を破るレフト前ヒットを放つ。
両チーム通じて初のヒットが出た。
澪はストレートとスライダーで浅上桐子と勝負する。
ストレート、スライダーともにファールを打たれたが、スライダーを外野まで飛ばされたのに対し、ストレートは当てるのが精一杯という印象を、悠子は受けた。
澪がクイックで投げ込む。
狙い通りインコース低めにストレートがいった。
浅上桐子が強引に引っ張った。
痛烈なライナーがサードの頭上へ飛ぶ――
美晴がジャンプしてライナーをキャッチ。
着地してすぐにファーストを向くが、太刀川雪乃はすでにベースに戻っていた。飛び出していれば美晴の強肩で刺せていたかもしれない。
澪はストレートで勝負に行った。
7番
2回ウラ。
裾花清流は4番、神村青葉からの攻撃だ。
吹奏楽部の応援が始まり、商店街の人々で構成された青葉限定応援団が高校球児のように胸を反らして声援を送る。
青葉は低めのスライダーを見極めて2-2までもっていく。
厳しいコースはカットするが、ストレートはファールにするだけでも腕がしびれる。
美咲が投げた。
青葉の体に当たりそうなコースに飛んでくる。
青葉は左足を外に開いて打ち返した。
しかし体が開きすぎて力がうまく加わらず、サードフライに倒れた。
金属音が響いた。
悠子がキャッチャーフライを打ち上げてツーアウトになる。
奈緒が桜に戦術を語っていると、快音が鳴った。
優が美咲のストレートをライト前に引っ張り、出塁したのだ。
裾花清流の攻撃ムードができ始めたかに思われたが、7番の赤羽夕日は縦のスライダーに対応できず空振り三振。
2回も両チームとも無得点に終わった。
守備に向かう味方を見送ったあと、鈴と朝陽はブルペンに入った。
鈴は朝陽のミットめがけて全力で投げ込む。
今のペースでは、どう頑張っても澪は完投できない。
必ず自分に出番が回ってくる。
それを考えると、自然と気合いも入る。
プレッシャーを恐れていては納得のいく投球はできない。鈴は、一回戦で感じたマイナス思考を振り払い、マウンドで全力を出し尽くすことを決意していた。