一人だけ明らかに浮いている…
文字数 3,205文字
試合が終わり、道具を片づけた両チームが球場から出た。
引き上げる山京学園のメンバーたちはひどく静かだった。
暗いムードの山京学園。
対して、初の決勝進出を決めた裾花清流はスタンドへ移動していた。
お昼を食べながら、準決勝第二試合を見るのだ。
話している間に試合開始の時間がやってきた。
松城が1塁側、日海大暁星が3塁側のベンチだ。
裾花清流のメンバーは3塁寄りの高い位置に陣取った。相手ピッチャーの視界に入らないよう気をつける。
プレーボール。
鏡花が振りかぶって初球を投じる。
快速球。
藤丸海里のミットがすさまじい音を立てた。
鏡花はストレート勝負で先頭バッターを空振り三振に打ち取る。
2番、3番に対してもストレート主体の組み立て。
時折スライダーと落ちるボールを混ぜて、あっという間に三者連続三振を奪ってチェンジにした。
味方スタンドに手を振りながらベンチに戻っていく鏡花。
1回ウラ、日海大暁星の攻撃。
先頭打者はキャプテンの
松城のエースは2年生の岸本。
小柄だが思い切りのいいピッチングで味方を準決勝まで連れてきた。
その岸本のストレートを、鏡花が難なくはじき返す。
打球が左中間を破って悠々とツーベース。
日海大暁星は4番
その後、鏡花は松城打線をサクサクと料理し、6回を終わって打たれたヒット1本、四死球なしという圧巻のピッチングを見せた。
松 城 000 000|0
暁 星 100 201|4
礼は、抽選会の時に川船美咲と話したことを思い出していた。
――相手が鏡花だとね、自分が霞んじゃう感じするよ――
中学時代、鏡花と美咲はずっと背番号1を争っていた。
しかし結局のところ、実力、安定感ともに鏡花が上回った。
最後のバッターが外角低めのストレートで空振り三振に倒れる。
日海大暁星が勝利した。
稲月鏡花は1安打完封勝利。
そして、彼女は今大会、まだ1点も奪われていない。
一回戦敗退が当たり前だった鈴にとって、決勝戦は未知の舞台。
そこに自分が立つことはほぼ確定している。