高まる熱気
文字数 2,573文字
準決勝当日の長野オリンピックスタジアムは強い日差しに覆われていた。
金曜日に行われた開会式から順調にスケジュールが消化され、土曜日を迎えた。
準々決勝までは一日おきに試合となるが、準決勝、決勝は土日の連戦となる。
礼の一声で雑談が終わり、ベンチ前に円陣ができる。
山京学園が1塁側、裾花清流が3塁側だ。
1 一ノ瀬桜(二)
2 漆原礼 (左)
3 神村青葉(中)
4 岩見悠子(捕)
5 漆原優 (右)
6 赤羽夕日(一)
7 朝山鈴 (投)
8 天城奈緒(遊)
9 水崎美晴(三)
一方の山京学園ベンチ。
キャプテンの九条
円陣に監督の
山京学園女子野球部OGで、大学卒業と同時に母校の監督となった人物だ。
両チームが話し合いをしている間に、電光掲示板にはスターティングメンバーの名前が表示されていく。
裾花清流のスタンドからは、選手の名前がコールされるたびに大きな拍手が起こった。
両チームがベンチの前に並んだ。
観客から大きな拍手が起きる。
主審のかけ声とともに両チームが飛び出し、ホーム前に整列する。
裾花清流はベンチ入りメンバーが上限の18人に届いていないので、山京学園の方が長い列になる。
中学時代のライバル、凪と水穂はお互いを正面に見ていた。
水穂はにやにやと笑っているが、凪は無表情で見つめ返す。
主審が右手を挙げ、両チームが帽子を取って「お願いします!」と挨拶を交わした。
山京学園は全員がベンチに戻り、裾花清流は守備陣が各ポジションに散っていく。
鈴はマウンドまで行くと、軽く帽子を取って頭を下げ、それから上がった。