あなたと、私と、チームのための、
文字数 3,122文字
山京学園 310 00|4
裾花清流 330 0 |6
5回のウラ。
裾花清流は4番の岩見悠子から始まる。
悠子が右バッターボックスに入った。
初球、ストレートがアウトコースに決まった。
主審の右手が挙がってストライク。
次のボールは外のフォークボール。これはワンバウンドしてボールになった。
友里が外にかまえる。
雪原風日が外角にストレートを投げた。
悠子がピクッと反応したが、スイングはしない。見送ってボール。
悠子が踏み込んでフォークをすくい上げた。
右中間に大きな打球が飛ぶ。
ライトセンターが全力で追いかけていき、悠子は2塁を回ったところでストップする。
優が数回素振りをしてから左のバッターボックスに入る。
恵が「打て」と合図する。
山京バッテリーは外のストレートから入った。
優が積極的にスイングするも空振り。
2球目のストレートも振り遅れて、ギリギリのタイミングでファールになった。
初球はクイックだった。
しかし2球目は少しゆったりしたモーション。
ランナーの岩見悠子はあまり足が速くないので盗塁はないと見ていた。なので無理にクイックを使う必要はない。
風日は投球モーションの速さをわずかに変えて、バッターのタイミングを微妙に狂わせる。モーションスピードを段階に分けて投げ込む練習もしていた。
ややゆったりめのモーションから、緩いチェンジアップ。
ストレートを意識していた優は完全にタイミングを狂わされ、空振り三振に倒れた。
雪原風日の初球。
クイックから快速のストレートだ。
かけ声とともにスイング。
しかし打球は伸びず、レフトやや後方へのフライに終わった。
澪が右バッターボックスに入る。
大きく息を吐いて、かまえた。
風日は澪に対しても初球ストレートから入った。
澪が必死にスイングしたが、空振り。
2球目。
外角にストレート――しかし制球が甘く、真ん中に入ってきた。
フルスイングが完璧に芯を食って、高々と舞い上がった。
レフトに大きな弧を描いた打球は、ゆっくりと落ちていき――そして、ポールのわずか左側に飛び込んでいった。
風日が投げた。
チェンジアップが外角に沈んでくる。
ほとんど前のめりになりながらも、澪はバットを出していた。
腕力だけのスイング。
それでも、バットに当たった。
ふらふらっと打球が上がる。
ちょうど、セカンドとライトの中間点へ向かって。
セカンド九条真帆がダイビングする。
しかし、わずかに及ばなかった。
グローブの先端に当たったボールが芝生の上に落ちた。
すでに2アウト。
悠子は一気に3塁を蹴ってホームに突っ込んできていた。
返球は間に合わず、裾花清流に7点目が入った。
ベンチに戻る途中で、悠子は1塁に目をやった。
澪に向かって、控えめにサムズアップしてみせた。
澪は戻りきれなかった。
裾花清流ベンチがひっくり返る。
裾花清流ナインが守備に出ていく。
しょぼんとして戻ってきた澪に、悠子がグローブと帽子を渡した。