強敵の予感
文字数 4,120文字
白鳥月子が、みんなに頭を下げていた。
1年生が率先してバットやヘルメットを専用バッグに詰める。
鈴と澪だけはグラウンドに残ってダウンのキャッチボールをしていた。
新鋭の私立校、
裾花清流メンバーは、ひとまず応援団のもとへ向かう。
場内から出てきた学生や両親たちで構成された応援団。誰もが満足そうな表情で語り合っていた。
「よくやった!」「おめでとう!」「次も勝てよ!」といった声がかけられる。
二試合目は上田の開桜と、飯田の
どちらも私立で選手層の厚いチームだ。
裾花清流はバックネット裏、やや左上に席を取った。プレーする選手の目に入らない位置がいいだろうという恵の指示だ。
挨拶を交わし、開桜メンバーが守備に散った。
川船美咲は投球練習を明らかに軽めにこなしている。
川船美咲が振りかぶり、しなやかなモーションから初球を投じた。
長姫学園の先頭打者が見送ってストライクがコールされる。
投球練習とは比べ物にならないほど球威のあるストレートだった。
そして3球目――投じられた縦のスライダーにバットが空を切る。
三球三振。
2回表。
美咲は長姫学園の4番、桑島に対し、アウトコースにスライダーを2球続け、最後にインハイのストレートを投じて空振り三振を奪った。
圧巻の投球に一般席の観客がざわついている。
しかし、長姫学園の藤野も負けていない。開桜の中軸を全員内野ゴロに打ち取ってここもノーヒット。
試合は両エースの投げ合いになった。
3回にはともにチーム初ヒットが出たものの得点にはつながらない。
スコアボードにはゼロが連なっていく。
それは間違っていなかった。
5回ウラ。
長姫学園の藤野がこの試合初めてのフォアボールを出す。
開桜は3番に送りバントさせ、4番草壁に好機で回した。
そして草壁
藤野の甘く入ったフォークをすくいあげ、左中間に運ぶ。ランナーが悠々とホームに返ってきて開桜が先制。ついに試合が動いた。
そうしている間に、開桜は5番、6番に連打が出てこの回に3点を挙げた。
長姫学園にとっては致命傷になりうる失点だった。
最終回、7回の表。
長姫学園はツーアウトから4番のツーベースが出てランナーを2塁に置いている。続く5番に対して美咲がストレートで勝負にいく。
――しかし、ここで初めて美咲に失投が出た。
真ん中に入ったボールを痛打され、ライト前に運ばれる。
完封目前で1点を返された。
結局、5回の3点が決定打となり、3-1で開桜が初戦を突破。
二回戦は裾花清流対開桜の組み合わせに決まった。
3年生はすでに明日の練習のことを考えていた。
グラウンドでは挨拶が終わり、スタンドへの一礼も終わった。