プロローグ
文字数 907文字
6月下旬。
蒸し暑い天候の中、長野市営グラウンドでは中学女子野球の地区大会が行われていた。
浅川中学対
4対4の同点。
ワンアウトランナーは満塁。
三塁ランナーがホームに帰った瞬間、試合が終わる。
鈴はバッテリーを組んでいる
鈴はモーションに入った。
バッターは左。
右のサイドスローから外角低めいっぱいにストレートが走る。
ガッ、と鈍い音。
弱い打球がショートへ転がった。
ショートが捕球し、セカンドへ投げる。
――が、送球が逸れた。
セカンドが懸命にカバーして一塁ランナーはアウトになった。
しかしファーストへの送球まではできない。
その間に、三塁ランナーがホームを駆け抜けていた。
歓声が球場を支配する。
鈴は、喜び合っている相手のベンチを呆然と見つめていた。
整列のため、守備陣が戻ってくる。
悪送球したショートが、鈴の横を気まずそうに通った。
この試合から数ヶ月。
二人は