サンライズ・バッテリー
文字数 2,237文字
監督がホームへ行き、入れ違いで朝陽がマウンドにやってきた。
鈴はモーションに入る。
1球目。
外を狙った球が真ん中に入った。
礼のフルスイング。
快音が響き、ライトへ鋭いライナーが飛んだ。
しかし、ギリギリ線を外に割ってファールとなった。
鈴の2球目。
サイドスローから左バッターの外角に外れたボール――。
朝陽のサインに鈴は頷いた。
足を上げて3球目を投じる。
外角に緩いボールだ。
ガッ、と音がしてファールになった。
ボールは礼のバットの先端ギリギリに当たって三塁線に弱々しく転がる。
鈴はこくっと頷いた。
4球目を投げ込む。
今度は真ん中から左バッターの足元に落ちていくカーブ。
礼は軽くバットを寝かせた状態で見送った。
5球目は外角低めにストレートだ。
礼はピクッと反応したものの、きっちり見送った。
判定はボール。
これで2-2。
平行カウントになった。
鈴は深呼吸して、暴れる心音を押さえつける。
セットポジションを取り、今までより数秒長く間を置く。
そしてモーションに入った。
外角に緩いボール――
礼がスイングする。
だが、バットから音は響かなかった。
右投げの場合、カーブはピッチャーから見て左へ曲がりながら落ちていく。
対して、シンカーは右方向に曲がる。
左バッターの礼からすると、外へボールが逃げていく形になるのだ。
鈴と朝陽は同時に「はいっ!」と返事をした。