フルスピード！（VS上田第一）
文字数 3,046文字
ショートに弱い打球が転がる。
遊撃手がすばやく取ってファーストに送球。
裾花清流も打者２人でツーアウトになった。
（この人が要注意のキャプテン。慎重にね）
礼への初球は外角のチェンジアップから入った。
見送ってボール。
２球目は左バッターの外へ逃げるシュート。礼はこれも無反応で２ボールとなる。
礼がスイングした。
外の変化球を逆らわずレフト方向へ運ぶ。
ライナーが三遊間を破ってツーアウトランナー１塁となる。
４番、神村青葉が右打席に入った。
細身ではあるが、それは無駄な肉がついていないということだ。バットを軽々扱うところからも余裕が感じられる。
戸河雪菜が１球目を投げる。
ここも外角のストレートだ。
青葉が見送る。判定はストライク。
戸河雪菜がモーションに入る。
漆原礼が動いた。
青葉がセーフティーバントを試みる。
バットの先端でボールの勢いが殺された。
絶妙な弱さの打球が３塁線上に転がる。
野手が完全に意表を突かれていた。
戸河雪菜が取ってファーストへ送る。しかし神村青葉も俊足だ。１塁はセーフとなった。
ボールがファーストへ送られたのを見て、礼は迷わず２塁を蹴っていた。
ファーストの安堂秋穂がサードへ送球するが、間に合わずオールセーフ。
礼は青葉がバントする前から走り出していたので３塁到達も早かった。
５番の岩見悠子が右打席に入った。
花岡里香はセカンドへ投げようとしたが、３塁ランナーの礼が隙を突いてホームへ走ってくる姿勢を見せたので途中で止めた。
これでツーアウト２、３塁だ。
２球目。
岩見悠子のバットが真ん中低めのストレートを捉えた。
打球が１、２塁間を抜けていく。
まず礼がホームインし、神村青葉も返ってくる。青葉は外野からの好返球でタイミング的に少々厳しかったが、判定はセーフとなった。
キン、と快音。
左バッターの漆原優が強烈に引っ張り、右中間を破る。
岩見悠子が１塁から一気に返ってきた。
７番、右打者の赤羽夕日が初球を叩いた。
外角から内へ食い込んでくるシュートを振り切ってセンター前へ運ぶ。
漆原優が快足を飛ばしてまたも生還。
ツーアウトから一挙４点を叩き出した。
いいぞ～！
裾花清流がんばれ～！
２回表。
上田第一高校の攻撃は４番キャッチャーの花岡里香だ。大きな構えの右打者である。
澪はストレートを相手の膝元に投げ込む。
花岡里香がスイングした。バットの先端に当たってファールチップになる。
澪が振りかぶる。
３球目がすさまじい伸びを見せた。
花岡里香のバットが空を切る。
澪が投げたのは内角高めのストレートだった。
低めを続けるとバッターの視線はどうしても下を向くので、高めに速球が伸びてくるとあごが上がり、反射的に手を出しやすくなってしまうのだ。
ミットの音が響く。
澪が５番バッターを空振り三振に取る。
悠子が主審に、バットが回ったとアピールする。
主審は１塁の塁審に判定を求めた。
判定を求められた１塁塁審の右手が――挙がった。
