スライダーを打ってみよう
文字数 2,100文字
野球部の部室で、松原雅が言った。
放課後。
今日は二回戦を想定した練習を行う予定だ。
野球部はグラウンドに入ってアップを開始した。
ランニング、体操、ストレッチ、ダッシュ、キャッチボール。いつものメニューをこなしていく。
途中で緋田恵が入ってきた。
澪が肩を温めている間に、守備練習を行う。
3塁側で澪と悠子が、1塁側で鈴と朝陽が投球練習をしている。
鈴は昨日の感覚を思い出しながら投げた。
ストレートが走っている気がする。
カーブ、シンカーもしっかりコーナーにコントロールできている。
状態はけっして悪くない。
さらに、新球種のシュートもしっかり投げ込んでおく。かなり感覚が掴めてきて、日に日に精度は高まっている。
昨日は投げなかったので、シュートの情報を相手に与えずに済んだ。
悠子はここ一番で使いたいと言っている。
その時ちゃんと投げられるよう、特にこのボールは意識して投げている。
守備練習が一通り終わると、打撃練習の用意に入った。
マウンドにネットが立てられる。
マシンは使わず、澪がそこに立つ。
澪は桜に対してストレートを2球ほど見せたあと、スライダーに切り換えた。
まずはボールゾーンから外角に入ってくるコース。
次は真ん中からインコース低めに決まるコース。
丁寧なコントロールで投げ込む。
澪は縦のスライダーこそ投げられないものの、変化球の速度自体はかなり速い。そのため川船美咲を想定した打撃練習ではとてもありがたい存在だった。
桜は外のスライダーには対応したものの、インコースはうまく捉えることができない。ファールになったり内野ゴロになったりだ。
澪はその後もレギュラー陣に対しスライダーとストレート中心の投球を行った。
疲労を考えて投球数は最小限に抑える。
そのため一人3、4球、多くても6球までの勝負だ。
その短さがかえってバッターの集中力を生む。
制限された中できっちり打ち返せるか。
全員がよく意識してスイングした。
道具を片づけると、野球部はダウンに移った。
ランニングと体操をこなして、グラウンド整備を行って撤収する。
鈴はハキハキと答えた。
昨日の登板でさらに自信がついたのは間違いない。
明日の登板もほぼ確定している。
今度は無失点で終わらせたい、と鈴は強く思った。