声が足りないぞ!
文字数 2,806文字
山京学園 310 00|4
裾花清流 330 01|7
6回表。
山京学園は6番の
澪はストレート主体で攻めていった。
初球、2球目と続けて外角に投げ込む。
鈴のボールのイメージがあるせいか、真澄は合わせるのが精一杯。
空振り、ファールで2ストライクと追い込まれた。
外角のスライダー。
外へ逃げていくボールに、真澄のバットは届かなかった。
第1球。
雪原風日に対しても、澪と悠子のバッテリーは外角ストレートから入る。
風日が見送ってストライク。
快速球でカウントを奪う新海澪。
山京学園ベンチは攻略の糸口を探そうと、みんなマウンドを見つめている。
3球目。
外のチェンジアップ。
緩いボールに手を出してしまった風日は、ボテボテのピッチャーゴロに倒れた。
友里がともに戦ってきた山京学園のメンバーはいつだって強気だった。
強気すぎて時には生意気だと言われることもあったが、誰もが自信を持って野球と向き合っていた。
今日の仲間たちは違う。
噛み合わない投打と、相手エースの投球に呑まれている。
ベンチはいつもより明らかに声が出ていない。
友里はそんな仲間たちに苛立ちを覚えていた。
澪の初球はチェンジアップだった。
ここまではすべて、初球ストレート。だがここは、あえて緩い球を使った。
友里のスイングが変化球を捉えた。
強烈な打球が一、二塁間を襲う。
桜が横っ跳びで打球を押さえた。
しかし飛び込んだ体勢が悪く、すぐには送球できない。
桜がトスでファーストへ送球する。
友里がヘッドスライディングで飛び込んでくる。
山京学園のベンチが一気に活気づいた。
9番の浜野忍に対して声援が送られる。
悠子はあまり心配していなかった。
ストレートも変化球も、コントロール抜群。
今日の澪は、間違いなく今大会で一番調子がいい。
9番の浜野忍にも、澪は攻めの姿勢を貫いた。
インコースへのストレートを2球続ける。
2球目が外れてカウントは1-1。
3球目。
一転して外へのスライダーにバッターが手を出した。
バットの先端に当たってファーストへの弱い当たりになる。
赤羽夕日が前進してボールを捕球。
空いた1塁には澪がカバーに走って、夕日からのトスを受け取った。
そのままファーストベースを右足で踏む。
ベンチ前の円陣が解ける前に、先頭バッターの奈緒が打っていた。
しかしライトフライ。
あっさり1アウトだ。
ラストバッターの水崎美晴は空振り三振。
ツーアウト。
ガッ、と音がしてボールが転がる。
桜は2球目のフォークを引っかけてセカンドゴロに終わった。
6回ウラ、裾花清流の攻撃は三者凡退に終わった。
あとは7回を残すのみとなった。