第11話 湖底に続く道

文字数 4,781文字

 無意識に思念を(つな)げていたディヴィルガムを通じて、脳内にロキシーの(かしこ)まった声音が響いた。
 カリムは小さく(うなず)くと、茂みに身を(ひそ)めている間に作った松明(たいまつ)に着火しようと身を(かが)めた。

 だがその(かたわ)らを通過して氷穴(ひょうけつ)に侵入した菫色(すみれいろ)(もや)が、果てしなく思えるような暗闇へと(いざな)う階段を(ほの)かに照らした。


『ここからは私が先導致します。その松明(たいまつ)は…どうぞ帰路(きろ)()くまで温存なさってください。』


 (おぼろ)げな(もや)にしか見えない奇妙な存在だったが、カリムの目には白黒のエプロンドレスを(まと)いお辞儀をするロキシーの姿が不思議とその菫色(すみれいろ)の中に映し出されていた。
 
 すると(にぶ)くなっていた脚も自然と軽さを取り戻し、カリムはディヴィルガムと松明(たいまつ)をそれぞれ両手に握りしめながら氷穴(ひょうけつ)へと一歩を踏み出した。



 氷で繰り抜かれた穴にはアーレアの地下でクランメと最期(さいご)のやり取りを交わした際に(もぐ)ったことがあったが、水中を突き進む氷の通路など生涯(しょうがい)歩くことはないのだろうと、カリムは息を呑んでいた。

 壊月彗星(かいげつすいせい)から注がれる光が水面(みなも)揺蕩(たゆた)い、それが氷穴(ひょうけつ)の天井を屈折(くっせつ)して幻想的な(きら)めきを創出していた。分厚い氷壁(ひょうへき)の奥には、魚らしき影が(いく)つか揺らめいているのが(わか)った。

 
 だが氷の階段を(くだ)るに連れて天井の(きら)めきが遠くなり、間もなくして冷たい暗闇の中を歩いているも同然となった。
 
 只管(ひたすら)に単調な足音と呼吸だけが響く暗闇に(もぐ)っていると、どれだけ時間が経ったのかも(わか)らず、まるで現実世界から足を踏み外したかのように、自分が何者なのかを忘失してしまいそうな気がした。
 数段先を先行し足元を照らす菫色(すみれいろ)(もや)だけが、唯一自分の存在を証明し続けてくれているように思えた。


 他方でロキシーは氷穴(ひょうけつ)の入口で声を掛けて以来、黙々と階段を(くだ)っていた。

 カリムには彼女がどんな表情をしているのか、どこに顔を向けているのかも(わか)らなかったが、(はや)る足並みを制するように先導しようとする意思は確かに伝わってきていた。
 クランメの魔力を信頼していないわけではなかったが、湖底へと続く氷穴(ひょうけつ)がどれだけ存続し得るのかという不安が、カリムの心の中で今一(いまいち)(ぬぐ)い切れなかった。


——湖の底までロキシーが付き添うことはリヴィアさんとピオニー隊長に事前に伝えられていたけど、それはロキシーの方でも個別に指示を受けているということでもある。俺としてはもう少し足を早めてもいいんだが…あの人には何か俺に見えないものが見えていたりするのだろうか。



 (かつ)てこのセントラムの地でロキシーに篭絡(ろうらく)された記憶が、カリムの脳裏(のうり)の片隅にこびり付いたままであった。
 根暗(ねくら)で控えめな印象に(ひそ)妖艶(ようえん)で束縛的な本性が——それが『淫蕩(いんとう)の悪魔』に感化されたものであったとしても、改めて関わりを持つことには(しこ)りが(さわ)るような抵抗感があった。

 数時間前もトレラントの前で再会し泣きながら(まと)わり付かれた時には、全身が硬直して(しば)し口を()けなくなってしまっていた。
 彼女から毒が漏れ出ていたことが一因だった可能性もあるが、それ(ゆえ)安易(あんい)なやり取りによって彼女の感情が空回りし、再び毒に(おか)されるのではないかという懸念(けねん)もあった。

 
 とはいえルーシー・ドランジアとの接触にはロキシーの力添えが必要だとクランメに推奨(すいしょう)されていたこともあり、現に彼女がこうして先導してくれることが精神的な一助(いちじょ)にもなっていた。
 
 カリムはディヴィルガムを握り直しながら——調査員として初めて彼女に接触したことを思い起こしながら、辿々(たどたど)しく問いかけた。


「あの…ロキシーさん。貴女(あなた)には…見えているんですか? この階段の、終着点が…。」


 暗い氷穴(ひょうけつ)の中で震えた声音が反響したことに、カリムは疑問を投げかけてから気付いた。
 ディヴィルガムを通じて念じなければ向こうの世界に()る悪魔の『宿主』とは接触出来(でき)ないと(わか)っていたにも(かかわ)らず、何気なく話しかけるように言葉を発していた。


『ええ、見えております。リヴィア様の(おっしゃ)った通り、金色の奔流(ほんりゅう)が吸い寄せられる先に一際(ひときわ)(まぶ)しく輝く光が見えています。』


 だがロキシーには(しっか)りと杖を通じて言葉が届いていたようで、進行速度を緩めることなくカリムの脳内に返事を寄越(よこ)してきた。


(もっと)も、()だ半分近く距離があるようですが。リヴィア様は、(およ)そ30階ほど階段を昇降(しょうこう)するような道程(みちのり)になるだろうと概算しておられました。』


 尚且(なおか)つカリムの不安と焦燥(しょうそう)を感知したかのように、クランメから聞かされていなかった情報を補足してきた。

 カリムは30階にも(そび)える建物など皆目(かいもく)想像も出来(でき)ず、態々(わざわざ)距離を意識することのないようクランメに気を(つか)われていたことを察し顔を(しか)めた。

 それでもこうして何気ない会話が出来(でき)る安心感が遠退(とおの)きそうな気力を引き留め、重く震えそうな脚を止めることなく前へと推し進めていた。


「ロキシーさんは…よく暗闇の中を易々(やすやす)と降りられますね。」


『いえ、実は私の目には真っ白に映っているのです。地上で見た湖面は真っ黒だったのですが…この世界はまるで光と(かげ)が反転したように出来(でき)ていて、現実世界で光が届かないはずの湖底が、(くだ)れば(くだ)るほど白く鮮明になっていくのです。だからこそカリム様を先導すべきなのだと…これもリヴィア様からの御指示なのです。』


「やっぱり流石(さすが)ですね…あの人の頭脳と経験がなかったら、ここまで万全を期すにも至らなかったかもしれないですね。」


『…リヴィア様だけではありません。同じ悪魔を宿したという方々のうち誰1人が欠けても、このような奇跡は生み出されなかったでしょう。それに引き換え私は……何をすべきかも(わか)らないまま意識を失い、お(つか)えしていた御方(おかた)の荷物となるばかりで……。』


 ロキシーの台詞(せりふ)尻窄(しりすぼ)みになるに連れ、カリムの前を行く菫色(すみれいろ)(もや)もまた動きが(にぶ)り、程なくして静止してしまった。

 見た目の(ほの)かな輝きに変化はなかったが、明らかに向こうの世界に()るロキシーが何らかの原因で足を止めてしまったことを察した。
 だがディヴィルガムに意識を集中させても何も聞こえず、カリムは途切(とぎ)れた台詞(せりふ)から彼女の心境を推し(はか)るしかなかった。


「俺はそちらの世界での出来事(できごと)を、(ほとん)ど何も聞いていません。でもロキシーさん、貴女(あなた)(みんな)に必要とされたからこうして送り出されているのでしょう。現に俺も、貴女(あなた)の存在が今はとても心強いと感じています。ですから自分を卑下(ひげ)する必要なんて何も……。」


『…ありがとうございます。ですが、私はあの場に()

のです。』


 カリムが事態を動かそうと語り掛けていると、ロキシーの低い声音が(さえぎ)ってきた。その言葉の意味を捉えかねて一瞬(ひる)んだが、ロキシーが立て続けに打ち明けてきた。


『私がカリム様を先導する役目は、カリム様達が湖畔に降り立つ前にリヴィア様とピオニー様より(おお)せつかったもので…後から合流したカリム様を除く御三方(おさんかた)には最後まで伏せられていたのです。計画を穏便に進めるために…いえ、もしかしたらアヴァリー様はご存知だったかもしれません。』

『いずれにせよ、最期(さいご)の最後で嘘を並べて裏切った相手がいるのは確かなのです。こんな私にも気さくに接してくれる人と、生まれて初めて巡り会えたと思ったのに……そんな御方(おかた)を…私は……。』



 再びロキシーの台詞(せりふ)途切(とぎ)れがちになり、カリムは悄然(しょうぜん)とした菫色(すみれいろ)(もや)に掛けるべき言葉を(ひね)り出せず立ち尽くした。

 湖畔で身を隠しているうちは度々(たびたび)『宿主』達の様子を(うかが)っていたが、菫色(すみれいろ)(もや)は常に空色(そらいろ)(もや)と隣り合っているのを見ていた。
 空色(そらいろ)で思い出すのはネリネ・エクレットに化けたリリアン・ヴァニタスの瞳であり、(よわい)の近しい者同士関係性を築いていたのではないかとカリムは推察した。

 とはいえロキシーは最終的に自分に協力することと引き換えに不本意を甘受(かんじゅ)していることから、カリムは相変わらず(なぐさ)める余地を見出(みいだ)せなかった。
 表情も態度も判然としないなかロキシーは淡々と先導しているようで、その(じつ)悲痛な後ろめたさを引き()っていることを今になって理解していた。


『…申し訳ございません。先を急ぎましょう。』


 (しばら)くしてロキシーの感情を押し殺したような声音が響き、菫色(すみれいろ)(もや)が再び氷穴(ひょうけつ)(くだ)り始めた。

 カリムは(ほの)かに照らされる足元を滑らないよう追い掛けながら、夢中で呼び止めるように声を掛けた。


「ロキシーさん! 何か俺に出来(でき)ることは…(こた)えられることはありますか!?」


 思ってもいない声量が氷穴(ひょうけつ)に充満し、カリムは腰を抜かしそうになった。
 一方で菫色(すみれいろ)(もや)はまた静かにその場で制止したが、その提案をどのように受け止めたのか、こちらを振り向いているのかすら当然に知る(よし)もなかった。

 ロキシーが(いだ)く悪徳の矛先が依然として自分に向けられている以上、下手な要求を許容して毒を(ともな)う暴走が生じるような顛末(てんまつ)は避けなければならなかった。
 だが仮にこれが愚策(ぐさく)だとしても、ただ1人消滅せず付き添ってくれる彼女に何らかの形で(むく)いるべきだと判断していた。


——『宿主』達に協力を(あお)いだ手前、甘んじる一辺倒(いっぺんとう)になるべきじゃない。本当なら全員に直接礼を伝えて回るべきだったのに、結局(しげ)みに押し込められたまま(みな)の消滅を傍観してしまった。そんな俺が向こうの世界で(ひと)り残されたロキシーの助力を積極的に得るためには…俺の方から踏み込んでいかなきゃならない。



『…お気持ちには感謝致します、カリム様。それでは、2点ほどお尋ねさせていただいても(よろ)しいでしょうか。降りながらで構いませんので…。』


 ロキシーから届いた返事は、それまでと大差ないような静かな口振りであった。

 カリムはゆっくりと動き出した菫色(すみれいろ)(もや)をもう一度追随(ついずい)していったが、ロキシーは口籠(くちごも)っているのか提示した2つの問いは()ぐに提示されなかった。


『まず1つ目なんですが……その…カリム様には今、意中の方がいらっしゃるのですか。』



 (ようや)脳裏(のうり)に浮かび上がった問いの1つに、カリムは呆気(あっけ)にとられた。

 (かつ)篭絡(ろうらく)を試みた彼女らしい問いが真っ(こう)から投げ掛けられただけでなく、その返答に間誤付(まごつ)いている自分自身にも驚き呆れていた。


「…正直、(わか)らないですね。生まれてこの方恋愛なんてしたことはないですが…少しの間でも一緒に行動して励まされて…それが(わず)かでも心の支えになったという異性ならいました。」


『その異性の方というのは…私の命を奪ったあの栗毛の女性なのですか。』


 (ひね)り出した答えにロキシーが食い気味に問い返して来たので、カリムは思わず口を(つぐ)んだ。
 彼女がサキナを意識していることは明らかであったが、曖昧(あいまい)誤魔化(ごまか)すことは逆効果であるように思えて渋々(しぶしぶ)釈明した。


「そうです。貴女(あなた)を討った後も、他の悪魔の『封印』のため(しば)し行動を共にしていました。」


『あのときカリム様を肉壁に仕立てた分際(ぶんざい)で差し出がましいのですが…あの女性は目的のために容赦なくカリム様を切り捨てようとしておられました。それにも(かかわ)らず親睦(しんぼく)を深めることが出来(でき)たと(おっしゃ)るのですか。』


「あのあと本部で上官に…ドランジア議長に(しぼ)られましてね。でもその後は互いの境遇を知って、同じ目的を目指す上で多少なりとも打ち解けられた…と思います。」


『その女性の方は、今どうしておられるのですか。少なくとも、協力して動いているようには(うかが)えませんが。』


「色々あってリヴィアさんの氷結に埋もれて、気を失いまして…今は安静にしているはずです。」


『そうなんですか……では無事に地上へ帰還して、見舞いに向かわねばなりませんね。』


 ロキシーの(つぶや)くような推奨を受けたカリムは、自然と気が遠くなるような感覚に呑まれた。だがその沈黙が不可解に取られたのか、()かさずロキシーが(いぶか)しんできた。


『…カリム様、如何(いかが)なさいましたか。その御方(おかた)が心配ではないのですか。』


 口を付けず冷めた紅茶を指摘された時のような得体の知れない圧力が、その追及と共にカリムに犇々(ひしひし)と伝わってきていた。
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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