第13話 高慢なる者

文字数 6,013文字


 カリムには身体を離れた菫色(すみれいろ)(もや)が山なりに投射されたように見え、暗闇の奥に向かって一筋の軌跡(きせき)を描いたそれは(かす)かに浮かぶ輪郭(りんかく)を間もなく捉えた。

 次の瞬間、その輪郭(りんかく)亀裂(きれつ)が入るように青白い閃光(せんこう)(はし)ると、共鳴するが(ごと)く地表から天井に至るまでが盛大に震動した。


 立つことも(まま)ならず前のめりに倒れたカリムだったが、柔らかな地面に手を付く前に何か空気的な反発を受けた。浮き上がった全身はあらゆる角度から圧迫され、空間内を揉まれるように(あお)られていった。

 暗闇の中で上下左右も(わか)らず()ね繰り回されるカリムは、ディヴィルガムを両手で握り締めながら、酔って散漫になる思考を必死で(まと)めようとした。


『せやけど『魔力の(はこ)』を破壊するような強烈な毒は、ドランジアに致命傷を負わせることにもなりかねない…うちにもその絶妙な境界線まで見極められへんし、最終的にはロキシーの(さじ)加減になる。』

『結果はどうであれ責められへんけど、毒が致命傷になればなるほど奴の魔力は暴走しかねない。最悪うちの氷結も破壊されて(きみ)も助からんかもしれへん。どないな最善策を(ひね)り出しても、結局は死と隣り合わせの危険が付いてくるんや。』


 クランメに釘を刺された通り、カリムは(かつ)てないほどに死線を彷徨(さまよ)っていた。
 (ひと)り暗闇の中を振り回されて身体の自由が()かず、湧き上がるような地鳴りも()まず、乱れる圧力でいつ氷壁が内側から崩壊するかも(わか)らない恐怖に()り立てられていた。


——覚悟はしていた…けど……これじゃあ…もう…何が何だか……!?


『それだけドランジアが()した覚悟が…その正当性は別にしても、他の誰にも計り知れへんっちゅうことや。カリム君、(きみ)の歩もうとしとる未来は、それを(しの)ぐ覚悟が求められるんやで。』


 成す(すべ)がないなか立て続けにクランメの台詞(せりふ)が脳内で再生されると、カリム自身が答えた言葉もまた自然と思い起こされた。


——「(わか)っています。…それに、そういう意味なら尚更(なおさら)俺がやらないと駄目だと思います。」



 そのとき、カリムの真っ黒な視界に金色の光が(よぎ)った。

 不規則に空間を動いているのはカリム自身であったが、暗闇に(とも)(ほの)かな金色が(まさ)しく追い求めていた存在であると察した。
 ディヴィルガムの先端を(ひたい)に押し付けながら意識を集中させようと努め、その一方で両眼(りょうめ)(しか)と見開いてもう一度金色の光を捉えようとした。


——あれこそがルーシー・ドランジア…悪魔の『宿主』達と同じ(もや)のような、隕石の力を通じて可視化された姿なんだ。

——あの光にもっと近付かなきゃならない、辿(たど)り着かなきゃならない。障害となる壁は全部壊したんだ…『宿主』の(みな)の力と、命と、想いを(つな)げて。


——それでも最後に俺が手を届かせなければ、何1つとして意味を成し得ない。こんなところで無様(ぶざま)に終わるわけにはいかないんだ。

——頼む、届いてくれ…どうか俺と話をしてくれ……ルーシー伯母(おば)さん…!!


 すると再び金色の光が、先程よりも大きく視界に映った。同時にその輝きの奥から更に鋭い一筋の光が射出され、ディヴィルガムの先端を突き抜けてカリムの眉間(みけん)を貫いた。

 (さなが)ら蛇に(にら)まれたように全身が硬直し、(ゆが)み続ける空間の中で一瞬時が止まったような奇妙な感覚に(おちい)った。
 カリムは射抜かれた光線に意識ごと突き飛ばされそうな危機を察したが、その(つな)

、負けじと金色の光を凝視し返した。

 何が何でも喰らい付こうとする雄叫(おたけ)びのような大声が、半球状の空間に反響していた。

 (やが)て金色の光が突如(とつじょ)膨張し、カリムは目の前が真っ白になった。




『まったく、(おろ)かな甥子(おいご)だ。おまえの(ひと)()がりで、ラ・クリマス大陸は再び平和から遠ざかる。悪魔に民の生命(いのち)(おびや)かされ、厄災が振り撒かれる呪われた時代が続くだろう。おまえはその責任を、一体どう背負うつもりだ?』


 ぼやけていた焦点をゆっくりと戻すと、カリムは真っ白な空間で大きな金色の(もや)対峙(たいじ)していることを理解した。

 浮いているのか立っているのか(わか)らなかったが、ここがドールと対話したときと似た

のような場所なのだろうと推測した。

 そしてディヴィルガムを通じて聞こえてくる低く淡々とした声音は、(まぎ)れもなくルーシー・ドランジアのものであった。
 悪魔の『宿主』と同じような靄状(もやじょう)の存在として目の前に現れたルーシーが、野望を打ち砕いた理由を忌々(いまいま)しく追及していた。


『それとも、何事もなかったかのように自由な日常へと(おど)り出るつもりなのか?』


 挑発的な問いかけにカリムは思わず口を(とが)らせかけたが、論争を繰り広げるために来たわけではないと(すんで)の所で(こら)え、心を落ち着かせながら答えた。


「確かに、素知(そし)らぬ顔で日常に戻ることは出来(でき)る。貴女(あなた)が湖の底で成し()げようとしたことは、恐らく俺以外の誰も知らないだろうから。でも俺は、(すべ)てをなかったことにするためにここに来たわけじゃない。(むし)ろ逆だ。俺はこれまでの(すべ)てに意味を見出(みいだ)したい。そして…貴女(あなた)とは別のやり方で、厄災の無い世界を実現させたい。」


『ほう…。そこまで(のたま)うからには、具体的な計画があるんだろうな。』


「リヴィアさんから聞いた…この大陸で厄災が繰り返される原因は2つある。周期的に(めぐ)壊月彗星(かいげつすいせい)から降り注ぐ魔素(まそ)と、湖の底深くに埋まっていると(おぼ)しき巨大隕石、この2つに()る半永久的な相互作用だ。だからこのうちどちらかを破壊するなりして、無効化すればいいんだ。」


『それで? おまえは天と地のどちらを破壊する方が現実的だと考えている?』


「それは……そこまでは、俺だけじゃ何とも言えない。」



 カリムが受け答えに詰まると、金色の(もや)からは乾いた笑い声が漂ってきた。

 (かつ)ての上官から一度も聞いたことのない反応は、表情すら(わか)らないにも(かかわ)らず不敵で気圧(けお)されそうだった。


『そんな机上(きじょう)の空論は私も、恐らくクランメの奴も一度は思い浮かべている。湖の底を掘り返そうものなら、我が国の産業の中枢(ちゅうすう)が犠牲になる。(たと)え巨大隕石が発掘されたとしても到底(とうてい)利害は釣り合わないだろう。他方で壊月彗星(かいげつすいせい)を破壊しようものなら、宇宙進出という前人未到(ぜんじんみとう)の技術を先駆(さきが)けたうえで、諸外国も照らす闇夜(やみよ)(ともしび)を奪い去ることになる。』

『そもそも魔素(まそ)という物質の存在すら認識出来(でき)る者は稀有(けう)であり、厄災の火種になっているなど周知のしようがない。だから私は生来与えられた権威と尊厳を利用し、魔力掌握(しょうあく)の技術を(つちか)い、厄災の無い世界を実現するための第3の選択肢を見出(みいだ)した。それを果たせるのは私しかいなかった。』

『これ以上民の誰も悪魔に(さいな)まれず、悪魔は自然と滅びたのだと思わせ…いや、その歴史すら忘れ去られるよう(ひそ)やかに人柱(ひとばしら)となる必要があった。それなのにおまえは…稚拙(ちせつ)な理想と半端な覚悟で、私が積み上げてきた(すべ)てを踏み(にじ)ったのだ。』


 次第に嘲笑(ちょうしょう)怨嗟(えんさ)へと転じ、金色の(もや)は燃え盛るように膨れ上がった。その勢いに(あお)られて何かが()ぜたような、小さく弾ける音が聞こえた。

 だがカリムはそうした追及を差し向けられることを甘受(かんじゅ)しつつ、(ひる)むことなく言葉をぶつけた。


「そうじゃないだろ…どうしてそれだけの立場と力を持っていながら、真実を(ほとん)ど誰にも共有しなかったんだ。どうして『(かげ)の部隊』やリヴィアさんですら、目的を果たすための手段以上に重用(ちょうよう)しなかったんだ。どうして自分の力だけで、(すべ)てを解決しようとしたんだよ。」


『真実を周知させる方が(あや)ういと判断したからだ。仮に魔素(まそ)の存在が明かされれば、悪魔の顕現を恐れた女の民は大陸から亡命し、国家も文明も成り立たなくなるだろう。古き思想を再興させつつあったグレーダン教が反発し揉み消そうとする一方で、民の不安の受け皿を買って議会の主導権を奪取(だっしゅ)する(おそれ)も充分に考えられた。』

『おまえは私の威厳と指導力を(もっ)て長期的な計画を組み立てるべきだったと諫言(かんげん)したいのだろうが、そんなものは所詮(しょせん)誰にでも言える理想論に過ぎない。』


誤魔化(ごまか)すなよ…貴女(あなた)はあの事件で生き残った俺と縁を切ったその時から、自分が(ひと)りで(すべ)てを終わらせることを決意していたんじゃないのか? だから解消すべき諸問題を(いく)つも受け流して、協力者も犠牲にした『宿主』も、(すべか)らく手駒(てごま)としてしか見做(みな)さなかったんだろ!?」



 カリムが(たた)み掛けると、真白(ましろ)の空間には(わず)かな沈黙が訪れた。金色の(もや)は変わらずに揺らめいていたが、(やが)て静かに語り掛けてきた。


『確かにその指摘に間違いはない。宿命に惑わされて無様(ぶざま)に崩壊した家系に終止符を打つため、おまえとは縁を切り(みずか)らの手で(すべ)てを終わらせようとした。記憶を失くしたおまえは、悪魔も厄災も知ることなく自由に人生を送ればいいと当時の私は考えたんだ。』


「…じゃあ、どうしてグリセーオで俺を拾ったんだ? 『封印』計画の最前線に立たせた挙句(あげく)、ドランジアの系譜(けいふ)だと暴露(ばくろ)させたんだ?」


『どうだかな…それなりに月日が経って、物事の捉え方も変わっていた。ただあの日瓦礫(がれき)に埋もれたおまえの瞳を見て…おまえだけは(すべ)てを知っていて欲しいと欲張ってしまったのだろうな。(すべ)てを知ったうえで最後には諦めて欲しい…そう願ってしまったのだろう。』



「でも、結局俺は貴女(あなた)の思う通りにはならなかった。」


『そうだな。やはりステラを巻き込んでしまったことが原因か…いや、思い付く要因は(いく)つもある。短くも長かった時の(めぐ)り合わせ、積み重ね…それらがおまえの心を変えていったのだろう。最終的には悪魔の『宿主』達を味方につけてまで私の元へ辿(たど)り着いたのだから、(わか)らないものだな。』


「…貴女(あなた)は『封印』と称して犠牲にした『宿主』達が、亡霊のように生き(なが)らえることを知っていたのか?」


『別に彼女達が亡霊になろうがなるまいが関係はなかった…(ゆえ)に想定などしていなかった。クランメの封瓶が奇跡的な副作用を生んだのか、本当に創世の神が私を罰しようと奇跡を起こしたのか…。だがおまえがディヴィルガムの、いや隕石の(しん)なる力に気付き、使い(こな)したことは確かだと言える。』

『ここからは私の推察になるが…千年前に降り注いだ隕石とは、所謂(いわゆる)願い星のようなものだったのではないかと考えている。創世の神が()としたのではない、大陸で(しいた)げられていた女性達が大いなる力を求めて願い、引き寄せたものではないか…とな。』



 ルーシーが唐突(とうとつ)に隕石についての持論を語り出し、カリムは呆気(あっけ)にとられながらその論調を追い掛けた。


『より厳密に言うなれば…女性達に(ひそ)む悪魔が呼び寄せたのだろう。』


「どういうことだ?…それが伝承される7体のラ・クリマスの悪魔、とでもいうのか?」


『いや、そもそも悪魔は7体だけではない…人の数だけ存在する。誰の心にも()み付いていると言うべきだ。私にも、おまえにもな。』
 


 だがその台詞(せりふ)を聞いたカリムは、爪先(つまさき)(すく)われ勢いよくひっくり返されたような驚愕(きょうがく)を覚えて益々(ますます)要領を得なくなってきていた。


「何だよそれ…悪魔が7体だからグレーダンが定めた(いまし)めも7つだったんだろう? それに悪魔は女性にしか顕現し得ないって言ったはずじゃ!?」


(しいた)げられし女性に(ひそ)む悪魔が厄災を引き起こす魔力を半永久的に得るために、巨大隕石と壊月彗星(かいげつしそう)という二重構造を作り上げたのだとすれば、元より男性は魔力を操る素質(そしつ)を持ち得ない…悪魔が顕現する余地がないと言える。』

『だが隕石は絶えず魔素(まそ)を吸収するという使命を負っているとはいえ、それ自体は

結晶なのだ。強い意思を持ち合わせれば、男性でも魔力に干渉することが出来(でき)る…グレーダンは恐らくそのことに気付いたのだろう。そしてそれを教唆(きょうさ)したのは、グレーダン自身に(ひそ)む悪魔だったのだろう。そう仮定すれば…奴が創世の神に罰せられたという口伝(くでん)にも合点(がてん)がいく。』

『他方で、悪魔が7体とは限らないと証明することは容易(たやす)い…私を見れば明らかだろう。』


「それは、そうだけど……どうして7体だけだと言い伝えられている?」


『元より千年前の話だ。被害の際立(きわだ)つ悪徳のみを(いまし)めとして特筆したのかもしれないが、いずれにせよ新興したグレーダン教が何百年に(わた)り倫理道徳を掲揚(けいよう)する過程で、7つの悪徳とそれらに起因する厄災以外の怪奇現象を厄災として認容せず観測しなかったことは充分に考えられる。』

『本当は悪魔が(はぐく)まれるような悪徳は多様性に富み、今も大陸のどこかで不可思議な力を生み出す女性がいるのかもしれないな。』


「じゃあ、貴女(あなた)(いだ)いた悪徳とは一体……!?」


『そうだな……先程は「宿命に惑わされて無様(ぶざま)に崩壊した家系に終止符を打つ」などと言ったが、あの頃の私は同時に神に向かって激しい憎悪(ぞうお)を煮え(たぎ)らせていたのだ。このような命運を(もたら)した神を、悪魔を放置する神を(うら)み、世界そのものを作り変えようと(たくら)んだ。』

『そのときに初めて私の中の悪魔が覚醒(かくせい)し、魔力が芽生えた。()えて名付けるなら…『高慢(こうまん)の悪魔』とでも呼ぼう。そしてその系譜(けいふ)はグレーダンに始まり…きっとおまえの心にも同じ悪魔が(ひそ)んでいることだろう。』



 これまでの一連の言動を包括(ほうかつ)するように指摘され、カリムは押し黙った。
 
 ドランジアという血筋を免罪符(めんざいふ)にしつつ(みずか)らを突き動かしていたはずが、結局はそれが伯母(おば)と同じ『高慢(こうまん)』が原点だったのだとすれば、これほど皮肉なことはないと思い知らされていた。


『…さて、私は大方(おおかた)語り残すことはないつもりだが、おまえはどうなんだ?』


「えっ!? それはどういう……!?」


 (おもむろ)に対話を締め(くく)るような口振りにカリムは虚を突かれたが、そのときまたも何かが小さく弾けるような音が聞こえた。

 その方を辿(たど)ってディヴィルガムに視線を落とすと、先端部分に着装された隕石に深々と亀裂(きれつ)が入っていることに気付いた。
 
 絶句(ぜっく)している間にも、罅割(ひびわ)れは更に深刻化しつつあった。


「そんな…!? これが壊れたら、俺は……!!」


『二度と厄災を(しず)めることも、『宿主』の(たましい)(とど)めることも…意思を(つな)げることも出来(でき)なくなる。元より亡霊のような存在と対話すること自体…人には過ぎたる『願い』だったのだろう。それに私自身…もう消滅までの猶予(ゆうよ)は…残されていない。』



 代弁するように台詞(せりふ)(つな)げたルーシーの声音が、カリムには(すで)に遠く小さくなりつつあった。
 
 目の前にあるはずの堂々とした金色の(もや)が、真白(ましろ)の世界に埋もれて(かす)みつつあるような気がした。


伯母(おば)さん…!! 俺は、これからどうしたら……!?」



『今更何を……おまえはやるべきことを…成すべき目標を…正しく見据(みす)えてるのだろう……。』


『ただ…最後に1つ…言うならば……おまえは…自分が課した宿命に…生涯(しょうがい)(とら)われる…必要はない……。』


『いつでも…降りていいんだ……私が……許してやるから……。』



 その瞬間、杖の先端の隕石が盛大に破裂し、粉々に砕け散った。


 同時にカリムの視界は再び真っ暗な闇へと引き戻されるように呑み込まれたが、遠退(とおの)く意識の中でルーシーの苦笑いがはっきりと反響していた。


伯母(おば)さん、か……存外、悪い気はしなかったね。』
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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